物流よもやま話 Blog

物流プロフェッショナル達の本気

カテゴリ: 信条

若い方々にはもはや馴染みなく常用外の言葉なのかもしれないが、「商流」という言葉は物流以上に前世紀では多用されていた。
ビジネスレターや経済記事、日常の業務会話や商談などでも頻出する単語の一つだったし、取引の始まる前には最初に確認される事項でもあった。

用語辞典には以下のような説明がある。

商流は「商的流通」や「取引流通」とも呼ばれ、売買などによって商品の所有権が移転していく流れをいいます。これは生産物(商品)が生産者から消費者に流通する過程における、所有権や金銭、情報などの流れのことを指します。
一般に経済活動におけるネットワークは「商流」と「金流」と「物流」に区分することができ、この区分において、商流とは受発注の流れ(所有権移転や代金決済などの流れ)、金流とは文字通りお金の流れ、そして物流とは商品自体の物理的な流れのことを意味します。

実務では商流と金流は表裏一体であることが通常だ。
それはひとえに商流の全コストの負担者である最終消費者にたどり着くための情報を得る、もしくはその情報の流れに加わるための対価を意味している。
原価が最終売価に変わるまでに利益を転嫁する回数がその商流の参加者数となる。
蛇足だが、物流を外部委託するということは、自社の商流や金流から物流を分離することと同義で、かつてはそれが全体業務の効率向上やコスト効果に寄与するとされていた。
企業経営の環境変化と利益確保の厳しさが増す昨今では、自社の物流業務フローと総工数の把握と検証、内製化した場合のコスト比較の試算なく外部に丸投げすることは、ずさんで前時代的と評されてしまう。

製造原価に利益を加えた商品原価を問屋が仕入れ、それに再び利益をのせた卸値を小売が仕入れ、三度目の利益上積された販売価格を消費者である最終支払者が負担する。
ほんの十数年前まではあたりまえの商流だった。
三回の転嫁どころか、さらに参加者が多い場合も少なくなかった。
その上にバックマージンやら歩引きやら請求金額の一定比率を翌月に回して支払う約定(毎月のことなので、実質的には完了後値引きと同じ)だとか。
消費者から遠い参加者ほど情報料の負担が大きい。
したがって、それを見越した値付けを行う。「のっけとく」ということだ。
最終価格が下がりにくい要素を仕組みとして商流参加者が維持していた。
消費者以外の得にならないコストカットやルール改変など行わなくても売れたからだ。
お客様が神様たるゆえんは、商流参加者の利益をすべて「ご負担」してくださるだけでなく、多少の値上げなら引き続きのご愛顧という更なる「ご負担」を甘受してくださったから。
そんな時代が長く続いた。

ご承知のとおり、21世紀に入って急速に従来の商流が崩れ始めた。
新興のSPA、ECは既存商流の最終消費者に直接アプローチし、根こそぎ「自分たちの神様」になっていただいた。
流通はもう過去に戻ることはないし、現状の勝者である直販組の中でもすでに数多い淘汰が頻繁に繰り返されている。勝ち残る、生き残るための条件や活路の見極めが難しいのだろう。
だからこそ、我々は一貫して物流業務とそのコストへの向き合い方と取り組み方の具体論と方策を訴え続けている。
販売スキームや商品性だけでは競争力の必要十分条件を満たすことができない時代に突入しているからだ。物流の効率化と合理化は顧客満足獲得の一翼を担うし、コスト効果も大きい。
それを手つかずのまま放置し続けてはならないと叫ぶように主張してきた。

今まで常套手段であった丸投げ型の物流外部委託は、業務品質と請求額(約定単価自体だけでなく、工数や作業区分数)について、荷主企業(委託元)から再検証が施され、大きな転換点を迎えるだろう。
詳細で綿密なコスト管理のできていない自社物流には、実態把握のための厳しい監査と分析、数度の検証作業が経営主導で行われるに違いない。
製造・仕入・営業・管理・人事労務などの各部門で身を削るような効率化やコストカットが淀みなく絶えなく進められる中、物流にも同様の実践が求められるはず。
俗にいう「出た目」での業務管理とコスト計上は認められなくなる。

ロジ・ターミナルは事業会社の物流業務を形成する商流を縦型からフラットに再構築することを提案・実践している。最近では4PLの先鋒と表現されることも少なくないが、謳い文句にはあまり関心がないというのが正直なところだ。
物流設計から始まるひとつの業務について、コントローラーはあくまでロジ・ターミナルだが、扇のかなめのような役割を果たすだけだ。
建築にたとえると、不肖ながら弊社が「通柱」を建てる役割を担う。

協力会社各社はそれに準じて各職相応の仕事をしてくれるはず。
関与者全員が本気で自らの存在をかけて仕事をすることになる。
物流機能の各分野のプロたちの裸の価格と本気の提案は、荷主企業にとって大きな力になる可能性が高いし、提案側も企業マインドが高揚する。

現状が外部委託の企業は、まずは「内製化」した場合の各種シミュレーションを行うべき。
コストに大きな乖離があるのなら、価格交渉か内製化推進かの選択が眼前に浮かび上がる。
もちろんだが、何が何でも内製化する必要はなく、OEM的な発想で業務フローや工数管理などの基本設計を自前でできるようになることで、委託先との関係が変わってくるはずだ。

委託元の業務指図を無下に受け付けなかったり、嫌悪する委託先とは、将来を共にすべきではない。荷主が物流業務をコントロールできるようになることを「好ましくない」と判じる物流会社を、パートナーとして認めてはならないのは誰もが頷くところだろう。
内製型の自社倉庫で庫内業務やシステム設計の協力会社があるなら、委託内容と支払金額、その業務が孫請けなどに丸投げされていないかも調べる必要がある。
部門責任者および担当者は、多少の摩擦は健全で明朗な取引継続に不可欠という認識のもと、断固たる意志で貫徹していただきたい。
部分的でもまったく支障ないので、弊社に補助をご要望いただければ、段取りとスピードの後押しにはなるはずと自負している。

物流改善の糸口を探し、特定し、手繰り寄せ、分析する。
次に問題点を単純化し、業務フローの再設計と再構築を行う。
自社物流なら、OJTを繰り返し、実運用での修正点を見出して、再度のOJT。
外部委託なら、再設計した業務フローの実効性の情報聴取と検証。それを受けての修正や再々設計。

こんなことを繰り返しているうちに、現場はタイトで簡潔な業務運営となる。
それを支える存在としてなら、協力業者は心強い味方だろう。
荷主企業からすべてが見通せ、手に取るように理解できる「わが社の物流業務」。

ちょっとワクワクしませんか?

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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