物流よもやま話 Blog

消えゆく言葉、生まれる言葉

カテゴリ: 本質

ゴールデンウイーク後半は天候に恵まれているせいか、近所の公園でさえ混雑する毎日だ。
この数年の傾向としてバーベキューを楽しむ人々が目立つ。テントが張れる場所では、まさに「テント村」という様相の密集状態となっており、屋外レジャーの大流行がうかがえる。
ただし、離れ眺める者には街中よりも過密化している異様さのほうが勝ってしまうのだが。

というハナシを書きつつも、わが物流業界は連休中も交代で出勤という現場が多い。
社員もパート・アルバイトも「連休中は休みたいのに・・・」という人の比率はこの20年あまりで激減した。生活スタイルを自分自身で決めることができる層が大きくなったのだと感じること多く、物事の是非や好悪の基準が相対的ではない若年層――他人の顔色や横並び意識などに無関心で無縁――の明快な行動や思考の始点には羨ましく好ましさを感じて止まない。
だから「滅私奉公」「社畜」「休日出勤」「接待〇〇」「派閥争い」などの「昭和言葉」はもはや死語に近く、うっかり口に出すと、素朴な「?」に対して、言葉の背景にある因果から説明しなければならないという冗長で滑稽な状態に陥る。

昭和言葉が言い表す状況にほぼ無縁なまま生きてきた私は、若年層世代と似たり寄ったりなのだが、その状態や因果は理解できている。
身近で「現象」や「原因」を見聞きしたことも数多い。
昭和から平成にかかる20世紀末は、学生から社会人となった自身の来し方の節目と重なって印象が褪せないまま今に至っている。
浮かれた数年間の異常さに「もういい加減にして、地に足の着いた毎日を過ごしなさい」と無言で諭すように昭和は終った。
陛下崩御が報じられた日の東京は冷たい雨が時折落ちてくる曇天で、今想えば、その後に見舞う凋落や鈍化や閉塞の時代を予報しているかのようだった。
「好況」「上昇」「拡大」「増益」「高額」「追加」などの言葉にかわり「不況」「下落」「縮小」「低額」「削減」が至るところで頻繁に遣われるようになった。
そして人々の興味や満足の対象は大きく変化し、いわゆる内向化の時代がやってくる。
自分探し、個人生活、ひとり遊び、ミニマリスト、脱組織、、、、、読者諸氏にも覚えがあるのではないだろうか。

そして令和となってからの今に至るまでの大半は疫禍に生きる毎日だ。
当初思い描いていた疫災収束は今や現実味がない。COVID-19は当面常在する、という腹のくくり方しか往く道はないと思っている。
元号が令和となった2019年の秋頃にウイルスが生まれ、翌年から治療薬の開発が始まったとして、、、離れ業の連続を用い、かつ認可の例外的措置を講じようとも、その完成は早くて2025年。新薬開発から使用許可までの「安全担保に必要な通常期間」を設けるなら2027年まで待たねばならないというのが、現在は声なき状態のまっとうな科学者諸氏の見解だと聞いている。
今の状態はまだ数年続くと覚悟しているのは私だけではないのだろう。

このような時勢下では、またもや死語と新語の新陳代謝的な盛衰がありそうだ。
はたしてどの言葉が用をなさなくなり、どのような言葉が生まれるのか。
なによりもその背景にあるものは何なのか。

疫災で始まった令和。
今月から4年目となった令和の年表には東欧での戦禍による悲劇が加わった。こんなに短い間に「禍」と言い表す出来事がふたつも起こり、それはいずれも収束の目途が立たない。
混迷と閉塞で幕を開けた令和年間の意味や評価が一定の結論に達する数世紀後、我われの今はどのような表現で説明されるのだろうか。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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