物流よもやま話 Blog

うさん臭い前提条件

カテゴリ: 本質

ずいぶん前に、
「“ウサギとカメ”のイソップ寓話はうさん臭い」
というハナシを書いた。
なんてことを急に思い出したのは、数日前に生産性の試算及び評価の前に確認しておかねばならぬ要点についての講義をした際に、たとえバナシとして取り上げたからだ。

「ウサギは俊敏横着でカメは鈍重実直」

という刷込み的決めつけから始まっているこの寓話。
訴求したい趣旨は理解できるが、別のハナシで伝えられんもんか?と思うこと多しである。
そして企業内には結論ありきの筋書きを貫徹するための、偏向気味な決めつけや都合のいい役回り、、、太郎冠者と次郎冠者のような演者が毎度登場する似たようなハナシが多い。

聴いた方々が結構納得されていたので、ハナシの一部を記しておく。

そもそも「適正」という言葉自体がうさん臭い。
何をもって適正や妥当や及第としているのかを確認してみるべきだ。
ここでいう「確認」とはその根拠となっている前提条件の検証である。
全部が全部とは言わないまでも、かなりの確率で、
「前提条件が都合よすぎる」
「前提条件が極端すぎる」
「基準値=平均値≒過去」
などの数値根拠があきらかになる。

・ものすごいスーパーマン的パート従業員が二十数人いて、しかもその人たちはそろいもそろって休憩をはさんで8時間労働の終始にわたり生産性が高水準のまま一定。

・または真逆に、ほとんどのパート従業員は一時間の中で作業しているのは30分ぐらいで、あとは一服しつつ隣の同僚と小声で世間バナシしたり、トイレに毎時間行く。

・来月もしくは来期から聖域ない業務効率化を断行すると宣言しているくせに、その目標値の根拠としているのは過去5年の平均値。
「効率化の競合は過去の自社」=「自分の影を抜き去るべき相手とすると同じ」
と利害なき第三者なら評価するかもしれない。

つまり往々にして適正という言葉を裏打ちしているのは、手前味噌で内向的な視点が生み出した足下から過去に散らばっている数値や評価である。もちろん全部が全部ではない。
自社が将来的に「どうなりたいのか」という視点でのスタートになっていないことが圧倒的多数派となっていると言い換えてもよいだろう。
対前年もしくは過去最高などの自分基準での成長や改善を、同じく自社統計値から算出した適正値で説明しようとしている限り、ほんとうになりたい姿には至らない。

「自分との闘い」は精神論的には大いに賛同する。
ただし物流のような機能部門では精神論を唱和する前に、目指すべき着地点とそのための方法論を冷静に突き詰めておきたい。
競合他社や過去の自社との相対比較ではない「こうあるべき」を明文化したら、「こうするべき」を行動要件として掲げ、速やかに実行あるのみだ。

過去の実績に敬意を払うことは当然。
しかしながら往く道に掲げておくものではないはず。
特に自社物流は内弁慶になりがちで、伝統ある優良企業ほどその傾向が強い。ガラパゴス諸島はエクアドル沖にあれば十分で、企業内には無用で不要だ。

どうか他社基準や違う測定方法の試用や採用による別角度からの視点での評価方法を検討していただきたいと切に願う。
自社が頑なに守り続けているのに、他社はすでに廃止して久しいこととは何か。
自社が止めてしまったのに他社が今も行っていることは何か。
それを突き詰めた後に、やはり現状でよいとするのなら異議はない。

わが道を往くにしても、世間を知ったうえでの唯我独尊であってほしい。
独善と独尊を混同してはならぬ、という説教くさいハナシはこれでやめておく。

こういう論については読者諸氏からの反論や同意、拒絶や肯定などさまざまなご意見があることは承知している。毎度断り書きをしてきたとおり、唯一無二の真理や定石として書いているのではない。あくまで私の手法の一部を披露しているに過ぎないので、誤解なきようお読みいただきたい。

ちなみに本稿の前段ともいえるハナシの一部を載せておく。

―――以下、過去稿を加筆修正して引用―――

日本人は「ウサギとカメ」のイソップ話が好きだが、そのハナシもどうかと思う。
そもそもウサギから「お前はノロマなのじゃ」と馬鹿にされたからといって、すぐに頭に血が上り、あげくの果てに駆けっこの勝負を挑むカメの短気さに呆れながら、
「自身の資質をすっ飛ばして、無理な勝負を挑むところからしてダメなのでは」
「“ウサギは途中で油断して昼寝する”と踏む深慮遠謀なカメ、という設定には無理がある」
と思うのは私だけなのか。
オチに向けてのご都合バナシだからこそ、とってつけたようにアホで不遜なキャラ付けされたウサギは昼寝してくれたものの、現実にはそうはならないことなど誰もが知っている。
地道や堅実の貴さを描くなら、他のたとえ話でも用は足りると思う次第だが、ウサギとカメの寓話がお好きな方々やひねくれていない素直な皆様の気に障ったならお詫びしておく。

このハナシを想うとき、ワタクシは「カメも休んでばっかりだろうが」と毎度呟く。
現実のカメは一日のうちかなりの時間をじっとして動かぬし、ウサギも似たようなものだ。
両者がせっせと動き回るのは、食い物か繁殖の相手を探す時に限られている。
メシでも交尾でもないのにいそいそと動き回っているのは人間ぐらいのもんである。

―――引用ここまで―――

しかしまぁ、何にでも悪態吐くなぁ。
我ながら呆れてしまうが、また書くに違いない。
三つ子の魂、、、ということなのだろう。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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