物流よもやま話 Blog

米不足と現場メシ

カテゴリ: 実態

米騒動の混迷はまだ続きそうだが、生産者と消費者の双方がシンドイばかりでその間にいる流通業者の実態はあまり知らされていない。

政府が標準としている備蓄米保管は5年分100万トン。
その保管および維持費は直近統計で年額478億円。

つい先日の発表によれば今回の約60万トン放出によって保管料だけで月額4.6億円、、、つまり年額換算で55億円が消失。
のような情報自体も初めて知った。

ということは、100万トンの6割相当の保管料が55億なのだから、年間保管料総額は92億円弱。
年間維持費が478億なので保管料92億を差し引くと478-92=386億→この数字に含まれるものははたして買入代金と保管料を除く荷役、その他、、、なのか?
とよくわからんので、ちょっとだけ調べてみた。

直近の資料が入手できなかったので、2021年度版の農水省資料でしか記述できない点はご容赦のほどを。この年は上述した年間維持費が490億円と計上されている。
気になる内訳だが、
1.備蓄米の保管等諸経費は113億
2.売却差損が377億
となっている。

売却差損?
つまり5年超の持越米を飼料用などとして売却するにあたり、買入価格との差損が発生するわけで、その額が年に377億円。見方を変えると非常時のための「お米保険料」の掛け捨て額とも理解できる。月額30億円超のお米保険料かぁ、、、ひと昔前にその予算について議論があったはずだが、2011年の震災で立ち消えてしまった。そろそろ再考してもよいような気がする。

ちなみに2021年と本年の保管料単価が同じと仮定すれば、
保管等諸経費113億-92億=21億→荷役および運賃となる。
(はたして入出荷時の運賃はこの数字に含まれているのかが不明)

いずれにしろ倉庫屋風に説明すれば「おもいっきり保管勝ちなので、高額荷役単価・高額運賃と高額保管単価でないと合わんなぁ」となるわけだが、あくまで「倉庫業を営んでいる事業者ならば」という前提条件でのハナシである。読者諸氏ご承知のとおり、普通の倉庫業なら請求における保管料比率が3割超えたらもうシンドイはずだ。
つまり備蓄米保管については荷動きが少なくても見合うだけの荷役・保管の単価明細となっていることが推して知れる。
もしくは入庫時と出庫時のみ荷役発生し、あとの期間は空調管理だけで保管するのみ、、、なら保管料差益-光熱費-最少人件費=営業利益なので、収支としては悪くないかもしれない。ただし業態としては倉庫業ではなく不動産賃貸業のほうが実態に近いと思えるが。

併せて気づくべきは、前段で述べた「荷役料21億円」は結構な高額荷役となりそうだという点である。「なりそうだ」はあくまで私の主観的な見立てであり、その基本的な作業内容と入出荷明細や付帯加工および仕分けや区分けの個別オーダーの有無等が不明なので、誰しもが認めざるを得ない客観的で合理的な「高いor廉い」判定はこの稿ではできかねる。

それにしてもドエライ金額が「非常事態に備えるための備蓄米」には投じられている。
どっかの炎上党首殿はエサ表現以前に、「掛け捨てのお米保険料のモンダイ」に踏み込んだ方がよかったのではないかと思うワタクシだが、読者諸氏のお考えはいかがだろうか。
ん?「そんなことより備蓄米の保管仕事にありつくにはどうすればよいのかを至急調べてくれぃ」との声があちらこちらから聞こえてきそうだが、その手の利権絡みに縁があるなら、しがない物流屋などからとっくに足を洗っている。その際にはこの物流よもやま話も「物流ひとやまバナシ」に名前変更して全国制覇する運びとなるはずだ。

というハナシがしたかったわけではない。
お米不足によって、社食や出入りの仕出し弁当屋さんがエライことになっている。
――という事業者が多いのだ。
100%白米ではなく雑穀などが混じったご飯が増えている。
さらには麺類とのセットものも以前に増して日替わりメニューに加わることが多いらしい。
「今週は麺類スペシャルウィーク!」という立て看板がもはや7週間連続、とか。

社食も仕出しも極力値上しないように努めているのは従業員に痛いほど伝わっている。
利用者からすればありがたく嬉しいことは間違いないが、くれぐれも無理は禁物である。
続けるためには提供者に対する理解と協力が不可欠なのだから、限界ギリギリまで我慢せず、心おきなく「値上げのお願い」をしてほしい、、、と現場で働く人々の代弁をしておく。

、、、って、いったいぜんたいどこの何様気分で書いているのだろうか。
本稿ちらかり気味でモウシワケございませぬ。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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