物流よもやま話 Blog

移り変わる現場の色

カテゴリ: 実態

物流現場は殺風景。
というのが昭和から平成初期の常だったが、それ以降――21世紀になったあたりから現場の景色に変化が目立つようになってきた、、、と記憶しているのは私だけなのだろうか。

まず床の色――濃いグリーンやグレーから淡いベージュやペールブルーが増えはじめた。
中には高コストながら仕上がりが圧倒的に美しい淡色のカラーコンクリートの床もチラホラと目にするようになった。(貸し倉庫では極めて稀。“ぱっと見カラコン風”が多い)
「カラコン床は新装時に女性のスカートの中が映り込むので注意」
なんていう冗談とも本気ともつかぬハナシが、、、真偽のほどはご自分の眼でご検分あれ。

床が色鮮やかになれば、当然ながら棚もそれなりに。
一時期流行ったのは「淡いサンドベージュのカラコン床に黒のスチール棚/ネステナー/パレットを置いて、棚番・ロケ番や通路番号の札は黒地にオレンジかその反転か」だった。

私の記憶ではZOZOTOWNの物流センターの画像が公開されたのを機に、猫も杓子も「黒×彩度の高いオレンジ」という組み合わせをそっくりそのまま真似ていたような気がする。
が、新装時の状態を経年維持できる現場は稀。
ほどなくしてモダンで整然とした設えが徐々に崩れ始める。
たとえば、、、

コピー用紙に手書きの掲示がガムテープで斜めに傾いて貼り付けられ、しかも剥がれかかってぶらぶらと揺れている。

小汚い使いまわしたカートンにビニール袋をかぶせただけの不揃いなごみ箱が通路に出張っていて邪魔。なだけでなく、雑多な観が目について印象がとても悪い。

脚立やハンドリフトが動線のど真ん中に放置されているにもかかわらず、使った本人を含め誰ひとりとして収納しようともせず、わざわざ避けて通り抜けるだけだったり。

――所詮うわべだけのモノマネ。意匠を丸ごとパクる輩たちのお里が知れるというものよ、、、と嘲笑されたのは言うまでもない。

次に庫内の景色に変化が見られたのは非正規従業員への制服装着の普及だった。
黒や赤などの原色に会社ロゴをプリントしたTシャツや上着の全員着用による「庫内統制の一環」としての内規が策定されるようになったのもこのころからだった。
それに準じるかのように、台車・作業台・リフト類のカラーリング統一も行われ、今まで暗色無機質だった物流現場が一変した。

外資系ファンドがけん引する空前の倉庫建築ラッシュでコンクリート造の美麗な大規模倉庫が大消費圏近郊に大量供給された平成後期。
建家内部の広大な灰白の無機質空間に原色系のカラーリングが鮮やかでモダンに映えるサンプル画像が宣伝され、庫内デザインを重要視する傾向に拍車がかかった。

写真映えする物流倉庫の内外装や敷地内もしくは建屋内に併設された洒落た内装のコンビニやカフェテリア、ミーティングルームや託児所などの付帯施設や設備の充実が、
「今からの物流倉庫はこうあるべき」
「オフィスに劣らぬ労働環境はエッセンシャルワーカーへの敬意とふさわしい待遇」
「顧客をはじめとするステークホルダーにも好印象を与える」
「求人誌面へ掲載することで他社と差別化できる」
というデベロッパーの謳い文句となって一般化していった。

しかしながら現実は甘くなかった。
着工前からテナント募集したにもかかわらず竣工時に至っても床が埋まらない。
目玉のひとつだった託児所は想定した利用者数に大きく足らず、同じく想定よりも職員の確保が難しかったため開所に至らず事業プランがとん挫。
コンビニやカフェテリアも予定売上どころか売上保証額の補填に耐えられず契約解除もしくは出店取りやめとなる倉庫が続発したのは読者諸氏ご経験もしくは伝聞のとおりである。

次いで庫内風景を一変させる動きとなったのはコロナ禍の数年間と少子高齢化への対処として掲げられた自動化やロボットや機械による省人化である。
「自動化によって画期的な大変革が起こると聞かされていたが、庫内の景色が少し変わり始めたところで計画中止となって、今では数年前の庫内と似たり寄ったりですよ」
という事業者の声はあまり取り上げられない。
つまり洒落た色の棚やTシャツほどには庫内の景色を変えることができなかった――というのが「自動化やロボットの急速な普及が庫内を一変させる」というハナシの末路だった。

なんていう少子高齢化コワいコワいビジネスにかかわる事業者やメディア連中が「スンゴイやつありますよぉ~」と念仏のように唱えていた未来ロボット君や自動倉庫設備よりも短期間かつ広範囲に庫内景色を変えてしまったもの。
それは現場で履く靴である。
いまや庫内ではランニングシューズが大勢を占め、その色彩も鮮明化している。

多くの現場では、
「制服として支給貸与しているのは上半身分のみで、下半身着衣については自前」
が多数派を占める。
なのでそういう現場では、従業員各自がそれぞれに好みの品を身につけて業務にあたる。
そして明らかに多数派を占めているのは、
「チノパンかデニムもしくは濃色のスパッツに緩めのひざ下丈パンツかトレッキングパンツ」×「蛍光色のラインや模様が鮮やな厚底ランニングシューズ」
である。

棚振りやピッキング中のスタッフの足下では鮮やかで華やかな模様が踊る。
ちなみにブランド別の人気順位は「ショーヘイ効果が現場にまで」というのが個人的感想であります。

デザインにとどまらずシューズソールの技術革新は現場スタッフにも恩恵があるようだ。
「この靴に替えてから脚の疲れが軽くなった」
と笑顔で話すスタッフが多いのだとか。

そんなハナシこそが一番うれしい倉庫内の景色と雰囲気だと思う。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

最近の記事

アーカイブ

カテゴリ

お問い合わせ Contact

ご相談・ご質問等ございましたら、
お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせフォーム