物流よもやま話 Blog

使い捨てこそ本望

カテゴリ: 信条

今までにたくさんの荷主企業とお付き合いしてきた。実務関与には至らないまでも、視察したり相談を受けたりした企業の数まで数えれば少なく見積もっても、、、、、わかりませぬ。

いやはやイイカゲンにもほどあるやらナサケナイやらでうな垂れてしまうが、ほんとうに数えたこともなければ数える気にもならないので、その数は不明なのであります。
おそらくきっと200,、、いやいやもっと、、、そんなにはないだろうに、、、でも10年ぐらい前に150社を超えていたではないか、、、そもそもその数字はホンマかいな?
というように要領を得ないので、他人様から関与履歴の数を問われるたびに「えーっと、、よくわかりませぬ」「たぶん○○○ぐらい」などと適当に答えてきたのだった。

のようなハナシをしたかったわけではない。
上段の長い枕バナシにあるとおり、ワタクシの来し方をふり返れば、実にさまざまなモノを取り扱ってきたことがわかる。それについては我ながら「恵まれていた」と肯けるし、貴重な機会を与えてくださった荷主各位にはただただ感謝するのみであります。

なので日常会話でも結構な頻度で、
「その会社の製品の部品を供給している会社の物流を任されていた」
「その業界のとある会社のスポット業務を請けたことがある」
「その商材はタイヘン詳しく知っている」
「その業界には独特のルールがあって、、、」
「その製品の部品はほとんどが輸入品だが、唯一国産なのは、、、」
のような内容のハナシをすることがある。

あくまでマイルールとして厳守しているのは、
「実務終了から3年、内容によっては5年を経過した事業者もしくは事業部門」
のハナシしかしない。
当然ながら固有名詞や具体的な数字をはじめとする各種情報は一切口にしない。
お付き合いのある方々ならご存じのとおり、私の口から具体的な荷主企業の名前がでることは稀で、伝えたいハナシの趣旨がわかり易くなるように事例的引用をしているだけなのだ。
なので複数社の事例を組み合わせり、実例にある数値や規模をデフォルメしたり、拠点が関東から近畿に置き換えられていたり、、、のようなパターンが多くなる。

言うまでもなく現在進行形の関与先情報の具体は一切言葉にも文字にもしない。
よくある「実績一覧」とかいう営業ツールにも無縁なのは、勝手に自らに課している掟によるものなのだ。物流屋の腕前なんてちょっと遣り取りすればすぐに判るはずだし、事前に拡げた風呂敷は現場では役に立たないものだ。
荷主企業の物流管理者の困っていることと望むこと、思考と志向、組織図の設計意図、などを丁寧に聴き取って、それについての評価や所見を手短にまとめて提案するだけでよい。
それが「さすが!」か「うーん、、、」なのかは相手が決めることなので、イキリ倒してフンガフンガ吠えても空しいだけ、と割切っている。

私は先生タイプではなく、管理者の背後や足下に潜んで黒子のようにプロンプターや二人羽織の背後役となる「影」の存在のほうが性に合っている。
なので交渉事の場に同席して代理人的発言をしたり、積極的に購買先を紹介したりもしない。あくまで荷主の後ろに控えていることに徹しているつもりだ。
したがって荷主企業の取引業者は私の存在自体を知らぬことが多い。
関与先の各位も私の存在を外部者に知らせることは稀なようだ。
「懐に潜ませた鋭利な刀」、、、と思ってほしいもんだが、実際には「いい加減でたまーに役に立つオッサン」というのが妥当な評価ではなかろうか、、、たぶんそうだろううなぁ。
一般社員やパート従業員の方々も「あのオッサンは来社して何をしているのだろう?」といぶかしがっていることも承知している。挨拶したり、管理者諸氏とたまに現場を歩いたりして小声でなにやら話しているだけの姿しか晒さぬので、庫内やヤードで働く多くの関係者は「よくわからんオッサンだが、人畜無害のようだ」として気に留めることもないはずだ。

「魚を差し出すのではない。魚の釣り方を身につけてもらう」
「チャリンコの補助輪と同じく、自分のような役回りは使い捨てで当然」
「誰の記憶にも残らぬことが本懐」

私の掟である。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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