物流よもやま話 Blog

はたして「Amazonビックリ」なのか?

カテゴリ: 実態

つい先日アマゾンで買い物した際にトラブルとなった。
カスタマーサービスとの煩雑でもどかしいやり取りの末に事態は解決して、遅れること10日余りで当初の希望通りに買い物できたのだが、個人的には「へぇ~、アマゾンでもまだそんなことがあるのか」という顛末には怒りや憤慨よりも驚きの方が勝る結果となった。
と結ぶつもりが、そうとも言い切れない疑念が浮かび、微妙な後味のまま今に至っている。
読者諸氏のご参考になるかもしれぬので、概略を書いておく。

アマゾンのブラックフライデー・セール期間中に発注した商品の配送日が、必ずしも注文履歴画面の予定日どおりに完了しないことは毎年常態化している――少なくとも私個人の注文履歴ではそうなのだが、それがアマゾン由来なのかヤマト運輸由来なのかは不明である。
ひょっとしたら、地域が変わればどの配送業者にかかわらず、まったく遅延なく届いているのかもしれないので、悪しからず個人的なハナシという括りに限定しておく。
おそらく読者諸氏の中にも同じような経験をされた方はいらっしゃると思うし、解決までの時間や手間も長短多少いろいろで、それぞれに異なるのではないかと思う。

で、ワタクシについては今年も注文した品物が待てど暮らせど届かない状況に見舞われてしまった。今回の不配分は一件一行一個だったことも過去とは状況が異なっていた。
さらに今までと違うのは、私の注文履歴画面では注文日から10日経っても「出荷準備中」のままなのに、購入品の販売画面では翌日配送(プライム)となっているところだ。
最初からそんな矛盾が見て取れたなら、すぐにカスタマーサービス(以下CS)に連絡したのだが、画面が着日表示、つまりプライム配送表示を掲示しだしたのは、おそらくブラックフライデー・セール終了日から一週間程度後のことではないかと記憶している。
プライム配送表示となってから数日は悶々として過ごしたが、購入日からもはや11日になろうかという段で、戸惑いつつ同品をカートに入れてみた。「お急ぎ便・明日到着予定」のまま決済完了し、即座に配送ステータスが翌日配送予定に切り替わった。
その段で初めて「ん?おかしいぞ。当初の分は未配のまま、配送予定日表示も出ていないのに、後から購入する分は明日受け取れるのか?」という怪訝この上ない思いが湧いてきた。
それに続くCSとの一連のやり取りは以下のとおりである。

①購入から9‐10日目。1人目のCSとのやりとり(チャットと先方からのメールを要約)

ワタクシ:
「購入日から10日経っても発送されないのはなぜか?かたやで通常販売画面ではプライム会員は翌日配送となっているのは奇妙。理由が知りたい」
CS1人目:
「セール期間中に予想を超える大量注文があったので、在庫が払底し、さらには入荷が間に合わない。順次配送処理しているので、しばしお待ち願いたい」

②購入から10日目の私のメール

ワタクシ:
「今日になってもプライム配送は表示通りのままで、特段配送遅延の表記はない。一度キャンセルして再発注したら明日届くのではないのだろうか」
CS2人目:
「商品ページに記載されているお届け予定日は目安となっており、お住まいの地域や配送センターによって実際には表示されているお届け予定日とは異なります。原則的にはお先のご注文が優先されますので、、、中略、、、お知らせメールの送信までもうしばらくお待ちいただきますようお願い申し上げます」

③購入から11日目に同品を重複して発注。販売画面表示通りに翌日配送が確定した。
即座にCSと電話。CS3人目に顛末を説明したが、そのCSが対処できぬままに「担当部署」とやらに繋いで、25分ほど保留音が流れるまま待たされて、やっと電話に出てきた「担当者」という人の説明。

