
暦の巡り合わせで、今年の最終稿はクリスマスの翌日となった。
「せめて最終週に掲載したかったなぁ」
などとブツブツ言いながら書き始めたが、心の奥が捻じれて痛むいくつかの災害や戦争を除いては私個人に直接かかわりある印象深い出来事、事件や事故も思い浮かばない。
つまり自身にとっては平穏な一年だったということなのだろう。
「年賀状じまい」という言葉を見聞きするようになったのはいつごろからだろうか。
統計では、企業の半数以上がすでに実施済み。個人も「出さない」人が多数派(約6割)。
ネット・SNSの普及が主な理由で、費用・手間削減や終活の一環として加速しているようだ。
特に企業では一昨年から「○○じまい」が急増、今年は年賀状を「出す」が3社に1社程度まで減少という予測もあるらしい。
何度か書いているとおり、30年ほど前に「暑中見舞・年賀状・中元・歳暮」市場から撤退したため、個人的にはこの手のモンダイに縁がない。
かといって「じまい」の是非を論じるつもりはさらさらなく、企業も個人もそれぞれが好きなようにすればいいではないか、と一瞬思ってすぐに忘れてしまう。
「日本郵政は一般貨物も対象としたうえで事業構造を変えざるを得ないわなぁ」
ともつぶやく毎度なのだ。
そういえば今年の漢字は「熊」だった。
が、さらに一文字あげるとしたら読者諸氏はいかがだろうか。
私個人の暮らしとしては「平」が思い浮かぶが、物流業界を眺め続けた通年で感じたのは「鈍」という字に尽きる。
労務改善、設備改新、業務改革、制度改定、、、すべてにおいて過剰なほどの明るく自信に満ちた掛け声はピタッと止んでしまった。
実際には「言うほど進んでいたのか」さえ判然としない‘進捗’は鈍化もしくは停止し、サプライヤーもユーザーも次への展望を謳うべき場面で、ことごとく反応遅く鈍く重い。
まさに上滑りの未来予想図の反動たる不明の時期到来ともいえる一年間だったように感じて止まぬし、その影は来年も居残ったままなのではないかと思えてしかたない。
、、、というハナシは展げてもオモロクないので元に戻す。
今年は「私の○○じまい」を想ったり感じたりすることが何度かあった。
たとえば、
「行きつけだったお店がなくなってしまった」
「かつての社会人○○部が廃部」
「昔取引していた会社が吸収合併で社名消失」
のように「思い出の場所や名称じまい」という喪失感に気持が沈むこと幾度も。
記憶にある場所や施設を再訪しても「懐かしいなぁ」という言葉を吐くことは叶わぬまま呆然とする、、、そんな場面が脳裏に浮かんでむなしく寂しいばかり。
こういうことのいちいちが「齢をとる」ということなのだ、と自身に言い聞かせてみるものの、生きている限りは更なる喪失感や無常を身に受けるのかと思うとシンドイ。
シンドイついでにちょっとだけ生業のハナシを。
「温故知新」は小学校高学年あたりで習うような気がするが、不明の時こそ今一度さまざまな昔ばなしを読み返してみたらどうだろう、、、と思うことたびたびの近年。
「先達よりも自分たちの方がより進んでいてより賢明でより優秀」
という潜在意識となって久しい思い上がりは現代人にありがちなスットコドッコイ病だ。
しかしながら、
「ひょっとしたら自分たちよりもはるかに知能レベルが高く叡智に富んでいたのではないか」
という素朴な疑問を抱きさえすれば、古代文明の謎や先哲の唱えた真理がほとんど解明できていない現代人の稚拙蒙昧さやいかに不明かが推して知れてくるはず。
「よくもまぁ大昔にこんな建造物がつくれたものだ、、、不思議不思議」
「いったいどうやって運んだのだろう、、、シンドバッドの冒険にでてくるような巨人か?」
「こんな広大な地上絵をどうやって歪みやズレなく描いたのか、、、宇宙人か?」
のような感想は「現代人がわからないことを、古代人がいったいどうやって、、、」という意識が吐かせたものであって、その時点で滑稽さと間抜け感を禁じえない。
無知は不遜の母、、、という先哲の言葉を借りるまでもない。
暮れの刹那に毒まじりの小言を吐くのは野暮で愚かしいと承知している。
しかしながら物流の昔ばなしやアナログ時代の現場道具のあれこれを是非お調べいただき、熟読検分いただきたいと何度となく訴えてきたのは、上記と同じ理由によるものである。
唖然として目から鱗が落ちるような時間となること間違いないはずである。
一年の最後まで野暮が抜けない私をおゆるしくださいませ。
本年も拙文をお読みいただきありがとうございました。
ご来訪いただいたすべての方々に感謝申し上げます。
来る年が平穏な一年でありますように。
年末年始の数日間、皆様が柔らかなほほえみの時をお過ごしになりますように。
心からお祈りしております。
エンドクレジットのようにめぐる私の2025年を想いながらの最終稿であります。
永田利紀
永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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