物流よもやま話 Blog

棚卸と健康診断の時節

カテゴリ: 余談

今日が半期末という会社は多い。
ということは棚卸時期であり、物流現場はその作業の真っただ中である。そして毎度のように各現場から漏れ聞こえてくるのは、
「あぁ、はやくRFIDなる神器がわが社にも導入されぬものか。冗長で煩雑極まりない作業が一瞬で終わるらしい。まるで夢のようではないか」という類のハナシだ。
そのような羨望の声には、大木こだま師匠に代わって「夢やがなぁ~、、、チッチキチー」と返すことにしている。商品マスター改変から始まる環境整備などの諸事と導入コストまで試算すれば、現状では「夢やがなぁ~」は漫才のオチに限ったものではなく、各企業の役員会で発せられる切実な声である。

棚卸シーズンと同じくして巷の企業では従業員の健康診断が実施される。事業者が属する健康保険組合や福利厚生内容によっては、会社負担の人間ドックなどが用意されていたりもする。
一定以上の年齢の従業員には成人病関連の検査項目などが標準化されているか格安で追加できるなど、たいへん充実していると思える。近年の傾向らしいが、30代以下の世代が三大疾病の兆しを警戒して、オプションの有償検査を受けることが多くなっているとのこと。
自身の若かりし頃と比べ、なんと堅実で慎重なことかと感心してしまう。毎年の健康診断さえまともに受けずに過ごし、たいした仕事もできないくせに連日深夜まで働き、朝まで大酒を呑んで、そのまま会社で仮眠しては仕事して、またまた夜は呑みに行って、、、なんていうのは今や愚かな自滅型人間と嘲笑を買うのみなのだろう。

そんな生活のツケをまとめて払わされる羽目になったのは、40代になって間もない頃のことだった。自業自得・因果応報の典型たる大病が見舞ったのは自他ともに「そりゃそうなる」と呆れて突き放したくなるような出来事だった。
仕事が好きだったわけではなかったが、いつも何かに飢えていて、何かに追いかけられている切迫感が付きまとっていた――というのが私の20~30代だったような気がする。
もし有名な以下の数節を心底から理解していれば、野放図なるままの荒れた日常を少しは正したはずだろうと思う。

知人者智、自知者明。
勝人者有力、自勝者強。
知足者富、強行者有志。
不失其所者久。

老子は学生時代から愛読者のひとつだったはずだが、まったく身になっていなかったことは反論の余地なき事実だ。いい齢となった今に至っても、自らに勝つことなど全くできていない。
毎年の健康診断でさえ「なんか悪いところあったらどうしよう」なんてびくついているオッサンには、自律や自尊の謙虚さや抑制などはるか彼方の高尚な行いでしかない。
それどころか自分自身の満足を過不足なく知ることすら未だ成せない。
なので関与先の若い方々に年長者として気の利いた助言をできるような身分ではないが、それでもヒッシのパッチで無い知恵を絞り出すように考えて話している次第だ。

棚卸時期の常だが、責任者・管理者諸氏と私は事務所滞在時間が長くなり、実務サポートから少し離れた会話が多くなる。
この時期に重なる健康診断の話題が拡がって、仕事がらみのさまざまなエピソードに会話が及ぶことも少なくない。そのような会話にしても、今の若い世代の言葉は地に足がついている内容が多いし、とても堅実である。

「今の時代に新卒者として世に出たなら、、、」
と考えるだけでゾッとする。間違いなくダメ社員の筆頭に挙がること間違いないだろうし、あまりに落ち着きなく幼稚ゆえに同期や先輩諸氏から疎まれるに違いない、、、関与先の若い社員の方々と話すたびに感じるのはそんなことばかりだ。

よくよく考えたら、学生時代から島耕作よりも雲の旦那のほうがはるかに好きだった。
そりゃ会社ではダメダメ扱いされるわなぁ。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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