物流よもやま話 Blog

個配便は集荷制限の時代へ

カテゴリ: 予測

何度となく書いているが、個配便の取扱件数はあと数年でピークとなるだろう。単純に需要が頭打ちするだけでなく、ガリバーたるヤマト運輸が廉価契約の排除を強化するに違いなく、追随する佐川急便も同じ動きとなるからだ。JPに関しては個配事業自体の見直しや譲渡も含めて市場参加者としての存続自体を疑っている。あくまで私見だが。

ヤマト運輸の2021年度個配便取扱数は22億7562万個だったが、あと数年で到達する30億個あたりを上限と想定しているような気がしてならない。その後は歩留まりの良い新規や契約更新先を残し、廉価タリフの改変が叶わぬ荷主については集荷個数制限もしくは解約も辞さぬ構えで臨むのではないかと推察している。これまたあくまで私見である。

つまり30億個の中身を充実させるための入れ替えが活発化する。
今現在、何らかの経由や特例で他社よりも安い運賃契約を維持できている荷主企業には、老婆心ながら以下のようにお伝えしておく。
貴社はそう遠くない将来、結構な幅の値上げ告知を受けるだろう。その告知はあくまで通達であり、依頼や打診ではない。そして受容を拒めば、集荷拒否・集荷制限の憂き目に遭遇する。もちろんだが、個配事業者にヒアリングしたわけでも、八卦見でもないので、あくまで私の個人的な仮想でのハナシである。ちなみに私の関与先企業には個配市場の動向予測として、そのように伝えているし、個配大手3社のタリフくぐりっこ合戦に付き合う愚は厳禁としてもらってもいる。

個配便を支えるドライバー人件費の抑制には限界がある。さらには高止まりしたまま下げ要因が見当たらぬ燃料費。そして何よりも慢性的な人員不足。
これらの条件を考慮すれば、拡大路線ではなく総量維持のままで堅実な利益確保となるのは当然だろう。
個配サービスに限らず、人口減少するわが国での薄利多売は自死行為に等しい。
配達効率の良い大都市部なら成り立つ都市型ビジネス、と割り切って参入してくる後発組との過当競争を回避するためにも、先行大手は付加サービスや品質面での充実に軸足を移す。
それを理解できずに、頑なに抵抗しつつコスト受容できない荷主は、個配事業者から「もう顧客ではない」と切り捨てられるだろう。

「100サイズ以下の対面宅配は一律1000円」という時代はそう遠くないと思っている。BOPISやC&Cと呼ばれる受領方法(能動的受領Ⓒ永田←まったく流行らんなぁ)が現在の宅配運賃と似たような水準になるのではないかと思う。いずれにしろ配送コストを事業者側がまるごと負担するのは過去のハナシとなり、ワンコインでの個配料金も同じだ。

地方部では、配達拠点までの異種混合配送・地域共配などが今以上に進み、個配便は新聞のように乗り合い配達となる。都市部でもその傾向は徐々に顕在化しつつあり、大型のオフィスビルやショッピングモール内の館内集配業務はすでに類似形態である。
こうなってくると、間違いなく生活物流としてインフラ化してしまうのだが、ビジネスモデル的にはヤマトや佐川がその先駆者となるわけではない。なぜならすでに視えないインフラ提供事業者として、国内・国際物流に君臨する巨人たちがいるからだ。
毛細血管のような個配や館内集配などのリテール物流には興味を示さぬだけで、大動脈・静脈たる物流市場の基幹部分はガリバーたちが担ってきたし、今も厳然とそうであるのだ。

巨大化して成熟すれば、物流は透明なインフラ化する。
少し引いて眺めるか、物流地図を俯瞰すればすぐにわかることである。
つまり個配大手事業者は、刻々と個性や特色を透明化しつつ、やがて人々が無意識に依存しているインフラとして存えるようになる。

なんていうハナシをどこかでするつもりだが、まだあてはない。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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