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コボットの惑星 第2章 ドラえもんとのび太

カテゴリ: 予測本質

2.ドラえもんとのび太

1994年にNEDO(現在の国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が企画し、広報・教材ビデオとして制作された『ドラえもん のび太と未来ノート』は、その主題をエネルギーから物流に代えてリメイクしても、今の時代に十分適用可能なコンテンツだと思える。
そうなると、のび太君とドラえもんの配役が気になるところだが、読者諸氏ならどう考えるのだろうか。

■ストリーテラーの常套手段
劇中ののび太君は、うっかりしたりダメだったりまちがえたり、、、まるであちこちの現場にいる「日替わりやらかしマン」のようだ。
で、困ったあげくドラえもんにお願いする。
毎度の他人任せや自己努力放棄や「どうせ僕なんか、、、」と自責しつつも最初に自分を赦すことが常でしかない、諦めという開き直りが得意な男の子。
本当のモンスターはドラえもんではない――ことに中学生ぐらいになると気付いてしまう。
のび太君という名の学習や成長を禁じられた異人は、ドラえもんという物語の中でしか生きられない空想上の産物なのだ。
子供が少しでもあんな様子になったら、周囲の大人たちは即座に諭して躾するはずだ。
自分自身の子やその他近親者なら言わずもがなだろう。

・ひとつひとつで構わないから、自分のことは自分でできるようになりなさい。
・ちょっと悩んだだけですぐに途方に暮れるのはやめて、まずは努力しなさい。
・諦めるほど頑張ったのか、感情的にならずに自分自身に問いかけてみなさい。
・独りで考えて結論を出さずに、ドラえもん以外の友達や大人に相談しなさい。

こんなことは大人になれば皆わかる。
子供たちの長年にわたるドラえもん人気は、ピーターパンと同種の現実逃避の疑似体験を楽しめるから、が同源と思えて仕方ない。
ネバーランドの類を創作するストリーテラーの厳守事項は定型化されて久しい。
それは、「毎回火を点けて、ある程度の火事となるまで待って、必死に消火にあたる」ように脚色するというのがお決まりなのだ。
甘えが生んだ依存を放置しておいて、救済する体でいいとこ取りする英雄然としたハリボテの道化――アニメでは無二の存在だが、物流現場では珍しくない。

■風車の出待ち
ご老公が危なくまるまで屋根裏でじっと身を潜めて形勢をうかがいながら、もはやこれまでか!という危機一髪のタイミングを見計らい、やっと風車を投げる弥七。
もし私が黄門様だったら、
「そこにおるならさっさと降りてきて助太刀せんかっ!あやうく死ぬところだったぞ」と目立つ手柄欲しさの傲慢極まりない忍びを強く叱責するし、申し合わせたかのように見て見ぬふりをしていた助さん・格さんにも同様に処罰を与えるだろう。
そもそもご老公が、

「助さん、格さん、少々こらしめてやりなさい」

などと命じず、最初から「葵の御紋付きの印籠」を出しておけば、無益なチャンバラなどなしに「はっ!はははぁ~」とひれ伏して一件落着するというものだ。
まこと幸いなことに、毎度毎度、どいつもこいつも悪党のわりにお人よしばかりである。
‘前(さき)の副将軍って、、ホンマかぁ~?ニセモンとちゃうんかいな’、などとイチャモンを付けることなく、すぐに信じて雷に打たれたがごとく動転しつつおそれいってしまうので、ハナシがはやくて、おあとがよろしい。
もちろんだが、ご老公の「こらしめて・・・」以降の展開は、そうでなければドラマの盛り上がりとして成り立たないということは承知している。
ただし物流現場での類似現象は見逃すわけにはゆかぬ、と口をへの字にして書く毎度だ。

■日常にある喜劇
物流現場では黄門様のドラマに似たようなことは数多い。
あらかじめ潰しておくべきミスや混乱の原因となる作業手順や環境を見て見ぬふり――もしくは気になっていながら抜本的な処置をせず、毎度トラブルを引き起こし続けている。
事が起こってから「俺に任せておけ」と出張っては、講釈垂れて対処策しかしない責任者は早々にその任を解くべきだ。
「弥七じゃないんだから、、、」と経営層が笑えない事態が起こってからでは遅い。
かように、ドラえもんや黄門様と同質の物語は世にたくさんある。

物流現場に限らず、われわれの日常にはテレビドラマよりも、もっと特殊で奇妙でバタバタして勧善懲悪風の喜劇が毎日毎時のように繰り広げられている。
あまりにもあたりまえとなりすぎて、取り立てて気にしなくなっているだけだ。

―次回へ続く―

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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