物流よもやま話 Blog

倉庫と古墳の相性

カテゴリ: 余談

人生の半分以上は古墳のそばで生きてきた。
大阪にはたくさんの古墳があるが、私の暮らしてきた場所は「百舌鳥・古市古墳群」エリアがほとんどであり、現在も変わらない。
育ちは堺市と高石市。高校は大仙陵古墳――いまさら「実は仁徳天皇陵ではない」と言われても困るなぁ――の近く。
現在の職住は応神天皇陵や仲哀天皇陵に近接している。

大学入学からの20数年に及ぶ東京生活以外は、おおむね古墳のそばに日常があった。
しかしながら無意識・不随意にであり、多くは親の都合でそうなっていた。自身が望んだり選択したことはほとんどない。
他都道府県の方々には実感がわかないかもしれないが、大阪をはじめとする近畿圏には世界遺産級の巨大古墳以外にも、小規模で金網フェンス程度の簡易な保存処理しかされていない古墳が多数点在している。したがって、古墳群のある地域で暮らす人々にとって、その存在は特別なものではない。言われなければ「あぁ、これも古墳なのか」といった規模と状態のものも少なくない。保存に要する予算や人手を確保できない実情が散見される。

過去に何度か述べているが、昨今の気候を “ 異常 ” と表現することに違和感を禁じ得ない。
畏れ多いが、その感覚については松下幸之助翁に全く同感で、生まれてこの方、毎年気候の大きな変化や未体験の現象が見舞う。従って、今までと違うことを異常と表現することには違和感を覚える。
毎年の天変地異や気候変動は人類が未体験であるに決まっている。
なぜならそれは過去ではなく未来なのだから。
「平年並」とは過去平均という意味であり、普通や通常や基準の代名詞ではない。

亜熱帯域に属しつつある日本列島。少なくとも関東以西以南は間違いない。
テレビの音声がかき消される程の滝のような豪雨。
屋根が剥ぎ取られ、壁が崩れ落ち、信号機がひん曲がったり一回転するような台風。
永遠に続くのか?と絶望させるような連日の熱暑。
知覚と衣装の切替が間に合わず、皮膚感覚が混乱する急激な低温と豪雪。
都市部での過酷な24時間高温。
短時間集中降雨がもたらす想定排水容量の超過による浸水。

きっと過去にもあったに違いない。
現在の状況とは異なるにしても、激しい気候変動は多々あったはず。
そのときも先人達は「異常」「奇妙」「不吉」などの表現で、不安や恐怖を表現してきたのだろう。恐れおののいていただけの者もいれば、現象を正確に把握し、冷静な対処や準備を考えた者もいたのだと思う。

現代人が想像できない手法で、統計をまとめ、綿密に考察し、観測して予測し、気象と地理の相関を精緻なハザードマップ化していた。
そんな形跡が数多く残っているし、一定以上の結果も出ていたのだろう。
太古から何度も作成してきたハザードマップのレイヤー。
膨大な重ね合わせの結果、最もバツ印が少なかった地域。
その最たる証は古墳をはじめとする遺跡の現存だろう。偶然では説明できない数の事例が数多存在する。
関西エリアには特に多い。

私には考古学的な説明や科学的根拠を挙げることはできないのだが、なんとなく「古墳の周辺は壊滅的な災害が少ない」と感じている。だからこそ、現存している文化財が多数あるのだ。
世界的に見ても、王家や王国の遺跡が戦争や人災以外で壊滅した事例は少ないのではないか。
つまり、その時代の最高叡智によって導かれた築造立地の判定が「正」だったことの証明となるのだろう。

で、ここから激しく飛躍するのだが、

「物流倉庫はそういう場所を選んで建設すべきである」

というコジツケ理論を小声で訴えている。
天災は万人に見舞うし、それを事前に察知し、防ぐ術はない。
だからこそ「防災」「免災」「制災」「避災」「減災」など、虚しい抵抗が絶えない。
阪神淡路震災以降の被災地で、上記の言葉が示す方策と効果を公言できるのか?と思う。
それらの災害と被災死傷者の統計を研究の具にするというなら、それは有史以来「人柱」と呼ばれる行為に他ならない。仮にそんなことまでしているとしても、見合う成果や方策が得られている気配はない。
税金から捻出された予算をかけて、結果の分析と評論ばかりして何年経っているのだろうか?国内でできないなら、海外の優秀な研究機関や科学者に依頼すべきだと思う。「どうしても国内の研究資源と人材で」ということが世論だというなら沈黙するが、個人的には認めがたい。
自国内製主義にこだわっていては、奏功の可能性が小さくなると考えている。

いっそのこと、理屈抜きで「遺跡近辺の遺留率は高い」と信じるのも悪くないと思う。
官民諸機関の説明や解説ではそれらしい理屈がてんこ盛りだが、結果として「想定外」やら「低確率だったので」とか「未曽有の」などと不可抗力を下の句にもってくる。
気象庁でも使用しているスーパーコンピューター「京」をもってしても、3か月先までしか気候の概況予測しかできないのだ。
地殻変動については予報などに遥か及ばず、可能性や研究説明しか羅列できていない。
ぶっちゃけて「どこが安全なのか皆目わからん。でも仁徳さんや応仁さんの近所なら大丈夫かもしれん」みたいな妄信もありかもしれない。
理由は簡単である。
「大昔からずーっと残っているから」の一言に尽きる。

大和川南側の泉北・南河内エリアの倉庫。
目ぼしいのを数えてみたら、とても少ない。
大阪南部は倉庫に限らず、何かにつけて人気がない。
なんとなく理由がわかるのだが、認めたくはない。
「ガラが悪いのではなく、言葉の調子が独特なだけ」を誤解されることが多いという認識はあるが、おおむね偏見に満ちたイメージが先行している。
地球規模でみても、文明・文化・学術・技術・教育のレベルは南半球より北半球。
北高南低は一定の既成事実。みたいな刷り込みがあるのか?

南港・関空に近く、地価が安く、高速のアクセスも悪くない。
新名神が貫通すれば、阪和道・近畿道から中部・関東・中国の各エリアへの大幅な時間短縮が叶う。
つまりは、いろいろと非常にリーズナブルであると言いたいのだ。

関西エリアの大型倉庫はテナント申込で苦戦を強いられている。
それを後目に「REDWOOD藤井寺」は50,000坪を大きく超える床面積(賃貸対象部分は約47,000坪)にもかかわらず、満床に近づきつつあると聞く。アマゾンの二層使用を差し引いても、募集開始から二年弱での現状は数少ない成功例と評価できる。
シャープの施設跡地に建設されたのだが、大型のトラックやコンテナが大和川堤防の狭い道路から落っこちそうになりながらも、頻繁に出入りしている。
行政はそのあたりのインフラ整備を進め、倉庫事業者を積極的に誘致するのも振興策の一つかもしれない。
庫内作業者の雇用が生まれ、税収が発生し、無公害で静かなランドマークができる。
近隣エリアでは、まだ建設の余地があると思う。
ニーズが多いことは明白だからだ。

「決定理由?そりゃもう、なんてったって古墳の近くだからねぇ」

と入居企業から聞いたわけではないが。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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