物流よもやま話 Blog

実感わかぬ師走の始まり

カテゴリ: 余談

奇妙さを通り過ぎて怖くなってしまうほど一年間が短く感じる。
光陰矢の如しを心底実感しているこの数年なのだが、年々その思いは強まるばかりだ。
師走のこの時期、幼少期には「♪もういくつ寝るとお正月」などと口遊んだのだろうが、今では「♪もういくつ寝るとお葬式」と呟いてしまいそうだ。

いわゆるジャネーの法則なるコジツケ理屈によれば「1年の長さの実感は、1歳児を基点に年齢分の1となってゆく」となるらしい。経験による主観的記憶がもたらす体感時間の短縮、、、という心理学的説明をぼんやりと憶えてはいるが、正確か否かについてはあやしい。
そのコジツケに従えば、生後から1/20まで短くなった新成人たちの1年間の経過実感が、還暦時にはさらにその1/3となってしまう。私が青年期に比して1/3強しか1年間がないように感じてしまうのだとしたら、正月を終えてから瞬く間に師走に至る実感にも合点がゆくというものだが、比較の起点時の記憶が定かではない今となっては「なんとなく納得」ぐらいがせいぜいだろう。

しかし、、、はたして本当なのか?
60歳の大人は1年を60回経験しているので、10歳の子に比して6倍の経験値があり、それゆえに新たに記憶すべき時間容量が少ないので1年間が短く感じるのだとか。
そんな理屈で脳内記憶量を経年に反比例従量としてよいのか?と大いに疑問が残る。しかしそれを論理的に反証したくても不肖ワタクシでは激しく役不足である。
なのでここは、、、チコちゃんに質問のお便りを送ろうかと思っている。手前味噌ながら結構いい問題になるのではないかと密かに自賛してみたり。
「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と番組以前にセルフツッコミしそうだが。

老若男女問わず、そんな法則など通じない長く辛い2年間を経て、やや回復に転じつつある国内消費。と、皆で前を向こうとした出鼻に新種変異株の出現を突きつけられた今なのだが、各所での人流制限の影響が暮れの繁忙にブレーキをかけそうな気配を案じている。
本来なら「あちらこちら手を尽くしてもトラックが手配できない」という、年末恒例の貨物難民の悲鳴や、連日の出荷過多でヘトヘト状態の倉庫作業者たちのげんなりした顔を今年は目にすることができるのだろうか。現場の混乱や波動は少ない方がいいに違いないが、師走の繁忙は物流業界の風物でもある。
「最後まで忙しかったけど、これで年始から2月までの閑散期の凹みを埋められるだろう」という安堵のつぶやきを吐きつつ1年がつつがなく終わったと思える。
今年の暮れもそんな光景があちこちでみられるなら、嬉しいかぎりだ。

年明けを待つまでもなく望むことは、読者諸氏同様に消費回復だ。
国内企業の多くは平均賃金が上がらず、中高年層の早期退職勧奨が増加していることからも明らかなように、雇用状況の実態はお寒いままだ。しかしながらそんな概況とは裏腹に、特定業種では経営や実務管理者人材と現場労働力の慢性的な不足にあえいでいる実態にも注視いただきたい。たとえば物流業界などはその典型だ。
転職希望や求職中の若年層から中高年層に至るまで、業種や職種への偏見や思い込みを今一度リセットするつもりで、希望業界などの再検討を是非お試し願いたい。人手不足以上に人材不足な業界は少なくないので、求人誌の読み飛ばしてきたページやジャンルを再検索してみてはいかがだろうか。

手前味噌になるが、わが物流業界は知られざる魅力も数多くあるし、今後の事業競争力向上や経営成熟度が求められる業界でもある。言い換えれば、物流に人的投資ができない企業は競争力に劣り、時流に沿った変革や進化を遂げられず、いわゆるガラパゴス状態のまま淘汰されてしまうからだ。強い企業はすでに物流機能の自前設計を戦略化しているし、その流れは内製化か委託かの別なく増加の一途になる。
ゆえに今以上に人材不足となることは必至で、学歴・職歴・肩書などの履歴体裁よりも地頭の良さや着眼の正当さこそが人物評価の要点になるはずと考えている。

雇用が増えて、人材が育ち活躍し、業績が上がる。
そうすれば企業間での人材獲得競争が発生するので、賃金水準は自然に上昇基調となる。業界とその所属企業の生産性が上向けば、雇用需要は途切れず、結果として賃金上昇が生まれて、消費へと繋がってゆく。
教科書通りの理屈だが、揺るがぬ正攻法でもある。
少子高齢化による人口減少が進むわが国では、総量の減少は避けられない。
その条件下で肝心なのは歩留まり、、、つまり一人当たりのGDPの維持である。個人や企業の生産性堅持が叶えば、そんなに悲観することはない。
国を樹に例えるなら、樹勢は盛りを過ぎて枝ぶりも小さくなったが、果実は美味のまま潤い豊か――のような体を目指すべきと考えている。
そのような国勢下にあって、物流業界は典型的な業界となれる。私をはじめ数多い物流人たちが同じように信じているし、その姿を思い描きつつ日々業務に勤しんでいる。
この拙文をお読みになっている貴方が異業種の方なら、是非ご自身の将来を託す候補のひとつに物流業界を加えていただきたいと熱望する次第だ。

などと書いてきたが、書き始めはこんな内容にするつもりはなかったのだった。
「いやはや、早いもんでもう師走ですなぁ~。これじゃあすぐに天寿を全うしそうでやんす」などと呑気なハナシにしようと打ち始めたのだが、どこでわき道に逸れていったのか。
ふと我に返ってはみたものの、書き直す気力も体力もないので、このまま終わりまする。
毎度こんな風で申し訳ござんせん。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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