物流よもやま話 Blog

雨季の晴れ間は要注意

カテゴリ: 信条

掲題に反応して「そうそう、油断大敵」と肯く読者諸氏は多いと思う。
梅雨から夏の終わりまではとりわけ要注意なのだが、荷物をヤードに一時退避させている際に空模様が急変し、場合によっては「ザーッ」と雨音が響くような、、、

“うまい具合にパレット上の荷には天面の一部を除きラップぐるぐる巻きだったので、被害は最小限にとどまって不幸中の幸いだった、、、”
なんていうセリフを現場担当者が洩らそうもんなら、上長の雷がさく裂、、、外は雷雨、庫内も所長カミナリが響き渡るので、従業員たちは嵐の過ぎ去るのをじっと待つのみである。

庇が大きくなった近年の建屋では“荷がずぶぬれ事件”は減ったようだが、手狭なヤードと床をやりくりして日々の荷役をこなしている倉庫では、昔も今も変わらずに「雲行き」があやしくなると、屋外まで拡げた荷を庇下や庫内にひっこめるのだ。

「大切な荷を露天状態にさらすこと自体いかがなものなのか?」
という至極真っ当なご指摘はゴモットモである。

しかしながら「廉くて迅くて巧い」保管・荷役を維持するためにはアタリマエでは事が成らぬ――稼働時間外は庫内の通路まで荷を収めることで最大保管量を確保、積み付けの迅速化と段取り最優先を果たすために、リフトがフル稼働できるヤードで荷役作業をこなす。
安全確保や作業品質が気になる読者も多いかと思うが、今よりもはるかに荷役事故は少なかったし、作業品質は比較にならぬほど高かった。
機材依存していないので応用と機転が端々に利いていたし、毎日の繰り返しが熟練の奥行きを醸成することに繋がるのだ。その証左としてイレギュラー対応力に秀でていた。
「予定や計画や思惑どおりに事が運ばないのはアタリマエ」という身構え心構えが培う底力には凄味があっただけでなく、絶対的な信頼を得ていたように思う。

今は死語と化してしまったが「ひっぱり」という作業で一日が始まる倉庫や運送事業者はめずらしくなかった。特に家具や家電、建材や電材・管材などの嵩が高い荷は、横に拡げて置きだせば限なく床面積を食う。
なので保管は荷役障害になる手前まで縦をつかう。
当然のように、容量限界かそれを超えてでも荷受するのが常ゆえ、終業時間外は通路などの「空地」は隙間なく保管スペースと化す。
営業倉庫なら「荷受量は庫内収益の土台」、自社物流なら「入庫量は旺盛な生産の証であり、営業繁忙の明るい見込みの証」にほかならず、現場は何が何でも受けねばならない。

その結果、恒常的もしくは期間限定的に庫内に荷があふれかえることになる。
なので倉庫従業員が朝出勤して最初に手を付ける作業は、通路に高積みされた荷をそのまま引っ張ってヤードに出すこと――いったいどうやって積み重ねたのか?と不思議なほどの高さとなっている「荷の塔」の底を引っ張ってヤードに並べてゆく様は、何度見ても「曲芸か手品」としか思えない、、、と私は感動する手前で恐れ戦いていた。

というわけで、急な雨は倉庫の一大事となることが多かったのだ。
短い庇の下に荷を動かしても、横殴りの雨なら濡れてしまう。ゆえに倉庫には大判のブルーシートが用意されていることが常だった。
野球中継で急雨によって一時中断すると同時に整備の方々がマウンドなどを養生する様を目にするたび、赤い写真のように脳裏に焼き付いている驟雨時のヤード風景が思い出される。

雨の日のひとりごとのようなムカシバナシであります。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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