先日とある事業所の庫内空調機の見積額を目にしたが、私の記憶にある単価の倍以上だった。しかも電気代の高止まりという悪条件を呑まねばならない。これでは導入に踏み切れない事業者が多いのも肯ける。そのうえに発注から着工まで相当待たされるようだ。
空調設備の有無は雇用維持や新規採用に多大な影響を及ぼすことは理解しているものの、
言うまでもなく現在進行形の関与先情報の具体は一切言葉にも文字にもしない。
よくある「実績一覧」とかいう営業ツールにも無縁なのは、勝手に自らに課している掟によるものなのだ。物流屋の腕前なんてちょっと遣り取りすればすぐに判るはずだし、事前に拡げた風呂敷は現場では役に立たないものだ。
挨拶と業務連絡以外は言葉を必要としない現場が理想である。
もちろん小休憩や昼食時の会話などは各々好きなようにすればよい。
事実どこの現場でも食堂や休憩できる多目的スペースでは会話の声や笑い声が絶えることなくワイワイガヤガヤしている。かといって笑い声や賑わいの絶えない職場が必ずしも“働きやすい”とは限らない。
「廉くて迅くて巧い」保管・荷役を維持するためにはアタリマエでは事が成らぬ――稼働時間外は庫内の通路まで荷を収め最大保管量を確保、積み付けの迅速化と段取り最優先を果たすために、リフトがフル稼働できるヤードで荷役作業をこなす。
安全確保や作業品質が気になる読者も多いかと思うが、今よりもはるかに荷役事故は少なかったし、作業品質は比較にならぬほど高かった。
名門やら老舗と謳われる事業者の倉庫には倉庫職人と呼ぶにふさわしい管理統括や作業責任者がいた。大規模倉庫なら荷主別や区画別ごとに担当者が定められており、それぞれが責任と誇りをもって自分の担当する区画を管理していた。
いうまでもなく庫内における各区画どうしの競争意識は高く、作業精度や作業効率はもとより、清掃や挨拶や備品管理に至るまで「うちの区画が一番」という自信と自負をもって日々業務に勤しんでいた。
倉庫屋風に説明すれば「おもいっきり保管勝ちなので、高額荷役単価・高額運賃と高額保管単価でないと合わんなぁ」となるわけだが、あくまで倉庫業を営んでいる事業者ならば、という前提条件でのハナシである。読者諸氏ご承知のとおり、普通の倉庫業なら請求における保管料比率が3割超えたらもうシンドイはずだ。
永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
ご相談・ご質問等ございましたら、
お気軽にお問い合わせください。