物流よもやま話 Blog

すぐれた物流作法に国境はない

カテゴリ: 予測

市況も戦況も混迷のままの世界情勢だが、米国の様子をうかがっている限りは、円高傾向が強まることに疑いはなさそうである。第一次トランプ政権時の1$=110円前後まではないにしても、現状からさらに10~20%ぐらいの円高進行は考えておくべきだと勝手に思っている。
あくまで予感的夢想的な見立てであるから、真に受けたりせぬよう願います。

トランプ関税によって世界中の企業が対米輸出品の製造拠点を米国内に移設か新設するのかで悶々としている。その因果として物流拠点の再考も同時発生することになる。
今回はたまたまトラさんの無理難題やら支離滅裂やら朝令暮改やら一喜一憂やらでひっかきまわされているので、「対米国」ばかりに焦点が当たりがちである。
しかしながら、降って湧いたようなトランプ台風が襲来せずとも、わが国の事業会社は「物流拠点どうする?」の問題を真剣に考えねばならぬ段階に至っているのだと思っている。

少子高齢化で人材不足・人員不足が悪化しつつ慢性化するばかりの国内事情とも相まって、製造や物流のような労働集約型業務の在り方についてを不安視する事業者は多い。
私自身、関与先には「今以上に国外販売が活発化して、利益増加が見込めるようになったら、躊躇なくメイン倉庫を海外においてください」とことあるごとに言い続けている。
主戦場がどの国になるのかによって事情は異なるにしても、人口増加と内需拡大が見込める国に物流本拠を構えることは経営的には定石として疑うまでもない。

読者諸氏ご承知のとおり、海外展開しているわが国の製造業の大多数が得ている利益の多くは、実は「配当」と称してその95%を非課税計上(現地での税引後利益に再課税しない→二重課税回避策)できる「海外現法からの利益送金」である。
つまり円安ならばその為替差益効果がより増加するわけで、コロナ禍収束後の経済回復とともに増加に転じ始めた国外事業の利益の増幅効果をもたらしてきたのは他ならぬ円安だった。

上述したとおり第一次トランプ政権時なら利益1万ドルは円換算で110万円だったのがこの数年は1万ドルが150~160万円、、、つまり4割増ぐらいの為替効果を得ることができた――そりゃ儲かるだろうし、思い切った「賃上げ満額回答」もできるというわけなのだ。
ちなみに日本国内だけの収支を切り取れば、よくて「ちょっとだけ利益が残る」、「ちょい赤かトントン」という事業者が過半となるようだ。
ご興味ある方は世界企業と評されているいくつかの決算書をご覧あれ。
「うーむ、、、これじゃあ先細りが眼に視えている国内には投資せんだろうし、主力部隊は海の向こうに遣るわな」と唸りつつ納得されるはずだ。
製造や販売が動けば物流も同調するのは道理なので、先を見据えている事業者は海外拠点の選定や設置を急いでいる、、、というニュースがきわめて少ないばかりか、事業者側の広報も消極的としか思えんのは私だけなのだろうか。

国際規格コードで作成された商品マスターが在れば、物流業務に言葉は要らぬ。
合理的な業務フローと簡素で短絡な作業手順があれば、無言とまでは言わずとも、カタコトや手振り身振りでも業務コミュニケーションは可能になる。
優れた物流作法は人種や性別や年齢を選ばない。つまり国境は妨げにならぬということだ。
なので事業者が単純明快に考えさえすれば、物流拠点の海外移設や新設は叶うはずだし、現にその動きが活発化しつつある、、、があまり話題にならないのだ。

なんでだろか。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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