物流よもやま話 Blog

俺もないけど心配すんな

カテゴリ: 信条

今まであえて触れないようにしてきたが、やはり一度は書いておきたい。
自身を奮い立たせる意も含んでの本稿だと察していただければ幸いだ。

パンデミック。視えない出口。消沈と閉塞感の蔓延。
世界中の人々が同時に見舞われる災いの到来は人生で初めての体験。
不透明な明日への不安や漂流状態の浮遊感が、会話を途切れさせ行動を委縮させる。
予防や護身、個人生活に必要なモノ以外に目が向かなくなるのは万人に共通。したがって嗜好品や行楽への出費は大きく落ち込んでいる。

消費が停滞すれば物流は止まる。
一部の衛生品と保存がきく加工食品以外の荷役は激減している。
いつも書いているが、「物流は消費の子」なのだから当然の因果だ。
今現在も挙げればきりがないほどのマイナスや後ろ向きの現象や傾向が並ぶ。
一企業、一業種、一国では解決できない未曽有の厄災に翻弄されながら、我々は明日への不安が波打つ暗闇の海を漂っている。

消費が鈍化し、製造が減じ、物流が停滞する。
物流会社は他業種同様に厳しい経営環境に置かれて、身を削るような日々をやり過ごす。
かかわる者たちは先行きの視えない現状を憂うが、さりとて個人の力ではどうにもできない厄災の拡がりに戸惑うばかりだ。
不届き者達が下品な買い占めや卑しい便乗を繰り返すからか、欠品の常態化や異常な価格高騰が店頭やECで横行する様はなさけなくはずかしい。

この種の天災も過去の激甚災害と同様に、慈悲や手加減なく人間の営みを破壊する。
悪魔の仕業か?と勘繰りたくなるウイルスの猛威。
しかしながら、それもまもなく鎮静化するだろう。
もうしばらくは万事動きを小さくし、質素倹約と自制を旨として暮らす。
それなら国民が等しく負担できるはずだ。

今までおさまらなかった疫病はなかったし、薬の開発もすぐに追いついてくる。
だからこそ「あの時だって」と振り返り、それから毅然と前を向くことが必要なのだと思う。
こういう場合は過去を振り返り、成功体験を妄信してよいと強弁する。
気持の問題は人の行動に大きな作用を及ぼす。

結局は「くっつかない」や「人ごみをさける」や「団体行動しない」などの原始的な所作しか対処の具体がないのだから、もはやジタバタしないことだ。
つまり「腹をくくる」しかない。
皆で「♪ そのうちなんとかなるだろう」と口ずさもうではないか。
ちなみに拙者は「だまって俺について来い」と大ボラを吹く太閤はんのような器量はないので、悪しからずご期待なきよう願う。
「♪ ぜにのないやつぁ俺んとこへこい 俺もないけど心配すんな」
と口ずさみながら本稿を書いている。
「心配するわっ!」とつっこまれそうだが、ないもんは仕方ないのだ。

仕事が減って時間がある各社・各拠点の方々はこんな時にしかできないことをせっせとこなして過ごせばよいのではないだろうか。
すでに始めていたり、やり終えてしまった事業所も数多いだろうが、一応書き出す。

倉庫なら、
・責任者が全作業を確認する「ものすごい」棚卸
・責任者が全作業を確認する「ものすごい」ロケメンテナンス
・現状を全部疑って、イチャモンつけるようにあら探しする業務フロー検証
・ピッキングかご・カートや台車の加工、検品・梱包などの作業台の仕様再考
・「ものすごく丁寧」なマテハンの手入れや使用状況確認
・「ものすごく丁寧」な床掃除と動線・区画表示のリニューアル(棚などは移動して行う)
・「ものすごく丁寧」なネステナーやサポートラックの拭き掃除
・「ものすごく丁寧」なヤードの清掃と除草
・「下屋取り合い」部の浸水状況点検(台風や暴風雨への備え※専門業者に依頼が無難)
・排水溝の清掃と簡易型土嚢などの準備点検
・劣化備品や事務用品の廃棄
・荷受場のブラシ洗浄もしくは高圧水洗(びっくりするぐらい綺麗になります)
・エアコンのフィルターやパソコンの掃除
・事務所のレイアウト再考
・日々の掃除道具の製作(気の利いた道具を自前工作)
・責任者もしくは管理者による従業員面談

などが挙げられるし、運輸系なら車両や車庫の通常保守をさらに踏み込んだり、普段やらないことまで「ものすごく丁寧」に行うのがよろしいかと思う。
(運輸車両のメンテナンスについては明るくないので詳細な記述ができませぬ)
会社によっては休業補償する人件費が重いところだが、売り上げ直結しないながらも、何らかの仕事を皆で分担してこなす行為は精神衛生上も非常によろしい。
かつ倉庫や運輸車庫の利点は、結構広いスペースで作業を行うので、たいがいは「淡交接触」で済むところだ。
やれ1mやら2mなどとケチなこと言わずとも、ドカッと10mぐらい空けての作業配置でも問題ないことは間々ある。
一心不乱に作業に没頭することは心身の健康維持に最善だ。

こんな時だからこそ、余計なことや普段できないことを。
そんな風に自分に言い聞かせるように書いている。

皆様の忍耐と不屈とご自愛を祈る。
厄災が去って、安寧の日々が戻ることを祈る。
老若男女が笑顔で過ごせる世の中を祈る。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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