物流よもやま話 Blog

ビックリした桜島噴火

カテゴリ: 経営

いやはやしかし驚いた。
24日夜の桜島噴火のニュースに殊更反応してしまったのは、前週の17日に桜島・湯之平展望所を訪れ、その夜は対岸の宿に泊まっていたからだった。
鹿児島出身の知人からは火口から立ち上る煙や、尋常ではない量の降灰による被害や掃除の手間についてなど聞かされていた。しかしながら訪問した二日間はまったく何事もなく、火山活動よりも頻発する線状降水帯がもたらす大雨災害のほうが気になっていた。

危険レベルがいきなり最高位まで引き上げられた今回の噴火だが、島民の方々は普段から避難訓練を行っており、その甲斐あって大きな混乱や人的被害はないと聞く。やはり平時の備えは重要だと改めて痛感する。
一部物流網が乱れているようだが、噴火後の小康状態が続いていることもあって、多少の制限はありながらも断裂や停滞は見受けられないとのことである。

鹿児島市街には宮崎側から垂水経由で入った。つまり地元の方々が言うところの「裏側」から陸路で桜島に入り、その後にフェリーで鹿児島港に渡ったということだ。
観光名所のいくつかは見応え十分で、名産や名物も楽しませてもらったが、一番の感動は「裏側」から眺める錦江湾に浮かぶ桜島の佇まいだった。美しく穏やかな景色は、南国の火山という修飾語に違和感を抱いてしまうほど静かなものだった。曇天のかすんだ空気がその感をいっそう引き立てたのかもしれない。

先週に限らず、出張や旅行で大都市ではない各地を訪れるたびによく感じるのは「こんなに素晴らしい地域が人口減で廃れてゆくのはあまりにも惜しい」ということだ。
近年わが国では事業機能の地方分散が議論され、実行する企業もいくつか出始めている。
毎度のハナシで恐縮だが、「急がない物流」を皆で行えば遠隔地の概念が変わる。少なくとも「物流機能での遠隔地」はいわゆる大消費地までの運送距離と所要時間の言い換えであるし、【近い>遠い】【早い>遅い】という無意識の優劣が刷り込まれている。つまり現状比で24~36時間程度の猶予を標準着荷時間とすれば、既成概念化した優劣が薄れるのではないか。

さらに前述のとおり、事業機能の分散によって都市機能の部分的移転やそれに伴う移住者の増加が重なれば、地域人口は増加する。
そうなれば従前より多少時間はかかるが、大都市からはるか遠く離れた地域から安くて正確な物流サービスが提供できる可能性は確かなものとなる。
つまり物流機能の地方分散も期待できるというわけだ。

豊かな自然、美味い農水産物、たいして混まない道路、安い土地・・・企業や現役世代の増加を切望し、歓迎一色の自治体や居住区の高齢者たち。
綺麗ごとや長所ばかりを並べる理想論は本意ではないが、都市部から離れることで生じる不安や不都合の原因となる機能や理由は何なのかを冷静に考えてみればいかがかと思う。私自身何度も自問してきたが、その答えは商業施設や医療施設の存続性とそこに至る交通手段の維持、さらには何よりも通信などのインフラ整備ぐらいしか思い浮かばなかった。
子育て世代にとっては教育施設や公的な育児支援の内容も加わるはずだ。

そう考えれば、もはや厳然たる“僻地”という場所は減少の一途で、通信と個配網の拡大によって交通手段と商業施設の充実度ぐらいしか地方と大都市の差はないように思える。言い換えれば過剰なほどの交通インフラと飲食店や物販実店舗数に生活の質を委ねている者にしか過密都市の突出した魅力は無いのかもしれぬ。
大都市の繁華街と比べて、、、と言うものの、はたして大都市機能のどれぐらいを利用しているのかを把握したうえでの発言なのだろうか。個人の生活に必要ない利便や機能は有って無いのと同じと思うが、読者諸氏はいかがお考えか。

地方の小都市では、分刻みでやってくる電車や地下鉄やバスはなく、おびただしい数のタクシーが街中を流していることもあり得ない。車がないと生活に不便があるかもしれない。
大都市でアンケートを施せば、「そんなところでは暮らせない」という人が圧倒的多数を占める――かもしれないが、それ以外の少数派と看做される人々の数は地方都市からすれば「たくさん」「ありがたい」「ひとりでも」となるかもしれない。都市生活者が不安視する公約数的インフラの整備は、人口流出・減少に苦しむ地方都市にとって、移住者受入れ以前の最重要課題であるような気がするが、逆に言えば具体的な必達事案として向き合うことが判明しているのだから、とにもかくにもなんとかせねばならぬ。

雇用創出は全自治体共通のテーマでありながら、地域独自の企画立案と具体的な行動への順序だてが難しい。どの自治体も問題意識は高いが、予算や人員の壁前で足踏み状態なのだとか。
とここまで書いて、以前書いたハナシを思い出した。
見返せば何度も似たようなことを言い続けているようだ。
皆さまご一読のほどを。

生活配送どうでしょう?地方自治体殿

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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