物流よもやま話 Blog

塗装も建具も設備も

カテゴリ: 実態

建築費高騰の状態が慢性化している。
ということは既存建屋の修繕費も同じく高止まりしたまま、、、どころか、さらに上がりそうな気配が濃いのは読者諸氏ご周知のとおりであります。

各種見積を目にするたび驚愕と絶望の混じりあった感嘆の言葉が漏れ出てはむなしく消える。
どこも公表などしないだけで、壁や屋根の塗装と修繕のコストが予定額をはるかに超えて順延せざるを得ない倉庫建屋はとても多い。

おせっかい承知で書くが、築浅ゆえに自分事ではなく対岸の火事としてこの手のハナシを見聞きしている方々も、是非自社物件のメンテナンス計画とコスト試算を「今の相場で」行っていただきたい――日常の手入れやこまめな修繕を今以上に励行しなければ、、、という意識が強まるはずですよ、とお伝えしておく。

最低賃金やエネルギーコストの上昇ばかりを憂いている場合ではなく、建家規模によっては億単位の割増額を再引当しなければならないはずだ。
それが何年後なのか、はたして一気にやるのか?はたまた順次なのか?などの算段を整えておかねばならぬ。物流部門と管理部門の情報共有を正確かつ密にしておかねば、いざとなってから認識のずれや時間割の誤解といったドタバタに見舞われかねない。

私が直接かかわったり見聞きした実例に加え、ゼネコンやディベロッパーの開発責任者から聞いたハナシを要約すると「修繕せずに撤去」という選択をする事業者が多い。
具体的には「建屋に掲げている大型看板の撤去」「立派で巨大な正門構えを撤去して簡素化」「植栽の減数」「敷地内余暇設備の撤去」など、挙げだせば結構な数になる。

要は「実務必需項目以外の修繕・新調は見送り」というのが大勢を占めており、なかには社員食堂の値上か廃止や敷地内自販機の価格補助廃止のような世知辛いものまで数多ある。
従業員用駐車・駐輪スペースの屋根撤去(支柱がむき出しか全撤去)や区切り線の引き直し取りやめなど、「なくても支障ない」ものはどんどん削られてゆくようだ。
当該事業所の従業員の声は嘆きと憤りと諦めと理解容認のさまざまだが、賃金と手当の保全が約されているうちは黙して働き続ける、というのがほとんどだ。

こんなハナシばかりでは気が滅入るではないか。
と思い直して、前向きに笑顔で聴けるハナシを探してみたが、修繕関係ではまったく思い浮かばない。それどころか他の「金と手間と我慢が必要ないくつかの面倒事」を思い出してしまい、低く唸ったままキーボードを打つ手が止まってしまう始末。
「たまらんなぁ」と苦笑いしつつ、いっそのことこの原稿をボツにしてしまおうか、、、とも考えたが、実態はそのまま伝えるべきだと思いなおして書いている。

全コスト上昇となる今後、企業の利益確保はより難しくなる。
そうなると企業内のコストセンターと位置付けられている各部門は、ますます合理化と簡素化による倹約が求められるだろうし、すでにそうなっていることは言うに及ばずだ。

手前味噌ながら、
「外部委託よりも内製化するほうが安くて小回りが利いて程度も上々、の第一は物流機能」
というのがアタリマエになるべきだし、ほとんどの企業に当てはまるはず。

そこのところを疑ったことのない企業経営層は、是非ご検討あれ。
「自社で汗をかかねばコストの膨張に歯止めをかける策は講じられませぬ」
と毎度の進言で〆ておく。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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