物流よもやま話 Blog

安心してください。あいてますよ

カテゴリ: 実態

秋の行楽シーズン真っ盛りである11月の3連休。
しかしながら衰えぬコロナ禍によって人出も振るわず……という書き出しになるはずが、実際には各地大盛況だったようだ。
因果応報よろしく、年末にかけての感染爆発を案じる報道が盛んだ。
(※12/03の18:00現在、大阪府では吉村知事が府民に向けて15日まで外出自粛を要請決定)

排尿などの生理現象と同じで、我慢に我慢を重ねた末に「出てよーし」という掛け声で解放されたら最後、「ちょ、ちょっとまった!も、もういっかい、とまれーっ」と軍曹殿が大声で静止の号令を発しても、もはや無理というもの――が現状ではないだろうか。
しかしながら、中途半端なホフクゼンシンはかえって事を悪化させている気がしてならない。こうも「引き締め」と「緩和」が何度も繰り返されると、危機感や緊張感が薄らぐというものではないかと思う。

団体での旅行や外食、飲み会も我慢し続けたこの半年余り。
「自己責任と自己管理」の但し書付きながら、やっと御上のお許しが出た初秋。
みながブレーキからアクセルに足を載せ替えて、徐行から徐々にスピードを上げ始めた矢先が先週末だったような気がする。
ここにきての急停止には、制動時間や距離がかかるのも当然である。急ブレーキは何かにつけてよくないことが起こりがちだ。
案じて憂うことしかできない無力な自身がもどかしいが、物流現場での対処策や情報開示の迅速化をWEBで訴えるぐらいはせめて心がけたいと思っている。

土日祝祭日の高速道路や主要幹線道路には車があふれる。
言うまでもなく全部が全部レジャーなどの私用外出する自家用車ばかりではなく、相当比率で営業車両が混じっている。
EC興隆の昨今、幹線輸送便の往来多数が通年現象となっているが、それを最も実感できるのは夜中の主要高速道路だ。

初めての体験ならなおさらだが、深夜割引の開始される午前0時少し過ぎに、東京IC(用賀)から東名高速にのれば、その大型車の混雑ぶりには誰もがおののくはずだ。
誇張抜きに「前後左右全部トラックで、四方壁で囲まれた車庫のまま移動している」と感じるだろう。人によっては「コワイ」という言葉がこぼれるかもしれない。
ほぼ全車が職業ドライバーなので、法定速度で安全運行しており、圧迫感以外には何の支障もない。流れのまま走っていれば、厚木あたりからは多少すき始める。
私などは「割引開始直後のラッシュ時に普通乗用車でスマン」などと思いつつ、長距離運転者の労働環境を案じたり、それあっての日常消費が保たれていることに感謝する毎度なのだ。

午前0時から4時の間に高速に乗るか降りるかすれば割引適用されるため、多くのドライバーはどこかのPAかSAで休憩や仮眠をとる。深夜の大型車駐車スペースがびっしりと埋まっている光景を目にした方も多いと思う。ドライバーにとっては、大型車両が気兼ねなく駐車でき、しかも食事や睡眠を確保できる場所は、仕事道具として必需品であるし、労働環境の健全化からしてもなくてはならない。(個人的には全然足らぬと感じている。施設の充実や食事・買い物時の割引優遇も全ト協をはじめとする各組合や団体がNEXCOなどの各社と練るべきだと思う)

「車を離れて休息」できる、いわば虎の子の場所が、高速道路ならPA・SAであり、幹線道路なら道の駅やトラックターミナルである。さらには飲食店やスーパーマーケット、コンビニエンスストアなどの短時間利用も対象として挙げておかねばない。
そして、総じて大型車両用に確保されている駐車スペースは不足している。今後増える連結車両などは論外の状況だ。このままではキャンピングカー仕様の長距離大型車両の導入促進しか打開策が無くなってしまいそうで憂鬱になってくる。
しかしよく考えれば、社内泊できる駐車場の不足が解決しないままではたいした効果はないのだ、とうつむいてしまう。

トイレや入浴、食事は「用を足せればそれでよい」というものではない。
ドライーバー以外の職業人も、自身のこととして考えてみればうなずけるだろう。
認められた場所に駐車して、睡眠や入浴は簡易ホテルのような場所で確保し、食事はイスとテーブルで摂り、テレビを観たり新聞や雑誌を読んだり、無料Wi-FiでWEBサービスを楽しんだりしてもらいたい。断っておくが、一から十まで正義感や人道的正論で書いているわけではなく、「自分がそうしたいから、ドライバーにもそうあってほしい。無理や我慢を見て見ぬふりはひけめやモヤモヤが拭えないままで、すっきりしないから居心地が悪い」という本音も多分に含まれている。

既存施設の拡張や新規設置には用地とコストの制限が課題となるだろう。
スマートICの増設によって、SAやPAから至近の公道沿いに大型車専用の施設を設けることも選択肢としてより進めてもらいたい。
幹線道にも大型車両優先もしくは専用の駐車スペース設置の道の駅やそれに類した施設の増加を望む。行政は補助や認可要件の優遇などで後押しすべきだ。
言わずもがなかもしれないが、混雑時でも大型車の駐車スペースに乗用車を停める行為だけは厳禁としてほしいし、施設側も使用区分の掲示や監視の強化をすべきではないだろうか。
われわれの生活を支えている生活物流の担い手である大型車のドライバーたち。せめて、トイレや食事や休憩するためのわずかな時間の確保には、みなで協力しようではないか。

「安心してください。あいてますよ」
駐車スペースにさしかかるドライバーたちに、そんなささやきが聞こえるような環境づくり。
率先して声を上げるのは、われわれ物流人の責務だ。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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