物流よもやま話 Blog

まだまだ増える冷凍品物流

カテゴリ: 予測

寒気本格化なのに冷凍のハナシ。
と思いながら書いているが、実は今頃からが物量増加するのが各種冷凍品である。

たとえば「おせちセット」や「クリスマスケーキ」などは冷凍品が主流となっている典型的な品目で、通販専業、コンビニ、スーパーマーケット、デパートなどが競い合う形で年々市場拡大している。この時期なると各媒体で広告頻度が急増するので、目にする機会が多くなる。

「わが家はクリスマスケーキもおせちも冷凍品(解凍品)を通販で買います」

という世帯がどれほどの比率となっているのかまでは調べていないが、いずれにしても圧倒的多数派になるのは時間のモンダイだろうと感じている。
こういうハナシにいまだ実感が持てない方々がいるかもしれないが、もはや生活の中で冷食の存在はなくてはならぬもの化して久しく、今後もその傾向は強まると思う。

冷凍食品大手の方によれば、野菜の種類によっては生よりも冷凍のほうが美味で品質も優れていることが数多くあり、その典型は「えだまめ」なのだとか。
豊作時の高品質・低価格相場の際には大量買付けし、選別・殺菌・洗浄の後、それを大型冷凍装置で一気に冷凍することで鮮度と栄養価を「とれたてのまま」保存する。
なので「やすくておいしい」品が家庭の冷凍庫にストックでき、しかも分割使用可能となる。これは生鮮品では難しく、一定価格で一定品質を維持することは冷凍品ならではの利点。

のようなハナシに始まり、各種総菜からワンプレート冷食に至るまで、実に多種多彩な品が冷食各社から発売されている。スーパーマーケットの冷凍コーナーをご覧になれば瞭然である。

で、必要不可欠な対応機能として物流と販売の現場が思い浮かぶわけだが、いずれも冷食メーカーと消費者の双方に後れをとってるのが実情だと感じている。
つまり需要と供給の中間介在者たる物流機能と販売機能が旺盛で急速な市場拡大についていけていないようなのだ。販売現場の実態実情については門外漢ゆえ記述しないが、物流機能としては下記のとおりではないかと思う。

ひとつはメーカーの冷凍倉庫から流通倉庫への運送機能容量の慢性的臨界。
さらにはECを含む流通事業者の冷凍冷蔵倉庫の慢性的不足。
そして通販での個配便の冷凍車の不足。
加えて「冷凍冷蔵品は置き配不可」が生み出す「冷食受領難民」の増加。

かように私のような冷食素人が書出せるだけでも結構な課題が列挙できてしまう。
読者諸氏ご承知のとおり、運送車両にしても保管倉庫にしても冷凍冷蔵設備には高額な投資が必要である。さらには荷役のデジタル化がイマイチ進まない低温・冷凍業界事情も相まって、同業種内での新規参入に限らず、異業種からの市場参加も振るわないまま年月が過ぎてゆく――つまり現状のプレイヤーたちによる寡占状態のまま市場拡大し、中身の改新や業務価格相場の推移に至るまで、おなじみの面々の意志決定と事業計画に委ねられている。

それは資本力だけでは説明できない諸事が絡み合ってややこしく、そのいちいちをここで述べても得るものはない。個人的には上流からではなく、商流の最終場面で全コストを負担する消費者の声を拡声器的に大きく取り上げるメディア記事やアンケート集計→公表活動など、「知らせることの拡がり」こそが、行政を動かし新規参入者への後押しになるはずだと思う。

国内各地で冷凍食品専門のスーパーマーケットが続々と誕生しつつあるようだし、最大手から中堅の流通事業者もこの数年で参入を始めている。
家電メーカー各社は従来の冷凍冷蔵庫の総容量に占める冷凍庫比率を引き上げる向きで開発を進め、さらには省スペース型の冷凍専用庫も多数販売されて活況と聞く。

ちなみに大手家電販売店では、かつてよりもはるかに容量と価格がアップしている冷凍冷蔵庫が居並び、そのわきには比較的安価な縦に細長い冷凍庫が陳列されている。
何を隠そうわが家でも「もうちょっと冷凍庫が大きいとよいな」と感じることが多い。
以前に増して冷凍品の収納量が増えているからに相違ないわけだが、おそらくきっと読者諸氏のご家庭でも似たような傾向ではないかと勝手に想像している。

数年前から倉庫業界では「危険物」「冷凍冷蔵」というふたつのジャンルが有望市場として取り上げれることが増えた。いずれも専門知識と行政対応と高額資金が必要とされるので、容易に参入できるものではないが、着実に既存事業者以外の新顔が増えている。

物価高はつらいが、その上に生鮮品の価格と品質が乱高下するのは泣きっ面に蜂だ。
冷凍食品の製造・物流・販売が三位一体となって整い、生活者に有益な製品提供が安定的に叶うようになればよいと願う。
もちろん自分自身のためにも、であります。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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