物流よもやま話 Blog

物流改善の‘一の矢’は現場日報

カテゴリ: 経営

他業種同様に自社物流・営業倉庫や運送会社には「業務日報」の類があるはずだ。
立場によって書く側なのか読む側なのかは異なるかもしれない。取りまとめ、所見をつけてさらに上位へ報告するといった「読む・まとめる・書く」といった結構な事務仕事である――といった愚痴まじりのつぶやきなども中間管理職の日常場面のひとつだと聞く。

中間集計や上位報告の内容項目まで書き及ぶつもりはないが、現場日報については会社こそ違えど、内容的には似通っているのではないだろうか。
日報作成がグループウエアのワークフローに組み込まれており、終業前の定型作業として必須となっている事業体などが増加している。したがって、かつて多くの企業がそうであったように、「手書きで毎日記述し、上司に提出して退勤する」という場面は事務所や現場では目にすることが極めて稀になってしまった。

そもそもテレワークの常態化を維持する事業者ならば、各種報告は対面会話や電話報告ではなくすべて端末内で作成して完結させなければならない。
昨今の暗黙了解事項となっているらしいが、〝通話忌避〟の風潮が「必要最低限の電話・やむにやまれず電話・どうしようもないので電話」といった優先順位を生み出しているようだ。
WEB会議にしても、半身画像と発言時の音声以外は他の参加者に届かない仕掛けや切り替えが、一種の作法となっている。自宅環境でWEB会議などに参加する際には、背景のぼかしや覆い隠し、生活音の遮断を心がけるというのは理解できるが、ほどほどにしないと息苦しく肩が凝って仕方ないと思うのは私だけなのか。
………ちょっとハナシが逸れてしまったので、元に戻す。

現場日報の中身については、20世紀末からほぼ変わっていない。
なぜなら前世紀以来、やっていることの目次があまり変わっていないからだ。やっていることの目次とは、試験でいうところの設問であり、報告は問いに対する解答と同じだ。
問題が似たり寄ったりなので、誤答も正答も同じく似通ったものになる。

近年たくさんの技術革新や利器類が現場に投入されたことは事実だが、さりとて現場人の一日が大きく変わったかと問われれば、即答で「否」となるはずだ。もちろん多少の変遷は認められるにしても、本質や根本を覆すような変更や変革は無いに等しい。
「そんなはずはない」という反論への回答は毎度よろしく下記のとおりだ。

〝物流業務の起承転結の中で、ある部分だけを切り取った効率化や脱属人化や機械化は繚乱して賑やかだ。しかしながら一気通貫の改善や全体最適化にはほど遠いというのが実態〟

これが毎度の不肖ワタクシの意見であり、現場で目にしてきた事実である。
ゆえに一日の報告たる日報の中身も、各論には取捨変更があっても、総括欄での説明や所見内容としてはひと昔もふた昔も前からあまり変わっていないのだ。

変わっていないと言えば、たまってゆく日報や週報や月報を集計して定点で観測し、数値や現象の分析の後に次への施策を講じている、、、という正攻法を粛々と継続している物流部門は前世紀同様に今世紀になっても増加する気配はない。
なので「1+1=2」という簡素な式と解を「1+1-2-1+3-4+7-3=2」のようなヘンテコリンでダラダラ長いものにわざわざ作り変える現場は相変わらず減らない。

「なぜそんな式を?」という問いには「冗長で不効率なのはわかっているが、他部門との兼ね合いで不可抗力なのだ」という古式ゆかしい手あかのついた解答が吐き出される。
無論こうやって文字にすれば、誰もが「よろしくないですな」となる。

しかしながら、企業内である程度の立場を得た者が事業全体の流れに船を漕ぎ出せば、物流の正論ばかりが波風として身に降りかかるわけではない。
多くの事情やしがらみや力関係が大波小波、追い風向かい風となって自らの船に見舞う。時には魯も櫂もないに等しい状態で、波間を漂うこともあるだろう。
なので「わかっているが、すぐには根本的な解決などできないし、他部門を巻き込まないと現実味がない」という諦念が、手先と口先ばかりの報告書記述を生み出す。
それを不本意と感じる者は数多いるが、経営層に上訴してまで何とかしようという白装束のサムライはなかなか現れないのが現実だ。

ワタクシ的一の矢としては、現場日報を改変して、「現場時事報告」と「今日の一言」のふたつの書類にしたらどうかと提案している。
一の矢の集計から導いた傾向を読み解いて、狙うべき的を定める。二の矢で足らなければ三の矢まで射って、狙い定めた的を得る。
、、、という計画通りにゆくことなど滅多にないが、一の矢と二の矢を外さなければ、三の矢まで放たずとも急所をしとめることができる。

具体的にはそれぞれの事情や状況に応じて策を練ってほしい。
ナントカミクスと銘打つほどではないので、各社各様に仕込んでみてはいかがだろうか。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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