物流よもやま話 Blog

物流コスト

カテゴリ: 実態

企業の物流コストの標準指数が業界団体などから統計値として公表されている。
ここで述べる数値とは、あくまで中小零細企業のそれであって、100社や200社ほどの大企業相手のアンケート統計数値とは全く無縁である旨、先にお断りしておく。
売上1000億円以上の上場企業群と圧倒的多数の中小零細企業を同じ定規で測ることなど無意味。
ロジ・ターミナルの主要顧客層は自社物流をもつ中堅・中小企業。
その前提で常に記事作成している旨、ご理解いただきたいとお願いする次第。

しかしながら各種マートやEC関連媒体、中小企業向け雑誌などから、それなりの「統計値のようなもの」が発表されている。
なんとなく今までそれを基準にいろいろ判断してきたが、よくよく考えるとそれって本当に標準の値なのだろうか?
そもそも企業の業種業態別物流コストって何なのか?
平均値?
いったい誰がどうやって調べたのか?
業種業態別、客単価や粗利率の幅、物流拠点の所在地域などの偏差をどのように修正して平均値といわれるものを算出しているのか?
加えて何社へのヒアリングを統計母数としているのか?
統計作成者は是非公開して欲しい。非上場・未公開の調査対象企業が実PLの数値を第三者に開示したとは思えないゆえに疑心暗鬼になってしまう。

批判しているのではない。
かつても今も、なんとなく存在する「標準値」や「平均値」が刷り込まれているため、顧客数値をそれからの乖離度で評価しそうになる。慌てて脳内で打ち消すが、本当に信頼できる実務統計が存在すれば、どれほど助かることかと切望しているだけだ。
客観性に富み、信頼できる物流関連の調査機関やメディアの誕生を待ちわびている。

営業倉庫在籍時には、毎度毎度「荷主が競争力を強めるための物流システムとコスト」を提案し声高に唱えていた。
が、その算出については原価主義の典型で、積算結果を標準値とされるものに比して近似値を探るようなすり合わせの連続だった。
その作業中に顧客側のPLを慮ることなどなかったと思う。
自社利益確保の下限が顧客の許容限度に当てはまるか否か?
もしくは逆に、顧客の設定コスト上限に自社見積が合わせられるのか?
この二極を行き来することが多かった。
そもそもが利益相反しているのだから、アタリマエなのだが。

問:企業の適正物流コストとは?
答:自社で決めるしかない

これが正解という気がする。

その企業の顧客に過不足ない納品精度を維持しつつ、損益内で他勘定に圧迫を与えない比率。
品質不足なら営業面で不利益を被るし、品質過剰ならコスト転嫁されて価格競争力が落ちる。
絶対的な値は誰にも算出できない。

なので説明も抽象的で曖昧さがぬぐえない。

具体的な原価算出は物流業務のフローに見合った保管及び人件費と作業付帯経費、その他維持費、配送費の計算でできるはず。
着地点設定の取っ掛かりには、販管費率などからコスト上限目安を決めても良いし、業務側から積み上げても可。
導かれた解、つまり算出コストの可否は経営判断以外にない。
極端な数値は別として、「他社」や「平均」や「相場」などの言葉を排し、自前の目論見を貫徹するべき。
もし手詰まりになった、またはなりそうなのであれば、手前味噌甚だしいが私の得意分野なので是非ご相談いただきたい。
自社物流なら部門コストになるし、外部委託なら支払コストと試算原価の差が委託先との条件交渉具材となる。
ただし、絶対に不可欠な算出作法として、業務の徹底的な分析がある。

私見だが、ものすごく控えめに書いても自社物流なら70%、外部委託なら60%以上の企業がコスト過多だと思う。
むろん外部委託の場合には、交渉以外に修正方法がないので、コスト高を認識しつつも現状に甘んじるしかないケースも多い。
追記すると、総じて過剰なコスト明細内で異常に高かったり低かったりする項目があるはず。
その凸凹が改善の入口であり、コスト修正と業務強化の出口に繋がっている。
理屈や推論ではなく経験でものを言っている。

コストが下がらない原因を自ら作っている企業の多いこと。

因果応報。
いや、因果倶時なのだろう。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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