物流よもやま話 Blog

嫌な客

カテゴリ: 余談

保管効率をさんざん口にしてきたが、裏付けある数値で説明できたことはない。
実は、、、精密な正解がよくわからないのだ。
ぶっちゃけてしまうが、その言葉に誰も突っ込んだり異を唱えることができないから、したり顔でべらべらしゃべり倒していた。
今でも同じように「だいたいこんな感じ」でゆるーく説明している。
と、初めて会う方々は見透かしておいてほしい。
論理的で緻密な保管効率の実務説明ができる物流のプロがいるなら、有料でその根拠を教えていただきたいと切に願っている。

パレット、棚、サポート、ネステナー、ハンガーラック。
保管面積やロケーション設計の提案時には、その割合が起承転結よろしく立て板に水を流すように説明される。
商談相手はウンウンとしたり顔で聴いているが、実は内心「やっぱり250坪ぐらいになるんだぁ」ということにしか意識がいかない。
その坪数を容認するか否かにあたり、自分の判断が間違えていないかを確認するために一生懸命聴いているだけであることが常であったと思う。
提案者であるこちらは、全く反対側から全く同じ着地点に焦点が合っていて、「この坪数でウンと言ってくれー」が本音であった。
だって坪数なんかでごねられたら、本丸の荷役コストの承認まで遠くなってしまう。
儲けの源泉は荷役にあるので保管で議論などしたくないのだ。

ロケーション設計の結果に応じて保管面積が出てくるのだが、ロケの良し悪しで何が変わるのかを解って会話しているのだろうか?
保管効率やらピッキング効率やら入出荷頻度の分析による品番別在庫配置。
商品マスターにサイズや重さをはじめとする各種属性まで持たせて、ピッキング動線の短縮単純化と梱包ラインへの最短化。
定番率と固定ロケ、フリーロケの配分。

こうやって文字にして勿体つけた説明を上手にできれば、聴き手は「さすがプロは違う」とかなんとか感心したり信頼したりしてくれるのではないか?
と、必死に顔つきと声色を工夫していた。

ここで大事なのは、そうでなかったらどうやねん?
の数値やデータが示されていないことなのだ。

「ご説明は非常に素晴らしいと感じましたが、そうでない場合、たとえば現状データに
基づいて諸計算を行ったとしたら、どんな割付とコストになるのでしょうか?
弊社の現状数値ではなく御社が独自に計算してみたら、という条件で結構なのですが」

こんなこという商談相手は皆無だったが、当時の私なら間違いなく内心呟いたに違いない。

「嫌な客やのぉ」

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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