物流よもやま話 Blog

多様化するヒルヤスミとヒルメシ

カテゴリ: 経営

久々にヒルメシのハナシを書くのだが、今回はちょっと趣が異なっている。
それはヒルメシの前提条件となる昼休みの存在自体が見直され始めた、または見直したという動きが目立つようになってきたからだ。「やっと導入したか」という内心のつぶやきは、若き日に見聞きした欧米の労働拘束時間についての考え方への共感に起因している。

社会に出る前も出た後も、わが国の「休み」に関する横並び意識やひとたび決まった制度を改める際の難渋には大いに不満と否定的な感情を抱いてきた。もちろん日本固有ともいえる仕組や福利厚生が他国の羨望や高評価の対象となる事例も承知しつつも、総合的には劣っているというのが本音として胸中に存えてきた。
なので、ずいぶん時間差があったとはいえ、日本でも柔軟かつ合理的なヒルメシ・ヒルヤスミ対処が散見され始めたことは喜ばしい限りだと深くうなずいている次第なのだ。

まず「ヒルヤスミ無し」勤務の拡がりは今後も続きそうだ。
特に共働きの子育て世代にとっては好適となる事例が多い。拘束時間の最短化=可処分時間の増加、となるので、家庭の諸事に費やす時間がより多く確保できることになる、、、とばかりも言えず、実は単身者にも好評なのだとか。
具体的には朝10時出勤後、夕方16時まで連続勤務。休憩なしなので、通勤や着替え以外の拘束時間はすべて報酬対象となって賃金効率は最もよい。

次に「ヒルヤスミ2時間」勤務の増加。3時間という事例もある。
これは前出のヒルヤスミ無しと全く同じ効果を生み出しているようだ。つまり昼にある程度まとまった時間があれば、退勤後にこなしていた家事の大部分を済ますことができるので、時間効率としては従前の1時間ヒルヤスミよりも明らかに向上する。
さらには、全部ではないにしても社食などの利用や弁当類持参の必要はなくなる。なので経済的であるし、何よりも気楽だと聞く。

反して失うものは昼飯時のコミュニケーションなどを挙げる人もいる。
しかし、そのコミュニケーションがいつも善となるとは限らず、無用な人間関係のしがらみの生まれる場所ともなりかねないので、評価は分かれるところだと思う。
個人と集団の加重バランスについては素人ゆえに言及は避けるが、個人領域の確保と他者との交わりの加減は今後も社会問題として存在するだろう。
普通の物流現場のヒルヤスミやヒルメシのハナシの中でさえ、上記の社会問題の縮図がもれなく存在している。倉庫や配送センターの休憩所の相似形のままに拡大すれば、近隣社会になるはずだし、さらに引き延ばせば自治体となる。

ちなみに私のかかわってきた物流現場についていえば「スタッフの望むまま、したいように」というのが最多であった。もちろん専門家として一定の助言・提案や制度策定もかかわってきたことは事実だが、関与先の管理者諸氏たちは非常に柔軟に受け止めて、従業員の便宜優先を専らとしていた。
会社の労務規程から逸脱しない限りにおいて、現場運用の益=従業員の益、という持論に賛同いただいたことは幸甚以外の何ものでもない、、、と「私の履歴書」みたいなことを書いているが、実際にはどたばたと試行錯誤のすえにたどり着いた妥協と強行の化合物というのが実感なのだと独白しておく。綺麗ごとだらけの美談としてまとめたいのはやまやまだが、現場を知る読者諸氏には通じまい。

もっとヒルメシのハナシを書くつもりだったが、怒髪天を突く形相で「なんであの人だけあんな勤務形態を認めてるんですかっ!!」というパートさんの怒声が耳によみがえる…
ちょっと耳鳴りやめまいの気配が濃くなってきたのはよろしくないことが起こる前兆だ。こういう時は書くのを止めるのが最善策であるから、今回はここまで。
皆様、よい週末を。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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