物流よもやま話 Blog

6時間労働のススメ

カテゴリ: 経営

毎度の持論で恐縮だが、日本の労働スタイルは米国ではなく欧州諸国を参考にするべきだと思っている。なかでも蘭独については、物流技術先進国の地位に在って久しく、同時に働きかたの創意工夫もまた先進的だ。労使間の程よい妥協が絶妙な全体最適化の前提条件となっているだけでなく、労働価値を業務以外の生活時間と連動させて測定している点が秀逸である。
個々の権利や義務を整合させる一定の配分則によって皆が報酬を得やすい環境を行政が設計し、企業が運用している。ワークシェアリングの持続性を堅持するために突出や不揃いが抑制されるのだが、かといって社会主義的という後味は残らない。なぜなら行政主導であっても、その運用は企業が各社の雇用実需や経営実状に照らして行っているので、雇用が保証されたり割り振られるわけではないからだ。

IT技術で激しく遅れてしまったことは残念だが、工業・化学分野での製造技術や製造品質では世界最高水準を維持しているわが国。なのにその源となる労働者保護や環境提供については先進国の中で最下層に属している。製造業以上にわが物流業界はその最たるところだ。

昨今騒がしい2024年問題にしても長年の劣悪な労働環境が招いた自業自得でしかないことなど関与者全員がわかっているはず。なのにそれを降って湧いたかのように騒ぎ立て、あげくの果てには危機と呼んで不可避の天災のごとく論じる風潮には違和感と抵抗を禁じえない。労務整備して雇用条件を健全化すれば、一定の時差は生じるにしても、中長距離便のドライバー数は間に合うようになる。議論はほどほどにしてさっさと実行にとりかかればよいのだ。

ついでに書いておくが、上述の「一定の時差」の間に輸送破綻するのかといえば、まったく問題はない。荷主と受領者が発注から納品までの時間を今よりも猶予することで合意すれば、問題の大半は解消してしまう。ダメ押しで同業・異業を問わず方面別の「共同配送」「混載」を往復便で積極化すれば、現状の70%ぐらいの運行数で間に合いそうだと予測している。
さらに加えれば、今後の物流業務全般で現状よりも時間猶予を認める方向に動けば人手不足の相当部分が解決できる。省人化≒猶予時間延長、と考えて支障ないので、荷主各社は試算してみてはいかがだろうか。仮想ではなく既存の実運用成果から書いているので、猜疑や懸念は不要であることも付記しておく。

―――ハナシは逸れるが、むしろ貨物輸送よりも旅客部門(主としてタクシーやバス)のドライバー不足のほうがはるかに重篤化していると思えてしかたない。おそらく雇用条件を改善しても好転するのはかなり難しいような気がする。苦肉の策ともいえる外国人ドライバーの就業枠を設ける案は確かに即効性が見込めるだろうが、根本的な改善や問題解消にはならない。
対処となる私案を過去に書いているし、他所に寄稿したモノもあるが、もう一度整理整頓するつもりで近々に書いてみたいと思っている。

ハナシを掲題の本筋に戻す。
ワークシェアや労働時間短縮による労働者の就業率維持策などは、ドイツやオランダを筆頭とする西欧数か国では、すでに30年以上前から実施されていた。
ただし、成功実績ばかりとはいえず、苦心の末に生み出された施策を上回る不況と失業率の高止まりに官民が苦しむ現実も多いと聞く。
構造的不況や絶対労働量の減少による雇用不足をワークシェアや時間短縮で解消することは不可能なので、お手本ながらも楽園のような状況ではないことも付記しておく。

拙著でもたびたび登場する「6時間労働は労使双方に好都合」というハナシにしても、若き日に実際に赴いて自分自身の目と耳で見聞きした実体験から発しているものだ。
しかも私が見学したドイツの工場や物流現場は日本企業の現地法人が運営する施設であり、拠点責任者は日本から赴任した人物だった。なのにその企業の本社や国内拠点はドイツと同じ労務体系を採用しないままだと聞かされて、首を傾げたのがついこの間のことのよう、、、というオッサンの懐古は迷惑なのでここで止めておく。

老若男女の別なく、6時間労働を好ましいと思う人は多いはずだ。
具体的には二部制、三部制を運用することで、必要労働量を消化できる必要労働時間が確保できるし、労使ともに最高の労働効率が得られる。ちなみにここでいう「最高」とは合理性や数値上を意味しているので、心理的情緒的満足や集団意識などの側面から観測した要素は含んでいない。

たとえばとある物流倉庫では閑散期月を除く月火金の三曜日については原則二部制で業務を回している。繁忙期の年末や年度末、セール期直前については三部制を運用。
二部制は【08:00-14:00】【11:00-17:00】
三部制は【07:00-13:00】【10:00-16:00】【13:00-19:00】
閑散期は【09:00-18:00】の間でコアタイムは11:00-15:00、原則6時間通し勤務。
という区分である。

土日祝祭日と年休取得奨励日を含んだ季節休暇を必達消化するために、一日を縦長に使うことが不可避となっている。
経験上ご存じの方も多いはずだが、稼働曜日をさわらず交代休を組合せる捌きかたよりも、拠点自体を「動かす」「動かさない」の二択にしたほうが、光熱費削減に有効だし、勤務ローテーションの調整が単純化できる。つまり休業日の確保維持を稼働日の稼働時間帯拡張で補うようにしたというわけだ。その結果、光熱費は削減でき、人件費は抑制できた。
具体的な効果推移の一部でしかないが、総業務量と業務時間の予実管理を移動平均化して観測した結果、業務消化効率と総労働時間の歩留まり指数(大きい方が優)は上がり、実施から約15か月経過時点での12か月移動平均が、6か月の移動平均を突き抜ける結果を得た。
つまり完全な労働効率上昇局面となった。

一概に言えないが、休憩なしの6時間通し業務は拘束時間の報酬対象率が最大となるので、労使ともに終始のメリハリ意識が副産される。つまりきっちり始まりきっちり終わることの徹底が自然となされるということだ。
業務前後の世間話などをムダで無用と評しているのではない。それはそれで無用の用として有用の用と表裏一体であることは承知している。現場は人間が支えるものなのだから、人由来のさまざまな事象を全部呑み込んで運営にあたらねばならない――という管理者心得は絶対真理であると信じている。
ただ、労務規程や現場運用の物理的な改変は適宜随時に行わねばならぬこともまた真なりだ。怠れば時代の流れから外れたり、呑み込まれて溺れたりする。人が減り、働き手はより少なくなるこの国では、機械や器具に依存する前に、現有戦力でいかに戦うかを突き詰め続ける日々の努力を欠いてはならない。

そんなことはあたりまえだ、と皆が言う。
しかしあたりまえなことをあたりまえでなないほどやっていますか?
という問いかけを、前回同様に書き足す。

机での試算と設計が済んだら、即座に現場で実施。
6時間通しという単純な制度を突き詰めると、意外な副産物が付いてくる。
ここから先は各自が体感するべきハナシだと思う。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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