物流よもやま話 Blog

できなかった案件

カテゴリ: 余談

営業倉庫にいた頃の記憶から消えない仕事。

それは圧倒的に「できなかった案件」が占める。
単純に見積負けしたり営業負けしたりは悔しさを芯とする「わすれまじ」なのだが、そんなのは少しばかりしかなく、残りの大半が「したいけど無理だった」だ。
泣きながら撤退と胸中しんどかったものばかりが記憶に残る。

一定の与信チェックが済めば次は仕事の中身と利益目論見の整合可否。
業種や業態やその企業についての将来性を勘案してではあるが、見積段階での予定利益率はある程度の幅に収めなくてはならない。
先方の好感が伝わり、意気に感じてこちらも頑張ろうとする。項目別に作業工数や内容を見直して、なんとか目論見として成り立つように調整してみる。
しかし、必ずしもそれが報われることばかりではない。営業職なら誰もが経験することだ。
特に最終決裁を担う立場であれば、情や己は排して数字を判断する。
自社の経営を維持する義務と責任。
自分で設けた社内規の営業利益率を無視することはできない。
立場とは率先垂範を貫いてこそのもの。個人的な志向・好悪や価値観は抑制しなければ。

それゆえに見送った。

このトップは素晴らしい。
しかしこの仕事は請けられない。請けてはいけない。
顧客利益と自社利益の折り合いがつかない。
工夫や努力では到底寄り付けない。
並び立ち、同じ方向を目指して仕事をするのが物流会社の本懐。
と、言い続けてきたくせに、やっぱり対面してしまう。
差し向かいで高い廉いを折衝する。
その企業が伸びれば、もしくは健常なまま続けば、寄生する物流会社は食える。
だからといって、とりあえず契約、料理はそれからでも、なんていう陳腐な営業はしない。
契約して半年や一年で「値上げを認めて頂かないと、お約束した内容の業務が続けられません」とは口が裂けても言えない。
同業他社にありがちだとよく聞いたが恥の感覚が違うのだろう。

ロジ・ターミナルを始めたのは、お客様と自社の組み合わせが悪くないなら、規模の大小、契約金額の多寡は問わないで仕事がしたいと思ったからだ。
もちろん、手間がかかれば高くなるし、そうでなければ廉い。
極論言えば、「月3万円で何でも相談しておくんなまし」も、ありだと思っている。
相談と回答では実務は動かない。
が、そうすることで気強くなったり、迷いが減ったりするのであれば、その役目を務めさせていただきたいと思っている。

しかしながら、大人数でやる気は無いのでキャパが小さい。
結局はお待ちいただくか、見送らせていただくか。

ん?

結果的には前と同じか。
それじゃダメじゃん。

考えよう。
もうちょっと考えよう。

よーく考えよう。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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