物流よもやま話 Blog

人が不要になる現場

カテゴリ: 経営

LOGISTICS TODAYをはじめ、業界誌やWEB記事などでは、工場や倉庫の自動化や補助ロボットなどの導入に関する情報掲載はほぼ日常化している。
物流現場の慢性的な労働力不足は、今後ますます深刻度を増すだろう。
それゆえに、各業界各企業は「人間の代わりもしくは補助」となる日進月歩の利器を比較検討し、試用や採用を始めている。
欧米に比してやや遅れがちな国内動向にも、そろそろ拍車がかかりはじめたのか、新サービスや新設備の開発やそれを媒介とした各種提携や協業の発表が盛んだ。

物流業界内でも実に多くの新システムや革新的機能の機器などをはじめとして、人間の動作をサポートしたり代替するロボットに至るまで、百花繚乱の様相となっている。
今後5年は毎年40%以上の拡大を続けるという予測もある補助・代替・協働という言葉を冠する機器やシステムを取り上げるニュースは後を絶たないだろう。
それら機械やロボットは、複雑・不規則・繊細・微妙な作業が苦手とされている。
この点についてもあくまで「今のところは」と、ことわりを付けておく方がよさそうだと思うが、詳細な理由は現在執筆中の別稿で説明するつもりだ。

時代を問わず、パラダイムシフトによる構造改変や技術革新は自然発生するのではない。
いつの時代も、生存や支配という本能的な欲求は、前提条件の変化や価値基準の変質に反応した個体や集団の間で生まれる。その結果として、強弱や優劣による幾たびかの淘汰を繰り返した果ての、均衡した状態が市場の新しい生態系となってきた。
それはダーウィンの後、数多の学者や企業人の既視体験だったはずだ。

昨今の物流業界では「新しい価値観の新しい世界」という新しさのかけらもないような謳い文句で、過去に何度も遭遇したような出来事についての議論や考察が盛んだ。
まさに「世界は繰り返す」の言葉どおり、我々はすでに知っていた、またはわかっていたことに改めて気づくという喜劇さながらのオヤクソクが大好きなのだろう。
その喜劇人の端くれたる私自身も、いろいろ書いたり話したりしている次第だが、ひとつだけ先達が残してくれた事例集に載っていない問題に悩んでいる。

それは人が不要になる状態での人の在りかたについてだ。
疑いなく序列の外に在ると思い上がり、生態系の頂点を見下ろす立場から世界を俯瞰してきた人間が、製造や倉庫の現場で不要とされることを進化と呼ぶのか否かの正誤が判らない。
多種多様な最新機器を調べている最中、不意に思い浮かぶのは、居場所を追われ、灰白の空が展がる荒野を往く自らの背景に、巨大な物流倉庫が粛々と稼働を続けている光景――ということがこのところ何度かあった。

自動化された工場や倉庫や車両内で、無言のまま座して、監視・管理・制御という役割をこなしているだけの存在。人間はそんな静止物と化してしまうのか?
などと思いながらも、即座に否定することを何度も、何度も。
では、自動化の時代に人間の役割は何なのか?

全部はわからないまでも、物流業務については予測し理解し納得し、やはり結局は覚悟し。
という無限循環さながらの自問に疲れては、思考停止してしまう。

今回の原稿も毎度の似たような終わりとなってしまった。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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