物流よもやま話 Blog

ラストワンメートルが主戦場に

カテゴリ: 予測

何かにつけて二極化という言葉を目にすることは多い。
私もよく用いるし、別の表現で済む場合も多いはずだが、実に安直に「〇〇〇の二極化は進む」などと慣用句的に入れてしまう。
と、書き出せば、普通は「今回は趣向を変えての、、、」となるのが一般的なのだろう。
が、多彩な表現には無縁のワタクシは、今回も懲りることなく「配達形態の二極化」などとしたり顔よろしく書くのだった。

置き配常用者や受取ロッカー利用者の数は急速に増加している。
住居形態別の設備が充実してきたことや、駅や商業施設でのロッカー設置が普及著しいことと相まって、受領者の「受取りのための時間的拘束を嫌気」という心理が合流したことが最大の理由となっているのだと思う。
併せて、BOPISやC&Cと表現されることの多い「WEB購入品を指定場所で受け取る」サービスの需要も急拡大している。個配よりもこちらの方が購入者と販売者もしくは何らかの関与する第三者にとって益多いと感じているので、個人的には今後の成長分野として注目している。
一昨年来、いわゆる受動的受領から能動的受領への主流変転が起こると予測してきたが、どうやら予測ではなく実態と書き換えて説明しても支障ない状況になっているようだ。
自分の望む時に好きなモノを買い、都合のよい場所と時間を選んで受け取る、というのが多数の支持を得そうで、現在主流の自宅や職場での受取行為は置き配を除いて比率を下げてゆくと思える。つまり「宅配」という言葉は徐々に衰退し、個配の中身は置き配などの非対面完結型に転じるに違いない。

しかしながら真逆の需要が増大することも確信に近い。
それは設置・設定サービス付き配達だ。
多く語る必要はないだろうが、高齢化と少子化の重なりは、家庭内労働力の減少や低下を招いている。それゆえに大型もしくは重量物の設置や移動、WEB環境下を前提としたアカウント設定に紐づくサービスの導入などは、高齢単身世帯や夫婦単独世帯、もしくは若年・壮年世帯においても少なからず難所となる事例は少なくない。
一部事業者はもはや気付いているようだが、なんでもかんでも無料でなければ、、、という消費者の比率はそもそもが少なく、サービスは有償であることを理解し、内容に納得できるならばコストとして認める人々は常に最大の多数派として存在している。その多くはサイレント・マジョリティとして沈黙と静観を専らとしているが、消費の主軸であることは事実だ。
さらには消費の世界に限らず、世相を考察する際に、沈黙の多数派が最重要な対象として動向調査されるのは、まさにあらゆる需要の主であるからだ。
そしてその主たちが今から利用の度合いを高めるのは、設置や設定の有償サービスであると考えている。
サービス提供者たちには大きな商機の到来であるとともに、役務の提供場面での価格相応の内容に齟齬(そご)があれば、市場からの退場を求められる。
なぜなら良くも悪しくも、申し込みから利用後までの一連情報は、巷にあふれるレビューの掲示板によって膨大な数の閲覧者に共有されるからだ。すなわち世論や客観的評価として流布するので、中身の良悪次第ではサービス提供者の事業展開に大きな影響を及ぼす。
他者の高評価を得た設置配達サービスは、次の希望者を獲得できる。その反対もしかりであることは言うに及ばずだ。

このように書いてきてつくづく思うのは、
・面倒を金で買う。
・できないことを金で買う。
・金で済ますことが最良の選択肢。
というのは人々の本音として深層心理に横たわっているということだ。
サービスを選ぶのは消費者の権利だが、その結果は自己責任となることも事実。
したがって、後悔や見立て違いを回避するためにも、事前の調査や確認が念入りに行われる。意思決定までの分岐の先には、割切りの典型である徹底した非対面や能動型受領が増加する傍らで、対面と対話の典型である丁寧できめ細やかな設置や設定の配達サービスが需要を高めてゆく。
一見背反するようでいて、実は同一者の心理に同居するニーズでもある。
配達にかかわる戦いの行方は、ラストワンマイルからラストワンハンドレッドメートルへと焦点が移り、さらにはラストワンメートルをいかに捌くかに結実の場が定まりつつある。

高度化して利便性を増す諸サービスの拡がりは、根底を支えるインフラや利用開始に至るまでの道筋の整備を前提としているらしい。
「らしい」と書く理由は、その成果の決定因子はどうも「人材」となる気がしてならぬし、それは原点回帰でしかない――とやや呆れ気味な心情も付記しておく。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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