物流よもやま話 Blog

みんなの記号;物流業務の規格化

カテゴリ: 予測

「 ¬ 」
この記号をご存じだろうか?
ややこしい並びになってしまっているが、鉤括弧の中にある¬を指して問うている。
「縦書きの時の「」の上側にくるやつ」とかではなく、横書きの際にも使うらしい。
一般的なライティングソフトなら「特殊文字」の中にある。
とはいえ、見たことがあるようなないような、、、もちろん意味など知る由もない。
記事を書いている最中、誤変換して初めて「なんじゃこりゃ?」となった。
変換時に打ち込んだ文字は「ひてい」。
求めた漢字は「否定」だったが、変換キーを二度打ちしてしまったのか、「¬」が表示されたのだった。
早速調べてみると「not sign」と出てくることが多い。どうもUnicodeとかいう記号群の一味らしいが、、、それが何なのかは知らぬ。
世界中で共通規格化しているようなので、ここで用いても問題ないようだということぐらいしかわからない。みる人がみれば「あたりまえ」の記号であり、もはや様々な仕組みの基底をなすものとして根付いているのだろう。
(注意書きには、¬を含むいくつかの記号に変換時の問題があるとの説明あり)

というわけで、今回もコジツケ大王の物流ブツブツ・ブログが始まるのだ。
冒頭の記号をはじめとする、プログラミングなどで共通化されているものと同様に、物流現場での業務指示や掲示の共通認識記号とその意味・文字表記を統一して運用できないだろうか?
なんていう思い付きと単純な自画自賛で書き始めたのだった。

物流業務には統一された作業表現とそれを説明する文字・数値の共通規格が存在しない。
正確には「存在しなくなった」である。
業務種別が少なく、没個性で標準化しやすい要素が多い。
したがって、かなりの部分を規格化できるはずだが、一向にその気配はない。
業界団体などが旗振りになってやればよいと思うのだが、はたしてそんなことを考えたりする人材がいるのか不明であるし、現状ではあまり期待できそうもないと感じている。

「日本工業規格」を参考にして「日本物流規格」(JLS:Japan Logistics Standard)を作ればよい。
物流KPIの運用と普及に大きく寄与するはずだし、本来は物流標準規格制定が先行すべきだったのではないかと思う。
JISに比して適用対象が狭いので、現状の実務に即した規格制定と運用が可能となるはず。
そうすれば往々にして眉唾物の「平均的」「統計的数値」「基準値」「コスト評価」、などの統一根拠なき指標や数字の氾濫に歯止めをかけることができそうだ。

危惧するのは、音頭取りの面々が奇妙な権威付けを先行させることだ。
仰々しい囲いを作って、重くて大きな扉を取り付けたりするが、得てして扉の向こう側はがらんどうで空虚だったりお粗末だったりする。
苦労して入った者は期待を裏切られ、落胆するだけに終わることが多い。
そんなことを回避するためにも、完全なオープンソースでフリーアクセス・フリーダウンロードできるような仕組みを運用するべき。
国土交通省が監修して、各ブロックの運輸局に監理させ、業界団体は準拠の後押し役に徹することが望ましいかもしれない。

たとえばだが、現状流布の言葉を思いつくまま適当に書き出してみた。
「入荷料」「入荷費用」「入荷処理料」「入庫料」「入荷検収料」「入荷手数料」「荷受料」「入荷作業料」、、、全部「入荷」にかかわる作業項目の名称であり、他にも微妙な違いで多数存在する。
記された項目が指し示す作業の内容が一致しているのか否か?
は、それぞれを聴き取り確認しなければならない。

