物流よもやま話 Blog

凍えるヤードと冷え込む庫内

カテゴリ: 本質

勤労感謝の日を境に、一気に真冬モードとなった。街往く人々の装いもコート姿にマフラーや手袋が目立つ。
原油高の影響はガソリンだけでなく光熱費上昇にも直結する。暖房費のかさむ今からは家計への影響が案じられるが、国策として電気やガスなどの料金補助を一案として検討すべきだ。
「あたたかい」は万人にとってありがたく心地よいはずなので、せめて必要最低限の暖房確保を後押しする政策があってもよいのではないだろうか。

極寒の倉庫内やヤードでの作業は、寒いを通り越して過酷で辛い。
作業によっては手袋が邪魔になる場合もあるし、防寒具が動きの妨げになったりもする。よって凍るような空気の中、指先がむき出しのまま作業したり、薄手の作業服のまま業務を続けたりする様相となる。当人も管理者もその状況が好ましくないことなど承知しているが、効率や精度を考えればそうならざるを得ない。
酷暑の夏季と同様に、人間の生理的限界に迫る環境下での作業は危険であるし、そのような状況では集中力が低下して、作業中の事故やミスの発生の原因ともなる。
現場での工夫だけでは限界があること明らかなので、入出荷ともに消化効率を低めに抑えて支障ないように、営業部門や購買部門が川上で調整して現場協力してほしい。

コロナ禍にあっての防寒は背反する要素が多く、倉庫や作業場の外気遮断が通風確保と相容れぬことは言うまでもない。ならば機械暖房だけに頼らず、下着や履物などに保温や蓄熱素材のものを使用することも有効な対処となるはずだ。もちろん各社各現場で「防寒補助費用」として現物支給してもらいたい。下着メーカーやスポーツアパレルのサイトにはたくさんの商品が揃えられているので、管理者諸氏は是非ご検討いただきたい。

と、えらそうに書いている私だが、一昨日にやっとタイツ、シャツ、靴下を発熱素材のものに切り替えたばかりだ。
職業柄「涼感」と「温感」へのこだわりはそれなりにあって、真夏・真冬の倉庫内やヤードでの作業視察や業務改善説明が少々長くなっても支障ないように心がけている。
もちろん関係者諸氏の負担が少なく済むように、最短での簡潔な質問や説明を専らとしているつもりだが、相手次第では時間が長くなることも少なくない。
周囲の作業者は長時間にわたり現場の暑気や寒気に晒されたまま業務を続けているのだから、多少の我慢は当たり前でもある。

凍えるヤードでの荷捌きは顔面の感覚がマヒするのが毎度だろうし、庫内の床面から足下に這い上がりまとわりつく冷気の膜は、時間の経過とともに作業集中力を減じさせる。
足下用の暖房機を個々にあてがえる現場ばかりではないし、外側から暖気を得るよりも、衣類の内側で保温するほうがはるかに効率も効果も高い。
さらに温かい飲料を摂ることで、体内温度が上がるのだから、これも会社として徹底してもらいたいことのひとつだ。作業者ごとに現場持込用の保温ポットを貸与するぐらいなら、たいしたコスト負担となならないはずだ。

前々回の掲載にあるとおり、ラニーニャの冬は寒いという展開となってきた。寒いし凍るし雪が積もるし、というのは、物流屋にとって三重苦とも呼べるほどつらく厳しい状況である。
気象変動は不可抗力要素だし、過酷な環境下での作業も完全には避けられない。それが人材募集や人材定着の妨げとなる一因となっていることは事実で、業自体のもつ宿命といえる。
機械が代替できる作業はまだ少なく、せいぜいが補助や一部負担という現状なので、人間が現場に立って動きまわり、観察し、点検し、確認し、声を掛けたり掛けられたりの毎日は当面続いてゆくだろう。

それでも「この仕事が好きだ」と胸を張る若者が絶えぬように、業務の意義や価値を丁寧に広く説明し続けなければならない。
物流屋は玄人の世界。
経済の血管であり、クサビのような視えない要所。
密かに抱く自尊心こそが、我々物流人の誇りであり気概である。

真冬のヤードでそんなことを想った昨日だった。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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