物流よもやま話 Blog

届いたマスク・届かないマスク

カテゴリ: 余談

あんまり書きたくなかったが、内輪から何度か催促されたり、「それにしても届かないなぁ」と個人的にも首を傾げたり。
だったので、ちょっとだけアベノマスクのハナシを、、、
だけではなく、その後の検品にまつわるあれこれまで、の今回である。
ちなみに我が家には5月15日に届いたが、奈良市やその他地域には5月28日現在未配のまま。
てなことを言っている最中、今週月曜日の5月25日に緊急事態宣言が全面解除された。

今回のマスク配布が決まって、真っ先に思い浮かんだのは「コスト」についてだった。
即座に「JPが見積もる入出荷の荷役と配達を合わせた1個口あたりのコスト」を試算した。
施策の発表当初は、JP指名のみで「タウンプラス」の利用決定までの広報はなかったと記憶している。ひょっとしたらノートに試算した当時、既報だった可能性が否めないが、私は承知していなかった。ゆえに送料に関しては実際の固有サービス種別名をあてていない。

ひと通りの想定各パターンのコストは、電卓があれば3分程度で算出できる簡単な内容であり、その後日に開示された総額から割り出した実コストと大きな乖離はなかった。
つまりJPは常識的な作業単価に基づいて見積算出し、荷役と配達を請け負ったと判断できる。巷の一部報道にあるような「特定人脈の情実」や「利権がらみの粉飾」などの存在は、政府発表の「物流・梱包」の費用に関しては無縁だったように思う。

私の試算時の前提条件は、集約拠点(各地の地域区分局)内での入荷処理と仕分・包材への封入、宛名ラベル貼付の有無別の組み合わせに配達コストを加算する中身だった。
実際には「タウンプラス」が採用されたので、実状としては郵便局が行う全戸ポスティングとなった。

試算時の政府発表情報。
「運送・梱包」費用は64億円。配布総数は約5500万 → 概算@116円/1個口の配達
(試算の便宜上、1世帯=1個口=1配達数、とみなしている)

机上の雑記ノートに残っている4月初旬頃に行った私の試算は以下のとおりだった。
掲載の便宜上、図表化して一覧表示したうえで、その下に説明書きを加えている。
(想定人件費:時給@1600円・労務費込み ※管理者の人件費は考慮していない)

 

【マスク出荷の作業単価と送料の概算予想表】

 ※2020年4月上旬、政府発表の概算予算と関連情報から作成

 

【1】包材に封入された状態でJPへ納品される場合

・入荷検数料5円/個(別人ダブルチェック)
※もしくはカートン口数検数のみで無料扱いの可能性 (誤差許容)
・地域別仕分料→5円/個
・宛名ラベル発行・貼り付け→35円/個
・送料→80円/個(世帯)※特別料金を想定

一世帯あたりの概算コストは125円。(バラ検数なし・カートン口数検数無料なら120円)
国難時の特別料金適用にしても人件費は割増必至。特急料金として一件あたり10円を割増。

この条件なら135円が荷役・配送コストになり、5500万世帯に配布なら、
【1.1】135×55,000,000=74.25億円

バラ検数なしなら130円が一世帯配布コストとなり、
【1.2】130×55,000,000=71.50億円

 

【2】マスクがボウルもしくはバラでカートン入荷。包材への封入作業ありの場合

・入荷検数なし
・包材封入費用→40円/件
合計では【1.2】より40円アップ

この場合には一世帯あたり、130+40=170円となり、
総コストは93.50億円

 

【3】包材に封入した状態でJPへ納品され、宛名ラベルなしで配達される場合

・入荷検数料5円/個(別人ダブルチェック)
※もしくはカートン口数検数のみで無料扱いの可能性 (誤差許容)
・地域別仕分料→5円/個(庫内作業ならピッキングに相当すると想定)
・特急作業割増→10円/個
・送料→60円/個(世帯)※特別料金を想定

一世帯あたりの配布コストは80円。
総コストは44.00億円

 

【4】バラ入荷で包材に封入し、宛名ラベルなしで配達される場合

宛名ラベル発行・貼付なし→【2】から▲35円/件
送料60円/個(世帯)→【2】から▲20/件

この場合には一世帯あたり115円。
総コストは63.25億円

 

本日5月29日現在、政府発表の「運送・梱包」費用64億円の内訳である梱包作業明細が不明。
タウンプラスにしても、《定形外・100-200g・5000個以上》の定価・45円/個を適用したのか、特別急配単価を設定したのかさえ承知していない。(私が知らぬだけなら申し訳ない)
ゆえに上記4つの設定の答合わせができない。

