物流よもやま話 Blog

物流現場にも「創業の精神」を

カテゴリ: 経営

物流関連の業界紙や専門誌、専門書の類をほとんど読まない。
その理由に全く悪意はないし偏見もない。
ただ単に「ピンとこない」からだ。
自身が関わってきた荷主企業との遣り取りの根本や本質に合致する内容が非常に少ない。
「実感を持って読めないから」が理由。
書いてあることにケチつけるつもりなど毛頭無いので悪しからず付け加えておく。
それどころか物流のようなマイナー業界で、工夫や苦労を重ねながら続けていることに敬意と支持を表したい。

おそらくきっと、巨大な物流企業だとか大企業の物流子会社で仕事をしてきたのなら、すらすら読めて楽しめるのだろうが、中小零細企業が大半であった顧客構成ゆえ、私の視野が偏っているのだと思う。
が、そういった生き方は本懐であり誇りでもある。

しかし、それゆえに宜しくないことも少なくない。
まず最新の用語がわからない。
内容を理解できれば「あぁ、そういうことか」と納得するのだが、アルファベットの羅列やカタカナ表記の状態ではお手上げなのだ。
業界内の付合いもほとんどない。
会合には出ない。
業界紙・誌の取材も原則として遠慮させていただいている。

仕組や機材など、次々に新語が生まれる。
それらが導入されたり、活用されて改善や改変が行われた現場に立ち会う機会などが稀なため、新語知識不足のまま今に至っている。
今からも似たようなままだと思う。
私の顧客はそんな言葉の整然とした説明を求めないだろうし、必要ともしない気がする。
一生懸命勉強して、賢くなったつもりで必死にしゃべった挙句、「こいつ難しい御託やらカタカナ言葉ばっかり並べて、アホなんか?」と点数下げるのが関の山だと思う。
そういう会話こそが最先端の物流にまつわる人々のアタリマエなのかもしれない。
が、それをよしとするトップは私の顧客には極めて少ない。
今からも出会いそうもない。

かたやで、上述と矛盾すること極まりないのだが、誰よりも新しい物好きで怖ろしく飽きっぽい創業者であるオーナー社長が、

「〇△☆◇#」というすごいものがあるそうだけど、うちに導入したらいいのではないか?」

なんていう問いかけを下さることがある。
一度や二度ではない。
数えきれん、ほどではないが少なくもない。
その企業にとって、それらはたいていがネコに小判の典型のような仕組。
聴けば、飛び込みのセールス電話で知ったとか。その前はDMだったし、その前の前は、、、
世界石頭選手権で入賞確実なぐらい頑固なくせに、億単位の設備投資をいとも簡単に安直に。
しかも、よく知らん相手から、、、、、ええかげんにせえよ、オッサン!
とはマッタク微塵も思ってもいないので、そんな失礼を口にすることなんてありえない。
「なんだかなぁ」の深いため息をこらえ、ひきつった愛想笑いでやり過ごす。

自社物流・原則内製という場合、良し悪しは別として、建屋の設計から運営の仔細に至るまでトップのこだわりや理想が大きく反映された構えになっている。
しかしながら、業務指針の諸規則や美装・挨拶などの精神規律以外の設備類は、往々にして金で買えるものを並べているだけで、他社でも同じようなものが用意できる。
それはどこでも同じであるから、特段の問題でも欠点でもない。

毎度の違和感の元はそんなことではない。
自社製品への突出した拘りと情熱を持つ人が、物流のハナシになったとたん、高額で豪奢な吊るしの設備を買い漁りたがる。
合理的な思考がそうさせることは理解している。
しかし、本当にそれでいいのだろうか?
その会社の製品は、決して廉くは無いが使えば歴然とした違いが体感できるものだ。
値が張ると言っても、ちょっと思い切れば手に入る。
大きな無理などせずともよい程度なのだ。

物流も同じように考えていただきたい。

少し高いが、使ってみれば「高くない。むしろお得だと思う」が真骨頂なはず。
それは創業の精神であり、その会社の不文律。
だからこそ顧客の支持を得続け、世代をまたいでの愛好家が数多くいる。
物流現場の細部にまでその血が流れるようにすべき。

そう申し上げたら、満面の笑で「そやな」と大きな頷き。
無用とわかっていながらも、釈迦に説法を唱えるのはしんどいしドキドキする。
できれば遠慮させていただきたいというのが本音なのだ。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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