物流よもやま話 Blog

社内ルールと世間のズレ

カテゴリ: 経営

今回の首相辞任劇で、強く印象に残ったのは「組織内理論や力学と世間感覚のズレ」だった。
それは今に始まったことではないと承知していたはずだが、「政治の世界の特異性と似たような事態が自分自身の生業においても頻発するなぁ」ともしみじみ思った。

以前、下記のようなハナシを書いた。

物流現場の「地震みち」

上記原稿に加え、捻じれたり曲がったり断絶したり外側から眺めようとしなかったり、、、は物流現場で現象として顕在化するが、その原因や始まりは別の場所にある。
そこを突き詰めていくと社是や創業の精神という絶対的価値に行き着くのはよくあるハナシ。
外部者たる私としては直面した「聖域を守る壁」に背を向けて引き返すのが常だ。
経営トップから忌憚ない指摘を求められた場合のみ、言葉を選んで進言することはあれども、是々非々の外にある理念に頼まれもしない正論吐くのは稚拙というものだ。
なのでむなしくもありさみしくもあるが、それが生業の本質なのだと納得している。

与えられた条件の中で最大効果を得ることが私の責務なのだから、前提条件にケチをつけるのは見当違いで筋違いで立場の勘違いでしかない。社是や創業の理念はその企業における掟でありルールなのだ。その規範に文句たれるなら、物流改善という戦に加わらねばよい。
そもそも、企業の経営理念や事業方針に直結するような構造改変や進言など誰も私に求めてはいない。思い上がって出過ぎるのは禁忌だと自戒しているつもりだし、なによりもそんな能力など持ち合わせていないことは自覚している。

その一方で、正論が報われる時機の到来は、企業の業績低下や不祥事発生というあまり好ましくない状態であることがほとんどである。つまり企業の規範や価値観に基づいた事業が世間の欲求を満たさぬようになってゆく過程において、既存の物流作法とその評価に見直しが入る。
販売全般に係る事業の上半身の健康診断や体力測定などに併せて、下半身たる物流や管理の機能評価がなされる。
その結果として、雨降って…や、災い転じて…のような事例も少なくないので、そういう機会に遭遇すれば今まで「一応伝えた後にひっこめてきた」正論が通ることもある。

ささやかな経験則に過ぎぬが、気張って強弁に走らず、根気強く何度も何度も同じことを穏やかに訴え続けることが肝要、というのが私なりの正攻法となっている。
短気と癇癪は得意技であるが、こと物流の体質改善についてはじっくり待つことが身についている。でないと結果が出せぬのだから、不得手ながらも時機を待つしかない。
あくまで係わりのあった自社物流についてのハナシなので、物流関連全般について類推できるものではないことも添え書きしておく。

いきなりの直言であっても「正論=正義」となる企業もあることは事実だが、概して若い企業に多く、創業からの年数が長くなればなるほど比率は下がってゆくように感じる。
私は「正論=正義」の是非を判じる立場にあらず、その因果が企業の総コストの負担者である消費者にどう及ぶのかについては俯瞰的統計を持たぬ。
なんとなく「正論=正義=顧客利益」という等式が成り立つとは限らないような気がするが、読者諸氏はいかがお感じになっているのだろうか。

そんな事業会社はけっこうあるのです

書いているうちに上記のハナシを思い出して、過去掲載から探してきた。
併せてお読みいただければ、お伝えしたいことの輪郭が浮き出るかもしれませぬ。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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