政府発表までは、【3】か【4】に近いのではないのかと予想していた。
多少の配布ロスが出ようと、最優先されるべきは一刻も早く国民の手もとに届けることなのだから、手間とコストのかかる世帯主宛名ラベルを貼って、正確な「1世帯1セットづつ」を厳守する必要はないはず。したがって、「宛名ラベルなし」という選択肢に絞られた。
(正解は「宛名なし」だったが、4月の試算時には、使ったことのないタウンプラスを選択肢として想定することができなかった。)

さらには、仮に【3】だったならば、複数の製造元がJP指定の包材に封入梱包のうえ納品となる。そこまでの仕上げを海外のさまざまな工場などに統一基準で作業させることには無理があるのでは?というのが正直なところだった。
やはり【4】に近い作業内容ではないのか?と式なしの答のみが公開された今は、外野から小声でブツブツ言っている次第だ。

併せての本音としては、緊急対応したJPの人員確保の苦労を想えば、もう少し単価アップしても十分に理解の範囲内だと思う。
というよりJPでなければ全戸数にくまなく配布するということは不可能だったに違いないし、郵便業務の処理能力と世界一の正確性を十二分に駆使しての入荷から配達完了だったはずなので、心からの労いの言葉と大きな拍手で称えたい。

その玄人の仕事に水を差すような出来事の仔細は書くに及ばないだろう。
不良品の発生、返品回収、再配達、未発送品の検品である。
それについての批判やコスト負担の責任についても、もはや述べるまでもないので割愛する。

ここで強く言いたいのは、出荷準備完了後もしくは仕掛中作業の中断や再検品ほど消耗と無駄と割高なコスト化するものはないという点だ。庫内作業での入荷検品や返品再入庫時のダメージ検品、複数工程に及ぶ流通加工の経験者なら誰でも承知している。
だからこそ作業現場の管理者はイロハのイとして中断や作業欠陥の発覚を事前に回避するように業務フローを練り、OJTで徹底的にプリンティングする。場合によっては、作業現場を頻繁に巡回し、わずかな狂いや想定外の小さなほころびが発生していないかに目を光らせる。
それぐらい品質検品や複数作業が連続する加工処理は難所であり、細心の注意が欠かせない工程なのである。

「急ぎだったので」
「量が多くて」
「急遽補充した応援人員にOJT違反があって」
「任せていたので」
「危ないな、と思っていたのですが」

こんな言葉は星の数ほど物流現場に散らばっているし、今現在も進行中で起こっているか起ころうとしているはずだ。
ゆえに管理者の果たすべき責任を毎度毎度小言よろしく繰り返している。
過去の苦く辛い経験から、老婆心でうるさがられようとも憚ることなく口にする。
「現場のミスの大半はその場所で生まれたものではない」
「物流業務の原因と結果は同時に出現する」
そう痛感してきたし、擦り傷から大けがまで経てきた者の実感でもあるのだ。
アベノマスク生産不良の原因と結果も同時に出現していたとするなら、その説明にも上段5つの括弧書きに似た言葉が含まれていそうだ。

検品に回ったことになっている未出荷分のマスクだが、国内での常識的な検品費用は現品の生産コストを上回ると断言できる。
時間がかかっている理由は、検品所用時間ではなく、コスト比較の末に「追加生産」と決定した工場の稼働事情によるものではないだろうか。
いまさら感の強くなる一方の俗称アベノマスクだが、検品再出荷ではなく補填充当の追加生産分を出荷するほうが理にかなっている。
という判断であれば、それ自体は間違っていないと思う次第だ。
ちゃんとした工場でちゃんとした生産管理とちゃんとした納期設定。
が、今の「まだ届かない」の理由。

あんまり涼しくなくなってきた朝を恨めしく感じながら、ひとり勝手に納得している。

 

【2020.06.02追記】
掲載後すぐに追加情報が発表された。

菅官房長官の定例記者会見(2020.06.01)
「世帯向け布マスクの契約額は、総額で260億円を見込んでおり、そのうちマスク調達として、184億円、配送費などは76億円

7,600,000,000÷55,000,000≒138円/個(世帯)
ほぼ確定数字とみてよさそうだ。明細の発表はどこかにあるのだろうか?
私の試算【4】より23円高いのは荷役か送料か?それとも両方か?

著者プロフィール

主筆 T_NAG
大阪 泉州育ち。​
1988年 慶應義塾大学卒業。
しかし、ボンボンでもイケメンでもない。

失敗や挫折の数なら、世界規模の自慢大会に出ても結構いい線行くのでは?
と自画自虐しています。

映画と音楽と小説が大好き。
カメラは人生の伴侶みたいなもの。昔は車マニアでしたが、最近は楽にドライブできることが最重要。なので、燃費と快適性が車選びの基本に。

泥臭い努力型の典型なので、弁舌鋭いキレキレな遣り取り、とかは無理です。

【仕事の自慢】
「取引する企業は必ず業績が良くなる」
​何にも替えがたい喜びです。

【好きな言葉】
「粗にして野だが卑ではない」
​絶対に曲げることのない信条です。

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