ワタクシ:
「商品が届かないことも困るが、アマゾン側に起因するトラブル対応で25分余り電話を待たせるのはいかがなものか。これではクレームの種類が感情論に傾いてしまう」(アマゾンルールでCSから顧客への電話発信は不可なのだ)
CS3人目から引き継いだ担当者殿:
「そんなにお待ちになりましたかぁ~、、、中略、、、実はお客様のご購入品は薬品扱いなので通常の倉庫ではなく、、、中略、、、当初予定されていた薬品類保管倉庫の在庫が、、、(話の途中で会話を引き取って、以下のとおり)」
ワタクシ:
「あぁそうか、一応医薬品だから薬事倉庫から出荷なのですね。だとしても販売画面上は在庫ありで引当可能なはずだから、未出荷のまま放置の理由にはならないと思うが」
担当者殿:
「通常品はご指摘のとおりですが、薬事品は拠点間の在庫連動が無いので、当初の倉庫で引き当った注残は、その倉庫に入荷があるまで未発送状態となります。現在の販売画面は在庫のある別倉庫に引き当て先を切り替えているので、翌日配送表示となっているのです」
ワタクシ:
「いやいや、アマゾンのシステムならそんなことは起こりえないはず、、、ん?、もしや薬事倉庫は割り当てられた受注データを拠点ごとに単独処理しているのですか?」
担当者殿:
「そのとおりです。したがって未出荷注残の在庫拠点付け替えができないのです」
ワタクシ:
「薬事対象品は在庫の一元管理ができていないなんて、、、アマゾンらしからぬ状況に驚いてしまう。では先ほど同品を再注文した品物は通常通り届くのですね」
担当者殿:
「はいそのとおりです。先注文分はこちらでキャンセルしたしますので、完了したらメールが配信されます。その他に何かご不明点はございますか?」
ワタクシ:
「ありませぬ」

担当者は一応謝罪していたが、やたらとハキハキ自信満々で「システムの都合なので不可抗力なのだぁ」を匂わせつつ、免罪符のように唱えていたのが印象的だった。「細かい説明なしに倉庫の事情が分かるお客様でよかったぁ~」と嬉々とした声で感謝されても困惑するしかないワタクシであった。(後日談だが、キャンセル完了メールは届かず、不配の先注文は履歴画面からいきなり消失した)

アマゾンのCSは素直に謝らないことが多いので、今回のやり取りにさほど驚きはない。
それよりも薬事倉庫はあらかじめ範囲指定された受注管理データと個別につながっているのみで、対象となる引当倉庫は人間様が指定しているというひと昔前のEC事業者のような現状には心底驚いた。「なんだかなぁ」とタメイキ吐きつつ、ふと新たなる疑念がわいてきた。

「薬事倉庫は〝薬剤師管理〟を厳格運用するため、受注情報と引当物が紐づくと同時に固定されてしまうので、データの付け替えによる引当倉庫の変更ができない」という法令上の規制があるのではないか――という運用上の制約を今まで考えたことすらなかったし、薬事倉庫の実経験が不足している自分自身のキャリアを顧みれば、知らぬことも無理ないのだ。
アマゾン固有の問題ではなく、法令上の規制が生み出したほころびなのだとしたら、規制緩和の必要性は大いに議論してもらいたいところだ。

なんて言うもっともらしいハナシをする前に、ややディスリ気味に書いたアマゾンの名誉のためにも、一部修正と補足をしておくべきかもしれない。
遅延連絡しない、「キャンセルして再注文すればすぐに入手可能」という善後策を知らせないもしくは適宜切り替え処置しない、といった不親切な一方通行サービスの弱点は×としか評せない。しかしながら薬事倉庫のLMS自体が通常とは別運用せざる得ない原因が法令にあるなら、アマゾン固有の問題ではなく、行政が動いて緩和措置を施すべきハナシでもある。

という大いに勉強になる経験であった、、、とそそくさと〆てしまうワタクシなのだ。
イヤハヤなんともよくわからん。もっと掘り下げて調べねばならん。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

最近の記事

アーカイブ

カテゴリ

お問い合わせ Contact

ご相談・ご質問等ございましたら、
お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせフォーム