物流よもやま話 Blog

高温多湿の夏から厳寒多雪の冬へ

カテゴリ: 経営

コロナ禍収束の兆しが見え隠れし始めたように感じている。という私見には科学的根拠など一切なく、「なんとなくそんな気がする」というに過ぎない。
無責任で楽天的なのは承知しているが、悲観ばかりの閉塞停滞はもはやウンザリなので、勝手に明るい兆しをでっちあげては触れ回っているのだ。
コロナ収束、侵攻停戦、原油高、円安常態化という踊り場的膠着で一区切り――のような絵図が脳裏に浮かぶたびに、それは楽観的要素など皆無の状況だと我に返ってしまうのも事実。
こうなると我慢忍耐ではなく適応恒常を標語として掲げるほうが現実的なのかもしれない。

少し前の掲載でも書いたが、今年もラニーニャ現象のまま冬季を迎えるので、またもや寒くて雪の多い冬となるのだとか。春先からつい先日まで亜熱帯化して高温多湿で暴風雨被害に見舞われ続けたのに、今度はいきなり低温多雪の凍える街並みで暮らさねばならぬようだ。
温帯の国に生まれたはずの昭和世代にとっては、過酷で辛いこの数年となっている。
労働環境の悪化は全産業共通のハナシとは知りながらも、やはりわが業界の現場最前線を真っ先に案じてしまうし、先々への憂いを禁じえない。
降雪による幹線道路の通行障害や、夜間早朝帯の凍結や濃霧による事故。一昨年も昨年も事故・渋滞や被害者・被災地のニュースが報じられた。
そのほとんどが不可抗力――訴える先も責任を問う相手も存在しない自然の猛威による現象や副次災害だった。

生理的限界を超える苛烈極まりない熱暑が連続する夏季。そして最後の真夏日からたいして経たぬうちに到来する厳寒と降雪の連続による積雪や路面凍結。窓を開放して、外の風を心地よく感じながら暮らせる期間はいったい何週間あるのだろうか。空調機が終日稼働しない期間が年々小さくなってゆくと感じているのは私だけでないはずだ。
そしてそれは物流現場なら一層強く感じられるということは説明不要だろう。
各家庭ごとに生活環境が異なるように、物流現場もその拠点なりの労働環境が存在する。建屋自体の断熱性や空調設備の充実はまさに〝ピンからキリまで〟としか言いようがない。
労働環境を決定する要素の中で、寒暖乾湿調整はかなり上位に挙げられるはずだが、ご承知のとおり建屋の仕様や空調設備を充実させるには安からぬコストがかかる。後付けなら割増的に値がかさむ。施工や付設に際して、現場稼働に支障や制限が発生する。お金をたくさん遣うのに、お金を稼ぐための最終工程である物流機能が鈍るのだ。
なので経営は二の足を踏むどころか、一の足すら踏み出せぬことが多い。

ない袖は振れぬことぐらい現場社員は心得ているし、一足飛びに多くを望むこともしない。
しかしながら、「せめてこれぐらいは」を現場が実感できる程度の経営努力は切に願う。
さらには労働時間帯の組み換えや、引当から出荷完了までの猶予時間を拡大するなどの抜本的改変を積極的に試みて欲しい。現場にとって業務品質を維持するために最も有効でありがたい条件は「時間」である。人員数不足や庫内環境悪化も、一定レベルまでなら猶予時間の確保でやり過ごすことができる。未出荷・残荷を絶対悪と看做す現場は多いが、その規律を支配しているのはひとえに時間なのだ。つまり時間の制限を緩めてやれば、現場の自由度や可動域が拡がることになる。
営業マターではなく経営要望として、出荷先への理解啓蒙を推進してもらいたい。
こちら側が身構えて躊躇していただけで、丁寧な説明と顧客利益の欠損が皆無であることを訴求できれば、取引先のほとんどが頷いて認めてくれるはずだ。合わせ技で値引交渉する猛者もいるかもしれないが、そのあたりも想定して臨めば摩擦なく往なせるだろう。
ここはエライお方の出番に他ならぬことも蛇足ながら付け加えておく。

長期化しつつ亜熱帯化する夏季と厳寒の冬季が恒常化しつつある我が国。
ならばそれなりの適応をしなければならない。
人材募集、人材確保、人材待遇の土台として業界事案化すべきではないだろうか。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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