物流よもやま話 Blog

このままだとメーカーの物流は

カテゴリ: 予測

世代によって使用する単語が違う、、、言い換えれば「単語や言い回しで年代がわかる」という傾向を実感することが多くなった。
テレビ番組で出演者が遣う言葉だったり、若い方の書いたコラム記事や各種ニュースで用いられる表現などでも「ん?今の言葉は何じゃ」と引っ掛かってしまうことが増えた。

上述したモウロク気味なオッサンの愚痴はどうでもよい。
けっこう真顔のまま密かに唸りつつ違和感と時代の移り変わりを感じざるを得ない場面。
それは大型スーパーマーケットの売場に並ぶ商品を目にする時だ。

読者諸氏ご承知のとおり、小売大手の食品・生活雑貨品売場ではPBやOEM品の比率が高まる一方だ。消費者にとっても「とにもかくにもおトク」というメリットの多いPB品への購買意欲はワタクシに限らず世間一般に旺盛なのだと思う。
その反面「いったいどこが造っているのだろうか」という好奇心と製造元確認による安心感確保を求める心の動きが頻繁に起こる。で、裏面をひっくり返して「ほんとうの製造者」を探るのだが、ほぼ毎回残念ながら実製造者名が知れることはないままに終わる。

製造者や販売者表記についての法令を教えてもらった過去のことなどほぼほぼすっ飛んでしまっているので、そのあたりの按配や理由はよく分からぬまま「どこが造っとんのじゃ」などとブツブツ言いながら、売場で毎度たたずんでいるあやしいオッサンと化している次第だ。
以前書いたネットスーパーの店内ピッキングについての文中にもあるように、あんまり挙動不審が過ぎると、そのうち出入り禁止や店舗事務所で事情聴取といった憂き目に遭いかねないので、最近では意識的に自制するようにしている。

ネットスーパーの店内ピッキング

こんなことを書くのは、今の状況がいっそう進むと、メーカーのプロパー品が売場から消えてしまう、、、までは言い過ぎにしても、減るいっぽうではないかと案じているからだ。
別に不肖ワタクシが心配せずとも、そんことは各メーカーがちゃーんと考えている、と心得てはいる。
が、売場の問題は回り回って物流に至るのが公式の第一なのだ。なので自分事としての思考回路が刺激されるし、来るべき〝事態〟のカタチを想い巡らせてしまう。
おそらくきっと読者諸氏の中にも似たようなことをお考えになっている御仁は少なからずいるはずだし、それぞれの答をお持ちなのだろうとも察する。
以下は、PB興隆市場におけるワタクシ的メーカーの物流作法の行方の概略である。

結論から書くと、メーカー物流は直販比率の高まりによって、BtoC型もしくはBtoBtoC型の形態を強めるのではないかと考えている。

あくまで私見の極みでしかないが、メーカーのプロパー至上主義の内心動向は、いかにOEMやPBによる売上が上がろうとも衰えることはないはずだと確信している。
なので「自社製造品」の主たる販売場所では売手のPBやOEM化しており、自社ブランド製品の展示比率が上がらず、かつ価格的にも購買者の支持を得られない状況――売ろうにもその方策を練る環境が得られない事態。というのが常となるなら、メーカーはおそらくきっと消費者に直接訴求できる方法を検討するに違いない。

ひと昔前なら「大量生産による大量流通でないと市場要求に応えられない」という理屈が正論だったのかもしれぬが、そんな時代は終わりを告げようとしている。
今は少量多品目でも個配や指定場所での適宜受取が可能な環境が目覚しいスピードで整いつつあり、まもなく生活インフラとして標準化されることは明白だ。
なので流通大手の物流網に乗せずとも、その他のEC系物流網や業界内での物流共通化で直販完結が叶う――たとえば「同じ顧客に届けるのだから、異業種各社もわが業界の乗合物流に参加して競合禁止の協働化こそが最適な合理化」などという謳い文句などが好ましいのではないかと自賛する次第だが、読者諸氏はいかがお考えになるのだろうか。

既存売場では自社名で顧客と出会えない。
ならばそれに代わる出会いの方法を得る。
「貴方が買う品はわが社の製品なのです」
そう表示告知したうえで満足してほしい。

という心理動向は自社名を掲げ、自社のブランド価値を高める意欲を諦めない製造業者なら、ごく自然に考え行動する「あたりまえのこと」だと思っている。
全産業はEC化するというヤマト運輸の中計にある言葉には一定の説得力がある。まさに物流のEC対応化を最先端で感じ応じてきた強者の所見として貴い。
もしその見立てが正しいのなら、言葉の主たるヤマトが圧倒している個配市場の地図が書き換えられる可能性は大いに高まるのでは、と考えている。

PBとNBの優先順位と序列の明確化。
事業利益とブランド価値の折合う点。
自社ブランドの誇りと市場占有率のせめぎあい。
多数広範なPB主体やOEM先への品質・機能供与によって視えない巨人となるのか。
それともあくまで冠を外さず業界の雄として名を揚げ君臨し続けるのか。

食品や生活品の製造業のハナシばかりをしているのではない。
わが業界の各社の生き方に置き換えて問うてもいる。

今ふと思ったが「パラダイムシフトが差し迫って」いう言い回しは今や死語なのか?
続く言葉に迷いが出たところで止めておくほうがよさそうだ。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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