物流よもやま話 Blog

ヒトにやさしい職場?

カテゴリ: 経営

人出不足という言葉は、食傷気味を通り越していまや天気や景気のハナシと同じ――とりあえず口にする枕詞や慣用句化しつつあるな、と感じている。
幸いなことに私の関与先では求人広告経由での外部採用がタイヘン堅調。さらに自社の定年者や関連組織からの再雇用によって今のところは必要十分な労働力確保がなされている。
私の立場としてはメデタイの一言に尽きる。

毎度の持論で恐縮だが、挨拶と業務連絡以外は言葉を必要としない現場が理想である。
もちろん小休憩や昼食時の会話などは各々好きなようにすればよい。
事実どこの現場でも食堂や休憩できる多目的スペースでは会話の声や笑い声が絶えることなくワイワイガヤガヤしている。かといって笑い声や賑わいの絶えない職場が必ずしも“働きやすい”とは限らない。歓談や世間話を生み出す人間関係のシガラミこそが不幸で無用な退職や排斥行動の元凶となることも少なくない。

「手短な挨拶と業務連絡以外は黙々と働きなさい。そして終業と同時に職場から立ち去りなさい。そのあとは自分自身の可処分時間なのだから好きなようにお遣いなさい」
といい続けてきた。
君子ではなくとも淡交を是とすることは誰にでもできる。
「あのひとは愛想の無い人だ」
「あのひとは人づきあいを嫌う」
のような類の陰口など無視していればよい。
「あのひとはモノの始末が悪い」
「あのひとはうわさ話が大好き」
「あのひとは他人のことが気になって仕方ない」
などと評されるよりもはるかにマシだし、何よりも職場を支える一員としての点数は前者の方がはるかに高くなるはずだ。そのような考課となっていないなら、現場管理者の資質が問われるに違いないし、私が知る限りエライお方の誰に問うても「そのとおり」と返ってくる。

、、、、、そうは言っても現場は口八丁手八丁のクセモノ揃い。ある程度は“現場なり”に任せておかねばギスギスしてしまう、、、という本音が聴こえぬわけではない。
で、毎度の手前味噌美味いでしょう展開へと続くわけですな、これがまた。

かねてよりのワタクシ的推しである“6時間通し労働”の選択増加ならば、
「職場滞在時間(拘束時間)の最少化」
「休憩場所や社食の仕様や規模の改変」
「二部制・三部制導入には最適」
が叶うので、今後は労使ともに導入をいっそう前向きに考えてほしい。
まだまだ少数派なのは否めぬが、導入現場は増え続けているし、選択肢として好ましいと感じる働き手の数も潜在的には相当多いはずと踏んでいる。
分業の実施と手待ちや切り替えのロスが発生しにくい「業務消化量の個人別見定め」を適用するにあたり、6時間の通し勤務は好適であることも付け加えておく。

扶養控除外も社会保険加入適用も対象者の幅は拡がる一方なのは明白なのだから、労働者側はさまざまなパターンの働きかたを考えておく必要がある。
WEBには便利なシミュレーション表や考察記事がたくさん上がっているので、自分に必要な情報を積極的に入手して検討しておくべきである。
最重要点は「わが家の最大可処分所得と可処分時間の最適バランスはどの働きかたなのか」であるし、その際注意べきは「年金受給」の開始前と受給後の切り替えである。

もちろん「切り替えず行けるところまで」というのも選択肢としてあり得るはずなので、まずは各人が試算してみてはいかがだろうか。管理者諸氏は現場従業員向けに内部セミナーなどを開催することをお勧めする。おそらくきっと大盛況で大好評となるはずだし、今後の働きかたに応じて雇用維持を考えている職場には今までと別意の信頼が寄せられるはずだ。
読者諸氏の事業所が「安心して齢をとれる職場」であってほしいと願う次第だ。

従業員本人及び家族の生活設計に具体的で明快に寄与する制度や体制が整っている。
それこそが「ヒトにやさしい職場」であり、雰囲気などは二の次でよい。誤解なきよう補足するが、会社が任じている管理者として最重要事項は「業務レベル向上をなすために、従業員の労務健全化と所得維持もしくは加増」であることは明白だ。
なので専ら人心を得るために苦心したり、和気あいあいや笑顔の絶えぬ職場を理想とするなどは職責の優先順位を誤っていると評されてもいたしかたない。
会社は業務成果と労務順法と報酬以外には関与しない。
というのが長く言い続けてきた私の持論であることは今さら念押しするまでもないのだが。

「労働の対価として報酬を得る」
「報酬の対価として労働を得る」
これが労使の利益排反とならぬようにやりくりすることがエライお方の責務。
その責を果たしていただくために、黒子や二人羽織や縁の下から、、、という私であります。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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