物流よもやま話 Blog

なんとなくクリスマス

カテゴリ: 予測

また今年も年の瀬がやってきた。例年の愚痴で恐縮だが「ついこの間年が明けたばかりなのに」と書いてしまうワタクシをおゆるしあれ。
暮れの繁忙が始まったら入出荷ラッシュで大忙しの毎日。連日の残業続きでクタクタに、、、なんていう物流会社は減るいっぽうと聞くが、実態はどうなのか。
ちなみにワタクシの見渡せる範囲では「多少は出荷が増えるが、繁忙とまでは言えぬ」が圧倒的多数を占める。
おそらくきっと世間一般にもそんなもんだろうと思っている。

いまや異常という文字を付す必要もない気象変動に限らず、諸物万事が時代と共に移り変わるのは当たり前のこと。なので人の営みたる経済の動きも刻々と変遷してゆく。
物流動態は母たる消費の動きに従うのみという因果もまた然りなのだ。
「年末はあんまり忙しくない」が物流業界の常となるのだろう。

刷り込まれている師走のイメージは、
〝カレンダーの日付が慌ただしく進み、あっという間にクリスマスとなり、ドタバタしつつも国民的行事のように皆がケーキや急にカタカナ表記になる炙った鶏肉を食べ、口に洋味が居残って消える間もなく、大晦日の蕎麦→正月の雑煮とおせち、そして餅とミカンの乱射〟
という和への急転がなされるというものだった。

少なくても高度成長期以降の昭和の時代は概ねそうだったはずだ。
平成前半あたりまでは徐々に多様化・簡素化しつつも暮れから正月の「アクセル全開で高速巡航→大晦日の急ブレーキ→新年特有のどんくさい空気感」は確かに居残っていた。
が、近年そのリズムはほぼ形骸化している。後期オッサン&オバハンと年寄以外は反応しないのに、何十年来お決まりの音楽や装飾や広告を繰り返しているのは、やはり旧態依然なままの流通業や紙媒体やテレビばかりで、傍から眺めていると滑稽極まりない。
今年も楽しませてもらったラグビーを引き合いに出すのは気が引けるが、上記の旧態団体の例年主義や踏襲体質はボールなきスクラムやドライビングモールに似て寒々しく喜劇的だ。

全部ではないにしても、現代の若者たちは実に合理的で質実だ。
時節ごとに巡ってくるイベントの楽しみ方なども、身の丈に合わぬ無理を重ねて見栄や虚勢の積み木に躍起となっていた我われスットコドッコイ世代とは大違いだと痛感する。
ワタクシ世代にも地に足の着いた生き方をしている者は数多くいたが、上げ潮と謳われていた景気の波間を浮き草やクラゲのように漂う若者のほうが目立っていた。
「なんとなく大学や会社に入り、なんとなく勉強や仕事を横並びに競い、なんとなくクリスマスでは盛り上がり…ずっとスットコドッコイのままクラゲのように生きてきた」
のなれの果てと切捨てるには簡単だが、その世代が今の時代の現実を作ったのだから、高齢化しても若者たちに甘えたり迷惑をかけるような愚挙は厳禁と自戒せねばならない。
なんだか暗く辛い心情になってきたので、これ以上は書かない。

なんとなくクリスマス、は近年の物流事情を説明する際によく使う表現だ。
その他「なんとなく新年」「なんとなく年度末」「なんとなく大型連休」「なんとなく師走」なども、時節繁忙の波動が緩やかになっている事実の言い換えに用いる。
三十代半ば以上の物流人なら、かつての年末繁忙は覚えているだろうし、より上の世代なら年度末の駆け込み・ねじ込み出荷や「初荷」というご祝儀納品も懐かしいはずだ。

当時の物流動向に「なんとなく」が少なかったのは、世の中全体が一斉に同じ動きをしていたからではないだろうか。今となっては掌返しも甚だしく「よろしくないこと」とされるような「他人様と違うことは恥ずかしい」や「誕生日とクリスマスにはケーキ、大晦日は年越蕎麦、正月は初詣とおせち、春は花見、夏は海水浴、秋は紅葉狩り、冬はスキー、2月と8月とプロ野球の優勝決定時にはバーゲンセール」のような同調意識が多くの人々に根付いていた。
各行事に伴ってモノが動く。物流屋にはしんどく辛い波動だったに違いないが、かたやで毎回毎度の予定調和と割り切った覚悟をもっていた。事実、結果的にはなんとかなった。

店頭での購買依存度を下げたEC興隆の功罪については、後の時代の評価を待つばかりだが、少なくとも物流作法への影響は多大だった。
個配手法のインフラ化は消費物流の根底を揺さぶり、今も振動は止まぬままである。
物流が生活スタイルを変えていくのか、その逆なのかは拙者のような素人には分析不能だが、「適宜」「便利」というキーワードなしで消費と物流を語ることはできないと感じている。
その点については、生活者心理の志向として「なんとなく便利」ではなく「ものすごく便利」や「あきらかに合理的」を選好するに違いない。

消費の出口たる場面にいかなる物流作法を用意するのか。
物流屋にとって腕の見せ所となるのは必至である。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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