物流よもやま話 Blog

従量でも定率でもなく

カテゴリ: 経営

見積や請求にまつわる喜怒哀楽エピソードやけったいな出来事。
自社物流と営業倉庫では立場が異なるにしても、事例としては少なからずあるはずだ。
ワタクシにも忘れようとしても思い出せない出来事の数々が、不意に何の脈絡もなく脳裏によみがえることがたま~にあるが、「これでいいのだ」で済ませている。

まずは変わった、、、というより今でも理解できない請求方法のハナシから。
もはやひと昔前の出来事なので、今現在も変わらぬのか否かは不明である。
ということわりを最初に記す。

その会社は社歴もそこそこの中小企業なのだが、いちいちが「ん?ちょっとヘンじゃねーか」や「変わっとんなぁ」や「独特やなぁ」などの内心独言が毎度の取引先だった。
なかでも、
「ぜーったいヘンだし、ちょっと心配になる」
と困惑と違和感でモヤモヤだらけの心持となるのは請求方法についてだった。
どうヘンなのかと言えば、
「なにがなんでも月次請求を定額にしてほしい」
と頑なで、断じて譲らないのだ。

「おいおい」という読者諸氏のツッコミは承知している。
そんなもん不合理に決まっているし、双方にとって不当な損益が発生するリスクが常在している――というより月替わりでどっちかが得をして損をすること明らかである。

もちろんだが、
「どーして定額請求にこだわるのですか?」
という質問はイロハのイの前にした。
当然ながら手を変え品を変え言い回しを変え表情も変えて、上記の不合理とリスクを何度も何度も説明したのだが、担当役員の回答は毎度同じだった。
「物流費が定額でないと、損益予算が組みにくいから」
の一点張りなのだ。

くどいが読者諸氏の「おいおいおい、おいっ!」という二段重ねツッコミは承知している。
回答のたびに「なんでやねん!どう考えても従量請求が合理的で明朗に決まってんがな。そもそも売上自体が予算通りになんかいくかいな」という言葉を何度呑み込んだことか。

「ならば通過請求にしたらよいのではないか。定率請求なら売上対比や販管費対比も固定できる。先方の納得がいく通過対象単価と率の設定を行えばことは済むはず」
という皆様のご指摘はごモットもだし、重々わかっておりまする。

あの手この手の前に「では通過売上請求ではどーでしょー。入荷費用などは一切かからず、あらかじめ設定した…」と努めて快活に笑顔でハキハキと自信をもって、、、
「うーん、、、そーゆーややこしいのはちょっとねぇ~」
と、担当役員。

「ギっ」と頭蓋骨がずれる音が聞こえた気がしたが、聞いた瞬間にはったおしたり罵声を浴びせたりしなかったのは我ながらエラかったと思う。ちょっと涙ぐんでいたかもしれないが。
ホンマにお願いしますよぉ。ややこしいのはおたく様でんがな、、、
と奥歯をかみしめて、困り顔で居合わせるしかないのが年次契約更新の毎度だった。

「来期は売り上げ横ばいになりそうだから、物流費も今年と同額でお願いしたい」
というのも毎度のハナシだった。
地代と最低賃金が横ばいのまま。
什器備品と消耗品と水道光熱費も横ばい。
自社の人件費も横ばいのまま。
で済むなら「よろこんでっ!」と居酒屋さんのように威勢よく承るが、そんなわけはない。

「御社が厳しい時は手前どもも我慢。その逆なら従量請求でそれなりに頂戴します」
が物流屋のアタリマエであるはず。
だが、マッタク通じん。

「“これ”が定額請求以外は認めんと言うのですよぉ、いやはや困ったもんです」
と親指立てながらニヤッと嬉しそうに、、、全然困ってへんやんか、アンタ。

そうはいっても大切なお客様。
結局はこちらが折れるしかないというのが毎度の顛末なのだが、あきれるほどのブサイクでコッケイなやり取りの繰り返しだった。

読者ご賢察のとおり、道理を引っ込めて無理を通し、百万歩ゆずって請求額固定を受けるとしたら、荷役は割増しで試算したうえで総額提示するに決まっている。
裏を返せば想定外となるほどの好調な売上でも立たぬ限り、結果として荷主側が本来の従量請求額に比して割高な物流コストを負担することになるのが常だ。
顧客側の言い値たる来期売上予想を真に受けてコスト計算するなどおっかない、、、のは物流屋なら当然である。抑え気味を心がけつつも割増に見積もるのが定石ではないだろうか。

しかも、、、
あぁ、また嫌なことを思い出してしまった。
あのオッサンときたら、、、、、

もうやめておきます。
おゆるしを。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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