物流よもやま話 Blog

社長が現場を歩くとき

カテゴリ: 経営

一般事業会社に多いが、物流部門を営業本部にぶら下げたり商品本部に置く組織構成がある。
営業本部パターンはキーが「顧客」、商品本部なら「商品」になる。

忌憚なく申し上げれば、どちらもお薦めしない。

理由は三つ。
・各本部内で全てが収束し、物流機能の諸課題や改善への計画推進が経営問題とならない。
・潜在的で根本的なエラー原因を抉り出して払拭しきれないことがとても多い。
・なによりも、両本部とも物流の優先順位を上に置けない。

仕入と販売と納品は、三位一体となって顧客に向けられる。
しかし同時に、業務品質の偏りや断裂防止のためには、それぞれが相互に監視・牽制・抑止の作用を与えるものでなければならない。
三機能が分立することで、連続的で機能的な業務の流れが維持できる。
対立するとか、競えと言っているのではない。
それぞれが自部門の主張を過不足なくすることで、その企業なりのまとまりと独自個性が形成されるという意。
折り合わせてまとめるのは経営層の役割にほかならない。

物流機能は営業や仕入の川下で下働きするようなものであってはならないし、入荷品の現状や出荷時の危なっかしい水際対応に物申すことなく、不合理や違和感を内に秘めたまま作業をこなすものでもない。
「何も起こらず、日々淡々と」が物流現場の正しい姿であり、それに波風が立つようなら、すぐに原因を突き止めて対処すべき部署と共有しなければならない。
物流が正しくなくなれば、顧客に迷惑をかけたり不義理をすることになる。ミスがたび重なれば根深く大きな不信を買いかねない。
正しい物流の基本は約束事どおりの入荷。入荷にかかわるあらゆる事象は、すべてコストに直結している。お金の遣い方の結果と商材の現実が物流現場にある。
きれいごとでも建前でもない。
経営の責任において、そうでなければならないのだ。

物流現場には「本当のこと」しかない。
会社の現状や現実が転がっている。営業や仕入の結果が裸で存在する。
だから私は懲りることなく諦めることなく言い続けている。
「経営者は物流現場をゆっくり歩いて欲しい。
時間を切らずに、立ち止まったり質問したりするべき。
顧客にかかわる出来事の原因と結果は、その多くが倉庫と庫内事務所にあるのだから」と。

現場の人間が何気なくやり過ごしたり、日々ルーティンでこなしている業務。
あたりまえのように庫内に存在する不動滞留品やカタログからも取扱品目一覧からも消えている廃番品。返品、不良品、取置品、営業の直発注品、他には再販できない顧客特注だったはずのキャンセル品。
新旧の資材、作業者の風体や着衣、美装と照明。
寒暑時の庫内環境、駐車駐輪場、喫煙所、休憩所、食堂、自動販売機、建屋の裏側、、、
書き出せばけっこうな数になる。

物流の業務書類と商品以外は、ただ見るだけで十分。
違和感を抱いたり、愕然や憤慨したりすることが片手以下なら貴方の会社は素晴らしい。
しかし、私の知る限りそんな事例は皆無だ。
一般社員やパート従業員たちは気付かないだろうし、物影に隠れていたり表面的には何の変哲も無いような小さいイレギュラー。
そしていつから続いているのかすら不明の放置と無視。

一瞬で顔色が変わりぞっとし始める。
その先や奥に何があるかを察知できるからだ。

なぜなら貴方は社長なのだから。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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