物流よもやま話 Blog

通勤時間も買わせていただきます

カテゴリ: 予測

昨日近畿のあちらこちらで初雪。
私の行動範囲も思いっきり冷え込んでいて、最低気温が氷点下というところもチラホラ出始めている。こうなると道路の凍結積雪情報が聞こえてくるのも時間のモンダイであります。
運送会社とドライバー諸氏に無理ない行程と段取り手配してもらうためにも、時間とコストについては荷主側の理解と許容をお願いしたい。

というハナシが書きたいわけではなかった。
「人手不足もここまできたか、、、」と唖然茫然してしまうハナシが耳に入ってくるようになったのは昨年の今頃からだったが、この数か月はさらにその数が増えたように思う。

立地の悪い倉庫の人員確保が難しくなるばかりの昨今、最寄り駅までの無料送迎バスだけでなく、交通費全額支給・上限の引き上げ、社食無料、、、そして自宅から帰宅までの「総拘束時間に時給発生」なんていうものすごい条件提示をしている物流倉庫があるとかないとか。

「拘束時間を報酬対象にする」はコロナ禍の頃に一般化していた在宅勤務の非正規社員向けの報酬形態だったが、どっかの人材派遣や求人情報誌がそれを転用して、採用難民化している雇用側の足下を見たような提案をしている、、、らしい。
ちなみに「通勤時間=拘束時間=労働時間」なのか?
というモンダイの是非はここでは掘り下げないのであしからずご了解を。

個人的には「そこまでやるのはちょっとなぁ」という否定まじりの当惑が瞬時に浮かび、その後に「背に腹は代えられぬということなのか」とも思い直して寒々しくなってみたり。
ご承知のとおり倉庫業務は床と人でできている。そのいずれかを欠いても稼働できない。
「わが社は自動化や機械化の完成で人依存していないので、人手不足には無縁」
などと余裕かませる倉庫も中にはあるかもしれないが、私の周りについては皆無である。

よって相場よりも割増した時給や諸手当などの人員採用および雇用維持にかかるコスト高騰についてのハナシは「他人事ではない」という事業者が一部例外を除いて全社である。
床余りのまま高値推移して久しい倉庫賃料や建屋売買金額に加えて人件費高騰が泣きっ面に蜂、、、その上に水道光熱費も高止まり。設備維持に要する修繕費も高いし着工は遅い。
営業倉庫なら荷主転嫁をどこまでできるか。
自社物流なら費用増を経営が認めるか否か。

求職者に迎合する事業者。
求人側の足下を見る求職者。
両者の手助けをする体で介在して胴元商売よろしく独り勝ちしているのは求人求職転職屋。

「そのうち破綻してしまうのではないか」と案じて止まぬのは、人材商売の連中ではなく、その弾や具となって有頂天となりがちな人材たちの処世術とその先に待ち受ける境遇。
ギャンブルや相場投資のビギナーズラックとその後に酷似している気がしてならない。
――という荒涼とした思いに幾度も見舞われているこの数年。

「こんなんでいいの?オバサンやオジサンたちがいつか来た道だよ」
と冷え込みで白くなる吐息まじりで虚空につぶやく私であります。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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