物流よもやま話 Blog

今冬も「ドカ雪に注意」らしい

カテゴリ: 経営

物流屋の端くれとして気象庁発表の長期予報は丁寧に読むようにしているが、最近では気象予報士の方々が個人で開設している動画チャンネルを併せ視ることが常になっている。
役所解説より平易で要点が明快なうえに、独自作成らしき図解がありがたい。予報には個人差があり、その解説にもそれぞれの個性や着眼の違いがあって面白く興味深い。

もちろん基調は全員共通なので「寒い暑い・降る降らぬ・吹く吹かぬ・多少強弱」の概ねは同じなのだが、期間や程度とその理由については「腕のみせどころ」であるらしい。
視聴する側にはそれが楽しくもあり、好みのわかれるところとなるようだ。

読者諸氏ご承知のとおり、今冬は今月まで高温少雨(地域差アリ)、来月には山陰から北陸と北日本(東北・北海道)の日本海側および山間部では、大雪の可能性大となっている。
線状降水帯の雪バージョンであるJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)が発生すれば、深刻な交通支障をはじめとする生活インフラ機能の不全を招くので、事前の対策準備が必要である。
主要高速や幹線道路の走行支障や封鎖は物流障害に直結するし、その余波で迂回経路においても二次災害的交通マヒが連鎖する、、、というのがこの数年来の傾向として記憶に新しい。

以下はあくまで統計的根拠なしで書いている、、、のは毎度のことゆえご承知おきを。
無償かつ詳細精密なリアルタイム表示の高機能ナビゲーションソフトの利用が一般化したことで、う回路や抜け道の情報がドライバー個々の経験知識の差を縮小させている――ゆえに災害時に限らず、平時でさえも渋滞や停滞をより苛烈にしている気がしてならない。

そして「そんな道をそんな車で走ったらアカン」という事例も増えているのではないかと感じている。車幅や重量、勾配や曲がりくねりのキツさ、除雪車の出動範囲か否か、抜けた先の道路情報の認識――などの複合情報を踏まえたうえでナビゲーションしてくれるソフトはまだない、、、いやあるかもしれぬが、一般化されていない。

「こういうときはあの道を避けて、遠回りしても○○線から○○市を抜けたほうが無難」

なんていう判断を瞬時にできるのはベテランドライバーかその脳内情報を学習したAI搭載のナビソフトぐらいのものだろうが、この数年の急激な気候変化は熟練者の経験による勘を狂わせる一因となっているのではないのだろうか。
たとえば「ここがこんな積雪になるなんて…」「なぜこの道がこんなに混むのだ」という「こんなはずではなかった」といった想定外の混乱に見舞われるベテランが増えているのでは?
と感じること多いのは私だけなのか。
目的地到達を合理的に判断してくれる道路情報の入手簡易化が、いくつかの条件次第で交通混乱を招く原因にもなりえる事実は矛盾に満ちていてやっかいだ。

いうまでもなく車両が止まると倉庫も止まる。
したがって今年も計画運休と庫内作業短縮もしくは休業とする物流拠点が多いだろう。
出先でトラブルに巻き込まれるよりも出発をずらす方が無難でコストロスが少なく済む。
さらには働きかた改革によって法令休憩取得や時間外労働制限による走行総時間の制限が、
「休憩減らして夜通し頑張れば、雪の前になんとか山間を抜けられる」
といったドライバーと運行管理者とのやり取り自体を厳禁としている。

なのでドライバーは時と場合によっては、
「渋滞区間手前のPA・SAやその他駐車スペースで待機」
「下し地で空荷の車と一緒に道路状況が回復するまで待機」
という正当な収入にならぬ時間を無為に過ごさざるを得なくなる。
「昨年の春から時間外労働制限で走れなくなって稼げなくなっているのだから、せめて天候や渋滞などによる不可抗力の待機や宿泊は必要経費と日当分の保証を」
という至極真っ当なドライバーたちの声に対して、会社側からの
「基本給+走行距離従量報酬という給与体系にさらなる割増報酬がかさむと薄利仕事が赤字になる。心情的には待機時間も賃金保証したいが、十分な額の支給は経営的に厳しい」

という労使双方から「そんな殺生な」という声が聴こえてくる排反課題。
しかしながら長年の難問がしっかり居残ったまま今年も冬を迎えようとしている。

総労働時間の上限厳密化による収入減少に加えて、気象変動による不可抗力な無報酬時間の増加のもたらすものは熟練者の離職。
その穴埋めは「安直採用&速成教育&実走経験不足」の三拍子そろった素人の隣としか言いようのないプロドライバーもどきを充てるほかない事業者。しかしながら採っても採っても人員不足は解消されない。なぜなら短期離職率が高いからで、それは当然の因果だろう。
廃業や倒産の主因はドライバー不足による運送品質の悪化と事故多発による契約解除。
個人的には「運び方にまつわるいくつかの要素を変える」以外に方策はないと言い続けてきたが、現場が変わる気配すらないのはなぜなのだろうか。

ちなみにワタクシも小声で「そんな殺生な」とブツブツ言っている最近。
新調するスタッドレスタイヤの価格高騰に思わずこぼれ出た愚痴なのだが、ドライバー諸氏の苦しみに比べたらしょーもないハナシである。
とはいえそろそろ買わねばなりませぬ。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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