物流よもやま話 Blog

アソビとヨブンとムダと

カテゴリ: 本質

久々に「えっ!」と声に出して驚いた先週末。さらにはもはや10月になっていることにはたと気付き、二度目の「えっ!」を吐き出したのだった。
今年も言うが「一年のあがり三か月は瞬きするように過ぎてゆくので油断大敵。なーんもしてないのにもう大晦日」と毎年唸るのは私だけなのだろうか。

幸か不幸か(、、、たぶん不幸)師走酷忙や運送難民はもはや昔話になってしまった、、、という倉庫や運送は多い。年始のご祝儀初荷などは死語となっているかもしれない。
盆暮や年始の挨拶も同じく廃れた。
「年始挨拶にわざわざ出向く必要があるのですか?」と真顔で問われたら、「必要などないよ」と答えるようにしている。「ただし、、、」と継ぐか否かはその場と相手次第である。

虚礼廃止や不合理排除には大いに賛成――といつもほざいていた若かりし頃には気付きも考えもしなかった「無駄や余分の効用」を今さらながらに思い浮かべる機会が増えた。
関与先でもその類の話題がたまに出るが、企業の幹部層も私も、
「無駄や余分に費やすお金が回りまわって数多の人々を支えていた」
ことを実感する年代になったのだろう、、、とこのまま調子に乗って「ハンドルのアソビ」や「アソビゴコロ」などの説教とも自慢ともつかぬジジイウンチクやアリガタメイワクハナシをする気はないのでご安心ください。

しかしながら物流現場の実態や実感としては昔の方が無駄や余分が少なかった。
おそらくきっと共感していただけるベテランの方々は多いと察するが、手作業や手書帳票で迅速かつ正確かつ潔癖な現場運営を行い、限られた床面積と天井高の保管スペースに満床以上の荷を預かるためには、合理ではなく無理が常在していた。もちろん無理を分解して切りつめた合理で組み立て直して“道理”に変えるなければ「仕事になってない」と誹りを受けた。

つまり綿密で精度高い手順や作業効率が絶対条件であり、必須項目を欠いたり半端にとどめたその先には、誤出荷や在庫差異や予定未消化の常態化という破綻が待ち受けている。
手先のミスなら「誤」で済むが、段取手順の間違いなら「滅」への歩みとなることを蔵人たちは知っていた。なので「答えの正誤ではなく式の構成に重きを置く」のが玄人の最低条件とされたし、それは現在でも変わらぬ「ほんとうのこと」である。

業務フロー理解→作業分解→手順構築→運用→不備や改善点の特定→作業再分解→手順再構築

の繰り返しによって研ぎ上がってゆく現場の大太刀たる作業手順は、極限まで切りつめて簡素ながらも、イレギュラーや順序変更にも即応可能な仕組でなければならない。
ただし切れる刀は一朝一夕に完成しない。設計者には多数の知識と知恵の抽斗、それを活用する場面の想像力、予想や期待を裏切られた際の善後策や補完措置の予備が求められる。つまり採用した案の陰には山ほどの余分や無駄となったあれこれがあるということだ。
削ぎ落し、研ぎ澄まされた仕事の背後には、たくさんの無駄や余分が積み上がっている。けれども陽の目をみなかった無駄や余分が役立つ日が来るかもしれぬし、そのためにどれが有益でどれがそうでないのかを判別できぬまま学び調べ解する下準備を続けるのだと思う。
試験勉強などはその典型だから、置き換えてみればわかりいいかもしれない。

そういえば高校生の頃、とある通信教育の会員だった。
勉強などマッタクせぬくせに、みんながやっているので右に倣えで始めたのだった。
本人としては10日ごとに難問ばかり送られてくる課題には初めから挑む気になれず、適当に埋めた解答用紙の下にある空白のコメント欄に小咄や洒落噺を書くのが楽しみだった。

もちろんだが、成績優秀者ランキングなどにはぜんぜん縁がない、、、どころか添削だらけで夕焼け空のようになった解答用紙が返送されてくるのが常だった。ぜんぜん勉強せずに解答するのだから当然の因果であるし、それは勉学にとどまらずクラブ活動についても同じだった。練習もせず試合で一発勝負の毎度なのだから、たいした結果が出るはずもない。

ただ、問題用紙や添削済み解答用紙に同封される旬報という名の冊子にある「コメント欄より」のコーナーに自分の書いたものが掲載されるのが大いなる楽しみだった。
そういう余白や枠外にある付録に意識が向くのは今も変わらずだが、似たような御仁も世にはいらっしゃるはず、と勝手に決めつけている、、、もっとも「本筋に向き合わず、現実から逃げていただけなのでは?」というご指摘には黙したまま肯くのみであります。

ああいうコメント欄は、難しい問題を解いた人たちがホッと一息ついて、リラックスしつつエピソードトークなどを記す場所である。
なのに「本編ほったらかして枠外に全精力をかけてどうするのじゃ」と今では痛感するが、もはや後の祭りである。(後の祭りや時すでに遅し、は得意である)
ちなみに成績優秀者ランキング常連の幾人かは私の旬報コメントのファン、、、と添削者の方が赤ペンで記してくださったことがあり、添削者の中にも愛読者がいるようだった。
解答の点数では補欠にすら入らぬ出来の悪さながら、一軍の錚々たるメンバーやコーチ陣たる添削者に楽しんでもらっていたのだから、今の立場と似たような感じである。

競争心や向上心や名誉欲の欠落が生来の性質だとすれば因果応報ではなく因果具時といえる。つまり物流業務に似ているので生業は天職、、、というコジツケが使えるのだ。
などと書きながら、
「で、ガソリン税は廃止するのか?廃止されたら標準運賃なる指数を下げるのか?あれこれハナシは出ているが、結局のところ全体収支は楽になるのか?」
などの話題のほうが良かったのではないかなぁ。
と今思いついたが、まさに後の祭りである。

あっ!そういえば遅ればせながら大阪・関西万博に行ってきたのだが、それもまた後日。
ここまで書いてしまってから気付いても、時すでに遅しでありんす。
毎度スットコドッコイで申し訳ございませぬ。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

最近の記事

アーカイブ

カテゴリ

お問い合わせ Contact

ご相談・ご質問等ございましたら、
お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせフォーム