物流よもやま話 Blog

面接官募集の面接なら不合格

カテゴリ: 経営

なんでも管理職クラスの転職がちょっとしたブーム化しているのだとか。
興味深いのはその中身で、転職希望者の求める好待遇の意味合いが今までとは違うらしい。
望む第一は現状に比しての高給や高位でないのなら、はたして何を求めて職を変えるのか?
その仔細については、いろいろと考えさせられる点が多い。

私には転職や失業による求職者としての経験が無いに等しいので、その苦労や心情の動きを語る資格がない。しかしながら、応募してもらって面接時にあれこれとお話しする立場――つまり面接官としての場数なら多少はあると思う。
だからといって得手だとは限らない、、、というのが今回のハナシなのだ。

読者諸氏ご承知のとおり、物流企業の求人内容は非常に単純な区分だ。
まず現場とそれ以外に大別されるが、採用の重点は現場職に置かれることが過半である。
とりわけ3PLなどの営業倉庫なら間違いなく利は元にありの「元」の中身を決定するイロハのイとなるのが現場責任者、、、つまり倉庫拠点や運輸拠点の長の採用であることは業界人なら誰もが頷くところだろう。「物流屋は所長商売」という言葉はその本質を言い当てている。

あくまで業界内の一般論だが、営業職や事務職の募集は欠員や目覚しい業容拡大でもない限り寡少だ。中でも営業職は募集をかけても求める人材の応募に恵まれず経費倒れとなることが多いせいか、一般求人にはなじまないというのが決まり文句のようになっていた。
しかしながら物流企業の営業職は一定以上の場数をこなせば、倉庫や運送便の荷主獲得の面白みや奥深さもわかってくるし、地味で単純なイメージからはかけ離れて多彩だ。知恵と工夫次第では荷主企業とのやり取りが営業のだいご味として本懐となることも珍しくはない。それゆえに求職者が物流業界を選択肢に加えないことが多い現実をもどかしく残念に感じてきた。

営業職も現場職もやりがいという点では不足どころか大いに挑み甲斐があるはずだし、先様の問題点や苦しみを解消する一助となることも多いので、背負うものは大きいと実感できる。
久しく言い続けているが、物流業界は、職種を問わずやる気と熱意に自信がある者にとってはブルーオーシャンであるし、業界としても恒常的に人材に飢えている状態だ。特にEC興隆の昨今は、倉庫や運輸の業務内容も劇的に変容し続けているので、その環境適応できない企業は淘汰されてゆくこと明らかである。したがって物流各社は人材教育で間に合わない点は中途採用でまかなうということを常としている。
力ある者にとって、物流業界はその能力を発揮する場として非常に好適であるし、おそらくは従前の想像以上に面白くやりがいに満ちていると断言する。

“腕におぼえあり”ならば物流業界へ

 

というハナシをしたかったのではない。

私は面接する側にあって久しいのだが、実は相当前にその役割から撤退した。
理由は実に簡単で、採用面接と人物評価を行うに不適合者であるからだ。
商談なら一定以上の結果を残してきたはずだし、それは今現在に営業の最前線に戻ったとしてもそれなりの自信はある。
しかし、商談ではなく世間話やご機嫌伺の面談でもなく、採用面接となったとたんにことごとく間違える。しかも最終判断・決定の段階で思いっきり間違える。単独で面接などしないようにしてきた、、、させてもらえなかったので、大きな事故や応募者の方々と自社のマッチングミスといった最悪の事態は免れてきたのだが、それにしても周囲の役員や人事担当者からは呆れられることが多い。
何をもって不適合と思うかと問われれば、回答は「ほぼ全員を採用してしまう」からに他ならない。それだけでなく「書類選考と一次面接をやらせてほしい」と駄々をこね、実際に何度かはその役を務めもした。そして混乱や予定外の二次面接候補者が大量に発生し、中には「一次面接段階でほぼ内定」などという申し送りが多発したり。
その発想が幼稚極まりないらしく、「一緒にやればなんとかなるよ」「面接が苦手なだけで、きっといくつも個性あふれる魅力があるはず」などと思いを巡らせ、「まずは入社してもらって、実際に働いてもらおうよ」と一見前向き風ながらも、その実は雑で乱暴なことしか言わないのだとか。
で、採用業務から退場させられてしまったというのが赤裸々な事実なのである。
不本意だが圧倒的多数の結論なのでいたしかたない。
ちなみに無理を通して、結果として残念な結果となった事例はいくつもあるし、懲りることなく繰り返しもした。自分自身で「私は面接官には不適合」と納得するまでには何年もかかったのだが、その実ほっとしたことも本音だった。
世に「面接官資格」のような試験や面接があるとすれば、間違いなく不合格の連続となるだろうし、受験資格の要件欠格となるかもしれない。
人生をかけて選んだ求人に応募する方々に私のような者が面談することは、結果的にはよろしくないのだと納得している。
そう割り切れるまでには随分と周りに迷惑をかけただろうし、自身も傷ついて落ち込んで自己嫌悪にさいなまれてきたのだった。

コロナ禍による社会情勢と企業活動の激変は、さまざまな変化や改廃を生じさせた。
なかでも最たるものは働きかたの根本的な変革であり、すなわち生き方の再考にもつながっている。そのような世情にあって、多種多彩な人生観を隠そうとしない個性豊かな人々を前にすれば、間違いなく「一緒に頑張りましょう」といい続けるに違いない。

ずいぶん前に撤退しておいて正解。
そんなことを想う梅雨末期の早朝なのだ。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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