物流よもやま話 Blog

自社の定規

カテゴリ: 経営

一般の事業会社と同様に運輸や倉庫などの物流関連企業も、往々にして「当社独自」を謳う。
差別化に独自性は必須。
それは理解したうえでの今回である。

他社がやっていないことにこだわり、自社の個性や独自性として訴える。
他社がやっていないことなのに自社がこだわる理由を再考してみる。
この二つの角度から業務を評価することが重要であると思う。
ひょっとしたら自社の「とっておき」や「最大の売り」は他社からすれば「無くても支障ない」もしくは「無いほうがよい」だったり、「止めても支障なかった」「止めてみたが営業に全く影響なく、人件費と手間が削減できた」、、、なんていう実例を幾つか知っている。

私が述べるのは、あくまで物流に関してのことだけ。
門外業務ついては論じたり記す立場にないので、先に断っておく。

中小企業の物流に個性や独自性など無用。
「同業他社が必要としないようなカスタマイズは十中八九不要」と伝えたいだけで、こだわりゼロの丸投げ委託をよしとするの意ではない。
業務内容を丁寧に検証すれば、大半の独自システムは不要と判明するだろう。
企業独自の個性やこだわりや商材特性を尊重したうえで、贅肉落して削り出してやればあきらかになるはず。
同業でも異業でも、似たり寄ったりの仕組でまわせば足りる。
あくまで「表面的には」「機能的には」のハナシだ。
各企業独自の隠し味は怠りなく如才なく加えられている。
しかしながら、それは金で買えるものではないし、一朝一夕に培われたものでもない。

倉庫内のレイアウトは取扱い商材による必要最低限の設えで十分であるし、管理者にも作業者にも特別な能力は要らない。
システムも単純な機能のみの廉価なもので十分間に合う。
徹底的にこだわったエラー防止プログラムを否定しないが、六畳間にキングサイズのベッドを置くような観にしかならないケースが殆どなので、バランスよく配備しなければならない。
機材やシステムに依存する前に、知恵を絞って簡易で簡素な業務の流れを作るべき。
最も安上がりで身の丈に合っている物流機能は、それだけでほぼ出来上がる。

事業規模や資金力を一切無視して、あくまで着眼点の好例として挙げれば、アマゾンの物流システムは秀逸極まりない。
アタリマエではないか、という極めて単純で合理的な思考の実践を評価している。
6年程前に大阪・堺の現場を見学する機会に恵まれた。
その際に最短距離の業務動線と設計の妙を知った。
彼らの物流センターの業務設計は、GMやGEの生産工場管理者だった人材が担ったと説明をうけた。
「物流屋の理屈無視で、どの物流現場より優れている」以外に言葉が浮かばなかった。
これを掲載している現時点での実情や実態は知る由もないので、拙文の内容が現在進行形とは考えていない。
奴隷倉庫やら人間を機械扱いしているやら、批判も多いことは承知している。
生産性が数値化され、倉庫内の各所で電光掲示の生産性達成率が点滅を繰り返す。
作業者はひたすらに黙々と手許の課されたルーティンを続ける。
笑顔や会話を眼にすることはなかった。
巨大な建屋と最新のIT技術が支配するマテハン。
物理的な優位さは誰の眼にも明らか。
しかし、それ以前に徹底的に引算された、簡素で平易な業務設計がある。
緻密とはああいう業務フローを指すのだろうと思う。

「アマゾンを引き合いに出されてもなぁ~」

なんていう冒頭からの全部否定はあまりにも悲しすぎる。
発想や創意は限りなく自由で無限なのだと信じている。
自社なりの物流業務設計に拘ることは、会社の規模に関係なく可能。
それを忘れないでいただきたいと切望してやまない。

しかしながら、アマゾンのハナシは枕であって本題ではない。
事業会社は製造であれ中間流通であれ小売であれ、それぞれに強みや合理性を持っている。
ある程度の営業年数を経て、一定以上のシェアを維持し続けている企業なら、物流だからといって自社の定規を変える必要などない。

物流業界の理屈や技術を参考にすることを否定しない。
しかし基本的な物流知識を踏まえて、自社なりの合理性を追求してみたら、、、、、
意外と私の提案に近似、つまりはきわめて平凡で単純な仕組。
どこでもやっているようで、しかし徹底的に貫徹しているケースも稀。
平凡な仕組を非凡なまでに追求しこだわる。

なんていう可能性はとても高い。

ような気がする。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

最近の記事

アーカイブ

カテゴリ

お問い合わせ Contact

ご相談・ご質問等ございましたら、
お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせフォーム