物流よもやま話 Blog

エンドクレジット2021

カテゴリ: 本質

昨年最後の掲載はクリスマスだったが、今年は大晦日となった。
一年間を経た今日も、疫災収束の目途は立たず、マスクと人流抑制の欠かせぬ日々を強いられたまま世界中の人々が越年の時を迎えようとしている。
それゆえなのか、締めくくりというより暦に合わせての文言を並べているだけという感が強いのは、世間一般に通じる様のようだ。

昨年から引き続き、起伏少なく動きを小さくせざるを得なかった疫災二年目、、、という振り返りが相応ならば、自身も世間様並みだったと安堵に似た奇妙な感慨がわいてくる。
初夏の転居に伴い、個人生活の環境が多少変わったぐらいしか目立つ出来事のない一年だったと思うが、裏返せば平穏無事に近い暮らしが続けられたということだろう。
それこそが無病息災に恵まれていた一年の証なのだと実感している。

二週続いての強烈な寒波と記録的大雪に見舞われた近畿北部は、北陸につながる主要国道や高速道路の通行止めもあいまって、物流網が分断され混乱収拾に手間取った。
毎年多くの利器や仕組が発表されて、ガヤガヤと騒がしく防災や事前察知の進化を謳う。
しかし、等圧線の向きがやや斜めから縦になるだけで、多くの交通網はマヒ状態に陥るのは毎度のことだ。そしてやはり毎度異口同音にメディアが伝えるのは「無理せずに外出を控える」「はやめに避難する」など、大昔から全く変わりない。

AI隆盛だろうが省人自動化だろうが、大雪が降れば即座に都市機能は停止するし、その後に路面が凍結すれば転倒や滑転事故が多発する。電車も車も飛行機も動けなくなる。すなわち物流分断となるので、生鮮品をはじめとする生活物資が店頭から消えたり少なくなったりする。
猫も飛脚もポストも宅配どころか拠点間を結ぶ幹線輸送がままならなくなるので、ECが店舗機能を補完することも叶わなくなり、個人の生活に支障が出る。
表面的な装いや本質に寄生する付加価値が変化しているだけで、内実は大昔から現在まで数え切れぬほど繰り返されてきたことだ。そしてやはり毎度毎度、皆で大騒ぎする。
まるで初めて経験するかのように、あたかも未曽有の出来事であるかのように分析したり、憂いたりしている。
もはや漫才のボケとツッコミに似て、お約束感満載の報道には苦笑を通り越してしまう。
「サーカスで道化が演じる滑稽でもの悲しい寸劇に似ている」とやるせなく俯きたくなるのは私だけなのだろうか。

2021年の最終日に掲載するのだから、振り返りや感慨めいたハナシがよいのだろうが、今年は一向に「仕舞い」の感情が湧いてこないので、拙文の中身もこのようになっている。
暮れの慌ただしさや納歳の万感に乏しく、さらには明日からの新年に心躍るわけでもない――というのはあくまで私個人の内面でしかないと承知している。
しかしながら、明日以降の数日間に満面の笑みで「おめでとうございます」と声を張る気にはなれぬ、という御仁は多いのではないだろうか。
何をおいても、まずは疫災収束である。
V字回復など要らぬので、緩やかな原状回復に努める状態になってほしい。
少しづつでもよいから、確かな今日を実感でき、希望や実りの明日を想えるようにするのが施政者の責務であり、経済人の目指すべき方向だと思っている。

本年もお世話になりました。
昨年と同じ言葉が並びますが、これ以外に書きようが浮かびません。
拙文の読者諸氏、物流業務関与先の皆様、さまざまなやり取りのあった数多い人々。
すべての方々に心からお礼を申し上げます。
今年の私のエンドクレジットは今までで最も短いロールアップになると思います。
巡るすべてのお名前に深い感謝を念じつつ、本年を終えることは言うまでもありません。

大晦日までの刹那、穏やかなほほえみの時をお過ごしになりますように。
そして来る年は疫災が収束し、誰もに憂いと覆いのない暮らしが訪れますように。
陰ながら祈念しております。

永田利紀

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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