作業内容についても、物流会社によってさまざまな区分と表現を用いる。
入荷以外の作業項目についても同様であるし、それらの組み合わせによる見積書や請求書のバリエーションは数多すぎて把握不可能だと思う。
自社物流なら「料」「代金」などの文字が付かない作業名称をそれぞれの企業が自社内の仕事言葉として通用させている。
もはや統一や標準や規格などからは程遠い現状である。
複数の倉庫会社から委託費用の見積提出を受けた経験がある方々なら、見比べにくいことこの上なかったはず。
大項目の中に並ぶ各行を「なんとなく該当するのでは」という想像ぐらいしかできないので、結局は総額での比較検討で判断したというのが実情ではないだろうか。

わかりにくいことは有無を言わさず「悪」である。
混とんとして野放図も「悪」である。
比較検討できないことは間違いなく「悪」」である。
その感覚を共有し、実情への不満解消への方途模索に賛同する企業は多いはずだ。

具体的な案をまとめているわけではないが、たとえば各業務要素にかかわる全作業を種別規定し規格化する。そして該当する文字と識別記号を公式に決定する。
見積書だけでなく、業務フローの設計時にチャートや図表で必ず使用するように啓蒙する。
それが浸透すれば、その作り手は内容のみに集中して作成すればよいし、読み手は違う会社の提案書や見積書を同じ定規ではかり、見比べできる。
物流関連のソフト設計会社も準拠するように規格運用組織が徹底して依頼と実運用の調査を行う。
普及のためなら「お上のご威光」を借りてでもよいではないかと思う。

今後も切迫の一途となる企業経営のコスト管理と評価に大きく寄与する仕組みと信じるので、まさに「お上のご威光」をピカピカ光らせていただきたいと願う。
お役所の事務方の処理能力は非常に高い。
着手前に作成するべき内容の趣旨と目次をきちんと整え、運用効果の着地点を明示すれば、すばらしい規格の原案が出来上がるに違いない。
結果として、荷主企業は正確な「相見積もり」の入手が叶う。
毎度毎度のお願い事だが、アイミツ前にせめて自前の業務フロー設計とそれに応じた原価企画は最低限整えておいていただきたい。
内製・外部委託の別を問わず、経営マターとして取り扱うにあたり、物流部門が用意すべき基本事項であるので、普段からその整備と検証に注力されるべきと進言する。

それに加えて、見積提出企業の業務提案・コスト作成能力の選別効果も期待できる。
正しく比較されることこそが本望、というまっとうな企業だけが参加すればよい。
旧態依然とした「弊社の見積作法」をごり押ししたり、そう書かないと不都合でもあるのではないか?と勘繰られるような書式や表現にしがみついている企業は市場参加できなくなってゆくだろう。
共通規格を制定・普及・運用するだけで、荷主企業の享受する利便ははかり知れない。
中身以前の曖昧さや不透明さがなくなるので意思決定までの時間が短縮される。
もちろんだが、最初から100点を目指す必要はない。規格運用で情報提供する側と情報閲覧側(荷主)双方の認識や感覚のすり合わせに一定の時間は必要だからだ。
オープンソースにする理由はそこにあって、多方面から改善や運用結果の情報提供が寄せられることで、規格自体の成長と完成度向上、運用サンプルの集約と開示が可能となる。
巷のソフトや機器のサポート情報によくみられる「Ver.19.07」的な表現で更新されてゆくようなイメージでよいのではないだろうか。
まずは始めることを最優先して欲しい。
評価についてのさまざまな意見が出るだろう。
それこそが規格化の大きな効用であり、議論の活発化と運用の共通語への意見集約が進む。
いったん弾みがつけば、あとは自然に成長してゆく。
規格管理団体の責務は、趣旨からの逸脱や偏向を排除することであり、定期的な改変の準備作業を担うこととなる。
理解と受容、反映と普及を旨とする一方で、監視と排除も必添項目としなければならない。
規格品質の管理のために不透明や我流や不準拠に対して「 ¬ 」を押し通す意思が貫かれるなら、事業会社にとって拠り所となるありがたい仕組みが出来上がる。

しがない物流屋の取り留めない独り言。
しかし、そんな声が少しづつ増えることを期待している。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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