物流よもやま話 Blog

お弁当にも高温注意報

カテゴリ: 実態

現場メシについては過去にもたくさん書いてきたが、楽しいハナシが多かった。
しかしながらこの数年来は「現場での食中毒もしくはそれと疑わしい事例」が看過できない状況になっている。社食や弁当類の別はあれど急増していることは明らかだ。
「原因は尋常ではない高温」に違いないとはいえ、対処できること・対処できないことの実態と事情のばらつきが大きいゆえになかなか抜本的な改善ができていないと聞く。

手弁当派や購買品持参型の従業員の多くは、それらを自分のロッカーに収納して就業する。
モンダイはその保管場所の温度と保管物自体の内容である。

まず保管場所の温度だが、理想は冷蔵庫で保管であることは言うまでもない。
夏季ならば「一定以下の低温で保管されたお弁当を電子レンジで温めて食する」という設備環境があれば、保管温度起因の食品事故はほぼ防げるはずだ。
私の知る限り、現場の最多パターンは「更衣室のロッカー内で保管していたお弁当類を食堂にある電子レンジで温めて食べる」だが、モンダイは「ロッカー内の温度」である。
更衣室までキンキンに冷房が効いて寒いぐらい、、、なのでロッカーの中も冷蔵庫のようにヒエヒエ――なんていう施設はもはや皆無に近いはず。
更衣時間帯のみ運転するエコ空調や人感センサーなどによって、無人の場所は電気設備類が停止する建屋内が主流となりつつあるし、その流れは合理的で正しいに違いない。
出勤と退勤時間が定まっている事業所ならばなおさらに効果的である。
が、電気設備が停止したままの場所に残置されるお弁当類はタイヘンよろしくない環境に数時間さらされたまま、主の口に入るのを待っていることになる。

さらには保管物の「傷みやすさ」も大いに影響すると栄養士の方に教えていただいた。
売っているお弁当類や冷凍食品はある程度傷みにくく加工されているものの、近年の添加物忌避傾向によって昔ほどの防腐力・抗菌力は期待できないとのこと。
なので手作り弁当同様に素材とその保管環境には注意が必要なのだ。過去にはおかずの定番だったものが今でも安全好適品とは限らず、各家庭なりのお決まり品にしてもしかりだ。
(素人説明は過不足ありそうで心もとないゆえ正確な情報は検索して確認願う。「お弁当・傷みやすいおかず・傷みやすい素材」あたりの言葉を組み合わせてお調べあれ)

大型の冷蔵保管庫を用意せずとも、
・午前中のみ更衣室の空調を切らずにおく
・空調の効いている現場事務所内にお弁当棚のような保管スペースを設ける
のように、各所なりのちょっとした工夫で防げる事故は多いはず。

近年は弁当持参者の増加が顕著だが、保冷バックや弁当入れに保冷剤添付、自然解凍する冷食おかずや冷凍弁当による変質防止など、現場メシを安全に楽しむ働き手は多い。
しかしながら、皆が毎度抜かりなく気を付けて、とはゆかぬようで、
「ついうっかり保冷剤を入れ忘れて」
「室内だから大丈夫だと思っていた」
「今まで一度も食あたりしたことがなかったので」
のような事後コメントはあちらこちらで日々発せられている。
こうなると人員管理上の付帯事項として「持参弁当類の保管環境整備」がに追加されそうだ。

実際には傷んだ食品を口に運ぶことなど稀でだろうし、異臭や口に入れた際の違和感で吐き出すことがほとんどなので、傷んだ弁当類の数=食あたりの人数、とはならない。
それはそうとしても「せめて食事の時間ぐらいは気がかりや心配ごとなく、のんびり楽しく過ごしてほしい」と願うので、事業者側で環境整備を進めていただきたいのだ。

事業所側が食堂などに保冷バッグや大型クーラーと相応の保冷剤を用意してもよい。
ちなみに保冷バッグや小型のクーラーボックスの進化はめざましく、軽量で高性能な製品が数多く発売されている。日常使いの普及品ならば値段もさほど高くはない。
使ったことがない方は検索されてみてはいかがだろうか。
けっこう重宝しますぞよ。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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