物流よもやま話 Blog

可処分所得と可処分時間

カテゴリ: 本質

拙サイトのアクセス・ピーク(山ではなくイボぐらいの大きさ)は日に4回ほどある。
最後のピークは18時から20時ぐらいにかけて。「ありがたい」と心から感謝。
しかし心配にもなる。
こんなブログ記事なんか読んでないで、早くお家にお帰りくださいな。必ずしも家に帰らなくてもよいので、とっとと会社から脱出しておくんなまし。
会社にいる時間と業務成果は連動しない。仕事が終わったら逃げるように退社して欲しい。
私見・偏見・経験だが、会社に長居してもろくなことはない。

この類のハナシをするたびに、いつも想い出されることがある。
それは前職時代、客先での遅い商談の帰路、営業所(倉庫)の前を通りがかった時のこと。
入口近くの倉庫事務所に灯りがついている。
もうすぐ22時。
少し通り過ぎたところで車を停めて、ミラー越しに手を合わせた。「ありがたい」と。
しかし胸中にやりきれない感情も湧いた。
「なぜ彼はこんな時間まで働かねばならないのだろうか」
「今日はたまたま、でないならなぜ私は知らなかったのか」
「どうしたら管理職が定時に上がれる日を増やせるのだろうか」

営業は外出。現場は早出残業。
そんな姿がわかりやすい。
「ちゃんと働いている人」という錯覚が刷り込まれている。
盲目で支配意識の強い愚かな経営陣。私もその一人だった。
人間を大事にしない企業体質。
顧客への良質で行き届いたサービスができるはずがない。
社員が良くならないと顧客へのサービスは向上しない。
可処分所得と可処分時間の二つが揃わないと個人の暮らしは満たされない。
満たされない人間に他者を満たすことはできない。

物流は時間管理の精度を高く維持しやすい事業部門だと思っている。
にもかかわらず、物流倉庫で目論見外に月単位の大幅な入荷や出荷が発生するとき。
それは会社が想定外の売上を獲得しはじめたとき。
大ヒット商品が出たり、新規取引が開始と同時に予想を超える注文を得続けているとき。

そんな時期が到来したら、誰が何と言おうと前言翻してでも、物流部門だけではなく全社員が総動員でその大波に対処しなければならない。
会社が踊り場から上への階段を上り始めたのだから。
働く者の明日がより確かになることと同じなのだから。
無理とはこういう調子のよい時にするものであって、その理由が当事者に理解できれば、ガミガミ言ったり強制しなくても各自ができる限りの行動をする。
といって、延々とそんなスクランブル状態が続くことはない。
経営層が善後策を練り、早急に手を打つに違いない。
その手当がメリハリ良くなされなければ、人材は定着しない。それは未来を危うくすることだと知っているからだ。

急場を乗り切り、再び巡行状態に落ち着いたら可処分所得の増加を期待してよい。
ついでに可処分時間も増やして欲しい。
所得が同じで労働時間が減るならば、それは昇給とおなじだし、給与が増えて労働時間が減るのならば更なる増給となる。
そんな「御恩と奉公」の現代版がたくさんの企業で起こればいいのにと願う。

平成の30年間で働く人々の価値観が大きく変わったと思うことがよくある。
ただの思い込みかもしれないが、出世・役職・権限・地位・会社、などのような言葉を意識する人の数が急激に減っているような気がしてならない。
「うしろむき」「いよくがない」「いしきがひくい」というかつての烙印や決まり文句を当てはめることは不適当で認識不足なのではないのか?という違和感を覚える。
具体的に論理的に説明できないのだが、なんとなく間違えていない気がする。
そして好ましい傾向ではないのかな、と強く感じる。
国としての成熟や老成の反映なのだろうと内心で納得しつつ世間を眺めている。

高学歴・一流企業・エグゼクティブ・高所得・高水準生活・高級レストラン・高級食材・高級住宅街・高級ブランド・高級車・高級リゾート・子息の高水準教育。
私の世代のむなしいポンコツ言葉。
「自分が望むもの」は「他人からどう見えるのか」という歪んだ鏡に映さないと決められない者が多かった。
本当は高級車が好きなのではない。高級車に乗っている自分を他人に見せることが好きなだけだったに過ぎない。私もその中の一人だった。

こんなブログでも読み続けてくださる方々がいる。
物流会社や一般事業会社の諸氏なのだろう、と今お読みいただいている貴方のことを想い巡らせる。
さまざまな企業、さまざまな立場、さまざまな状況、のさまざまな方々が物流という共通語でつながっている。
物流は地味で目立たないながらも、企業経営のインフラである事実は万人が認めている。
だからこそ物流マンはプライドとこだわりをもって現場に臨むのだ。

視えない・意識しない・知らない、という部門でまったくかまわない。
玄人の仕事は無意識の基幹機能を誰知るもなく毎日動かし続けること。
経営者と一部管理層、物流部門関与者のみがわかっていればよい。
日々のルーティンをルールどおりにブレなく続けること。
それは単調で平凡な毎日かもしれないが、大きなトラブルやミスなく維持徹底するためには、柔軟な変化対応力・修正力と非凡な意志力が必要なのだということも付記しておきたい。

もし貴方が経営者なら、どうか物流現場に足を運んでいただきたい。
もし貴方が取締役なら、どうか物流現場の勤怠を徹底的に調べていただきたい。
もし貴方が管理者なら、どうか無理せず一日の終わりを早めてください。
もし貴方が担当者なら、どうか現場での苦しみや悩みを独りで抱え込まないでください。
もし貴方が迷ったなら、どうか私にご連絡ください。

期待を裏切らないことを約します。
物流機能をしなやかで強く堅実なものにすることを約します。
貴方を孤独にさせないことを約します。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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