物流よもやま話 Blog

新しくてきれいな倉庫はやっぱり有利

カテゴリ: 実態

昨今の新設倉庫建屋には素晴らしいものが多い。
建屋の構えと仕事の中身が別物であるのはもちろんなのだが、同じ中身なら立派できれいで便利な方がよいはずだし、個人的にもまったく同じ感覚だ。
新しい≒きれい≒評価ポイント≒判断材料のひとつ≒報告項目
のような潜在意識が作用しているのだとしたら、新しくて大きいことは有利となる。

たとえばだが、無言のまま全員が建屋外部から内部までをひたすらに歩く、というへんてこりんな「黙々と倉庫を歩く会」みたいなものを催せば、優劣や勝敗は明らかになるだろう。
荷主向けのWMSやバース予約システム、一定幅に収まっているコスト条件、不快や疑念を抱かせぬ無難な応接、言うまでもない5Sの徹底――という似たり寄ったりの見学時対応なら、やはり結果は新しくてきれいな倉庫に有利となる。

経験や技術の訴求を必死でするのは、ハード面での劣勢に立つ側の常套手段。
しかしながら往々にして聴き手である荷主候補側は、技術の優劣や経験値が自らにもたらす恩恵の大小を判断する定規を持たない。
ゆえに、倉庫訪問後の帰路では、
「大きかった」「床がピカピカだった」「最新式のトイレはモダンで清潔感満載だった」「挨拶が素晴らしかった」「天井が高くて広かった」、
などの視聴覚的印象ばかりを思い返す。
WMSなどの中身については、「よさそうだったね」程度のさらっとした感想で終わることが常だ。データやらシステムのハナシは面白くないので、「このスペックならまったく支障ないだろう」と全員が認知すれば、それ以上の掘り下げは行われない。
物流トラブルや現委託先との係争などの最中であったり、不本意な値上げを通達されているといった、倉庫移転などの差し迫った事情を持つ事業者以外は、技術や条件の吟味に過剰なこだわりや確認をすることはない。

来年は自身も倉庫見学会やセミナーでの進行役や解説などの機会が増えそうだ。
荷主企業、3PL事業者、システム開発会社、マテハン製造・流通事業者、不動産ディベロッパー、などとの各種イベントや研修会、そして何よりも関係者各位がそれぞれの「利益」を求めて一堂に会する倉庫見学会やショールームや実稼働現場の内覧会などでは、第三者としての視点での発言や分析が求められるに違いない。その際にもこのようなハナシを、いくつかの事例を交えながら参加者へのヒントや要点として提示するつもりだ。
読者諸氏にも現場やWEBセミナーでお目にかかる機会もあろうかと思う。それは非常に楽しみであり、お気軽にお声がけいただければ幸甚だ。

新設の超大型倉庫が急増したことは直近の話題として誰もが興味を示すだろうが、庫内業務については見せ方が年々変わるだけで、運用の骨子には影響がない。
強いて言えば「自動化」の進捗が業務フロー自体の設計作法に影響し始めている点だが、それも総論同意ながら各論については各社各様といった感が強い。

これまでの数年とこれからの数年で、国内倉庫の平均床年齢が劇的に若返るだろう。異様ともいえる倉庫建屋供給は、EC興隆という実需を契機に、REITに代表される投資マネーの回流経路となったことが主因に他ならない。
その是非を長々とここで述べる気はないが、結果として既存の古い建屋は別利用されるか廉価で販売もしくは賃貸に回される。

多くの「〇〇屋」が駅前や商店街から姿を消したように、古い建屋で「倉庫屋」を営む小規模事業者は淘汰されつつある。
以前なら安堵されていた「すきま」や「大手には無縁」がどんどん減じているのだが、他業界とおなじく、既存事業者はそれを認めなかったり、わかっていても過去のやり方を信じて歩を変えない。
しかし一方で、結局は値段勝負になることなど誰よりも自覚してもいる。内心では不安に感じながらも、そのままの状態でいけるところまで行く、というのが過半だ。
そんな実態は、倉庫コストの相場を完全に二分化するだろう。最も不利になると思われるのは、中規模でそこそこの年数が経った程度良い倉庫だ。
あくまでもヒアリングした荷主動向から推しての予想に過ぎないが、オフィス需要の動きをみていると、あながち的外れとも思えない。

WEBセミナーか実会場か倉庫建屋内かは別にして、皆様とお目にかかれることを心待ちにしている今。「参加してよかった」と頷いていただけるよう、最善を尽くすつもりだ。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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