物流よもやま話 Blog

コスト転嫁100%だとしても

カテゴリ: 予測

トランプ台風とでも言いたくなる乱行迷走の様相を取り上げるメディアは多いが、その結果としてわが業界にはいかなる影響が及ぶのかが未だはっきりしない。
結局のところ「国内消費への打撃はどれほどなのか」が測定しにくいゆえに、消費の子である物流への波及についても判然としないままなのだと思う。

トランプ台風以前からコストプッシュ型の諸物価上昇は基調化していたが、あちこちで異口同音に唱えられている「物価と所得と消費の好循環」とかいう連鎖を実感している働き手の数は極めて少ないような気がする、、、のは私だけなのかなぁ。

なんていう首傾げ気味な最近なのだが、そもそも実コストの増加分を100%顧客転嫁できたとしても、手元に残る利益は「以前のまま」となるはずだから、好循環のサイクルとやらに合流できないのでは?、、、と傾げた首が折れそうになっているのも私だけなのかなぁ。

さらには100%転嫁ならば、その分程度の最終価格上昇となるのが理屈というものだろう、、、と思う次第だが、物価上昇幅はそれ以上ではないかと感じるのも私だけなのかなぁ。

「いわゆる便乗値上げ」が少なからず行われているのではないか――だって3月期の決算速報はなかなかの増益になっている事業者がけっこうな数あるし、そのなかには物流会社もたくさん含まれているぞ。「転嫁率150%、、いやいや思い切って200%ぐらいの勢いでやっちまおうぜ。今なら誰からも怒られないはずだ。千載一遇の好機を逃す手はない」
とかなんとか社内会議でやってそうな気配が濃く漂うし、うさん臭さも強まるばかりなのだ。
、、、という夢にうなされた昨夜。寝汗と寝言で目覚めたのだった。

コスト上昇分をみんなで過不足なく完全転嫁しても景気は良くならない。
なぜなら利益が増えないからだ。
しかも転嫁できるのはごくごく限られた企業でしかなく、大多数の中小零細は転嫁率100%どころか、上昇コストの相当分を吸収してヒィヒィあえいでいる。
毎度のことながら「うちなんかいくらでも替えが利く」と自虐的評価しかできない事業者たちは「値上げするのなら他をあたります」と見切られるのが怖くて怖くて仕方ない。
値上拒否や値引強要は下請法などにひっかかるが、取引先変更は一般的な商行為であるから御上も手の施しようがない。なので、袋小路で天を仰ぐような経営者の数は増えるばかり。

まるでもうひとつ「ニッポン」があるかの如く、物価と一部大企業の人件費と新卒給与と都市部のマンション価格だけが上昇してゆくが、大多数の労働者可処分所得は良くて横ばいか漸減――利益も横ばいか漸減基調のままだからに他ならず、企業マインドが「先が読めない時は内部留保強化」に強く傾くのは経営の常道とする国内大手・中堅の内実に変化ナシ、、、
と感じているのは私だけなのかなぁ。

こういう状況下で物流部門ができることは「普段どおり」のルーティンをひたすらに突き詰めてゆくしかない。コロナ禍を経ての今に至るまで「普段」の中身を徹底的にそぎ落として効率化を合理化に結び付けてこなかった現場は遅きに過ぎていると酷評されてもいたし方ない。
顧客満足の仕上げであり、主たるコストセンターのひとつである物流機能が合理化の追求を今になって始めるなど論外、は私が小言を吐くまでもないことだ。
が、「モウダメダ」とかなんとかほざいている元気と暇があるのなら、遅ればせのスットコドッコイながらも現場改善を必死のパッチでひたむきにやってくだされ。

大型連休で少しリフレッシュした方々も多いと思う。
「また今日から忍耐と苦悶の再開か」と感じて止まぬ心情は痛いほどわかるつもりだが、今後の国内物流は現状がアタリマエの姿だと想定しておくべきだと考えている。
今の経済環境で利益確保できぬ事業体に未来はない、というつもりで腹をくくって現場を回していただきたい、と念仏のように唱え続けてきたが、懲りることなく繰り返す。

わが国の国内事情は今後もせいぜいこんなもん、、、が実態だろう。
ジタバタせず、堅実に遣り繰って何とかするしかないのだと思っている。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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